【ゲームは教育に悪影響?】「マインクラフト禁止令」公布騒動

うちの子どもはニンテンドースイッチの「マインクラフト」が大好き。そしてマイクラの世界の中で自分が今どんなことをしているのかを僕に話すことも大好きなようです。先日は僕に,こんなことを教えてくれました。

「村人をキャノン砲でぶっ飛ばすと面白い。」

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マインクラフト禁止令公布まで

僕はうかつにも,ゲームというものを生まれてこのかたよく知らずに生きてきたため,「マインクラフトは,自由自在な箱庭のように,自分の好きな世界を作り上げていく平和なゲーム」だと思い込んでいました。
「そうなんだ〜村人をキャノン砲でね,そうかそうか〜」と精一杯の受容・共感・傾聴を試みながら,一言で言うと,僕の心の中には衝撃とともに大きな暗闇が広がっていきました(「村人」を,「キャノン砲」で,「ぶっ飛ばす」?)。そしてその暗闇には次第に,まがまがしい赤い文字で「暴力的なゲームの悪影響」という文字が浮かんできました。こうしてわが家で,マインクラフト禁止令が検討される運びとなったのです。

もちろんマイクラの暴力表現などソフトなもののはずで,それ以上に暴力的な場面は,ゲームに限らず,子どもが触れる可能性のあるメディアでもしばしば目にします。日本人にもっともなじみのあるものとしては,アニメ「アンパンマン」においてアンパンマンが毎回,バイキンマンに対して振るう「アンパンチ」というド直球の暴力が挙げられるでしょう。
しかし,アンパンチが暴力的だからといって,子どもに見させないわけにはいきません。子どもというものは生得的にアンパンマンを見たがる傾向があるからです。マイクラも同様です。

メディアで表現された暴力行為と心理学的見解

ということで,マインクラフト禁止令について子どもに切り出す前に,親として知っておきたいのは,そのようにとても身近な「メディアで表現された暴力行為」が,子どもの心にどのような影響を与えるのか,ということに関する知識です。
心を専門的に扱う学問である心理学ではどのような見解が得られているのでしょうか。

以下の動画で面白い実験が紹介・解説されています。

このBanduraの実験(1965)では,大人の女性が人形に対して,殴る,もので叩くなどの暴力を振るう映像を子どもに観察させたあと,子どもに同じ人形を与えて,反応を見ました。ただし映像には2種類の結末があり,暴力を振るった大人が「ほめられる」パターンと,「怒られる」パターンとが用意されていました。
結果として,実験に参加した子どものうち,暴力行為を「ほめられる」パターンの映像を
見た子どもは人形に暴力を振るい,しかも暴力行動は次第に激しくなっていきました。一方,「怒られる」パターンの映像を見た子どもは暴力を振るうことはありませんでした。
Banduraが実証したのは,自分自身が暴力を振るったことに対して褒められた(報酬を得た)体験でなく,他人が褒められている場面を見ただけで,暴力的な行動を学習できてしまうということでした。

攻撃的なメディアは子どもを暴力的にする!?

ということは,やはりアンパンマンやマイクラを子どもに与えることは子どもを暴力的にしてしまうということなのでしょうか。

この動画の解説では,そのように結論づけることは難しいようです。というのも,
①この映像を見た直後に「あの人形に対して」暴力を振るったからといって,同じ子どもが家や外で誰かれ構わず殴りかかるようになるとは言えない。
②Bandura自身も,教育によってやっていいこと悪いことを教えることが重要だとし,この実験によってメディアの暴力的な影響を煽りたかったわけではなかった。

また中島(1996)は,暴力的なテレビ映像について,攻撃性を増加させると結論づけているものもあれば,否定しているものもあり,依然として議論の渦中にあると指摘しています。また,映像の効果が誰にとっても同じであるはずはなく,見る側の特性の違いによって受け取り方が異なることにも注意を促しています。

暴力的な場面はインパクトが強く,親からするとついつい,マインクラフト禁止令という選択肢に飛びついてしまいそうになりますが,こうした心理学の研究知見は,このようなケースを,むしろ子どもがゲームの体験を通じてどのようなことを感じ,学び,楽しんでいて,また暴力的な場面をどう受け止めているか,などなど,子どもの特性について考えるきっかけとしてとらえる視点を教えてくれるようにも思います。

参考文献
中島 義明 (1996). 映像の心理学──マルチメディアの基礎 サイエンス社

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