臨床心理士・公認心理師大学院受験のための英語勉強法

 大学院へ行くと英語の文献を読んだり、海外で発表したりという機会があります。また、この国際化の時代ですから英語をしっかり勉強することは大変意義のあることです。ただし、ここでの目的は大学院の試験対策でそれに合格するための勉強法がテーマですから、それに絞ってお話しします。

目次

大学院試験において、英語はたいへん重要

英語で差がつくからです。

大学院に受験において求められる資料や能力は主に、志望趣意書、研究計画書、論述、専門用語の理解、英語(第二外国語はまれ)ですが、志望趣意書や研究計画書はしかるべき専門家に一度くらいは見てもらうのが普通です。また論述や専門用語などは日本語で勉強できますので、試験でそれほど差はつかない印象です。

逆に英語はその場で答案に答えなければならず、一回性が高いのでここでの優劣が合否を決めることがあります。また受験者数の多い大学院ではいわゆる「足切り」の材料として用いられる可能性もないとはいえません。それゆえ、英語の勉強は意外に盲点であると同時に重要なのです。

英語力が非常に弱いと自覚されている方はコレ

 大学などでかなり英語を勉強された方でも、何十年も英語から遠ざかっていた方が、意を決して大学院を受験してみようと思い立つことも珍しくはありません。

大学院の英語の試験に出てくる文章はそれなりのレベルですので、一読して歯が立たないと感じることもあるでしょう。この場合はいわば英語力がさび付いた状態になっているので、まずそれを一定のレベルにまで上げることが必要です。たとえば次の本はおすすめです。



『大岩のいちばんはじめの英文法【超基礎文法編】』(大岩秀樹、ナガセ)。そのあとは、英単語を固めておきましょう。『英単語ターゲット1400』(旺文社)くらいのレベルから始めるとよいでしょう。


そのあとは、比較的平明な英語の文章、たとえば英語のセンター試験の問題や少し長めの文をひたすら読んでください。

先の本と同著者では『大岩のいちばんはじめの英文法【英語長文編】』などもあります。ある程度、基礎は固まっている訳ですから、ほどなくして勘はすぐに戻ってくるはずです。


長文を読んでいると、ある箇所で意味が取りづらい、何回読んでも意味が取れないということが起こります。あとでも説明しますが、これは構文といって、いわば英語特有の言い回しというか形式です。

時間に余裕があれば、英語の構文は一度体系的に学んでおくのもよいかもしれません。おすすめはこの本です。『超入門 英文解釈の技術』(桑原信淑、桐原書店)。


 とにかくこのレベルの方は一度、書店の学習参考書の大学受験のコーナーに一度足を運んでみてください。上記で紹介した本以外に良書はいくらでもありますで、自分に合ったものを選ぶのが一番だと思います。

またYouTubeでもスマホの学習アプリでもなんでも利用してください。目的を達成することが重要で、手段は実は何でもよいのです。勘を取り戻すことができれば、すでに蓄積はあるわけですから、ここまではどなたでも割とはやいと思います。

大学院の過去問題を手に入れる

英語の勉強を始める前にでも、今すぐやっていただきたいことは、志望の大学院の過去問題集を手に入れることです。過去問題は通常は公開されており、またコピーをもらえることもあります。その大学の入学課にお問い合わせください。

英語の問題の出題形式はあとで説明するようにほぼ一定ですが、大学院によって多少の形式や出題傾向の違いがあります。まずそれを見極め、無駄のない効率的な勉強をしましょう。まずは敵を知ることです。

多く見られる英語問題の形式

 比較的多く見られる形式の順に、次のようになっています。

  1. 英文の読解・解釈(全訳、下線部などの部分訳、要約など)
    これがほぼ出題形式の8割を占めます。
  2. 英文を読解した上で、展開していくもの。例:「下線部の英文を読んだ上で、あなたのカウンセ
    ラーとしての考え方や対応策を考えなさい」など。英文の読解をして意味が取れなければ答えら
    れないので、広義の1.と同様に英文の読解・解釈の問題です。
  3. 新傾向の問題
    ほぼありませんが、大学院によってはあるかもしれません。英作文や語句を英語で説明するといったも
    のです。大学院によってはまれにこの問題形式もあります。ヒアリングやスピーキングはほぼありませ
    ん。あれば面白いですけれど。
     つまり、英語試験の対策とは英文の読解・解釈の勉強が中心になります。次にその分野の対策を中心
    に具体的な方法の一例を述べていきます。

用意すべき教材

教科書や論文

 英文読解のための教材として教科書を入手しましょう。海外の心理学の概論的な教科書で洋書の原典とその信頼できる日本語訳がある本であれば何でもよいのですが、ここは他のサイトでもよく紹介される以下のものをおすすめします。


『ヒルガードの心理学 第16版』(金剛出版)、およびその原典である『Atkinson & Hilgardʼs I
ntroduction to Psychology, 16e』(センゲージ・ラーニング)。日本語訳の方は大きな書店にはありますし、Amazonなどで注文するとすぐに届きます(重量があり大部の本です)。

原典の洋書図書館でも閲覧できますので、機会があったら一度見てみてください。かなり高額な出費になってしまいますが、できれば個人的に入手して手元に置かれて勉強されることをすすめます。

専門職に就かれてからもずっと使えますし、章の最後などに収載のコラム「最先端の研究」「両面を見る」も興味深いテーマが満載です。個人的な意見ですが、仕事や将来の目標など、自分が中核的な価値を置くものに対しては投資を惜しまないことです。


教科書や事典の文章は解説的で説明的、ある場合にはエッセイ的な文章になっていることが多いですが、大学院の出題問題によっては多少「硬質」な感じを受ける文章が取り上げられていることがあります。

これはおそらく、出典が専門的な学術論文であるためと考えられます。もし志望の大学院の問題がこのタイプであれば、ご自身の関心やテーマに関する英文の学術論文を数編集めておくのもよいかもしれません。学術論文は独特の構成、内容、言い回しなどがありますので、それに慣れる意味もあります。

単語集


 心理学に関する専門用語はまとめて暗記するのもよいかもしれません。これも定番になりますが、次
のものはおすすめです。『心理院単』(山崎有希子、ナツメ社)。

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この記事を書いた人

沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師)のアバター 沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師) 医学博士/臨床心理士/公認心理師

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