【前編】発達障害とは?「知能」「社会性」「制御力」でとらえる ―ASDやADHDに適切に対処するための神経心理学的アセスメントー

目次

発達障害」とは?    

近年、発達障害という言葉がますます身近になってきました。例えば、自閉スペクトラム症(ASD)や、注意欠如・多動性障害(ADHD)といわれるものです。就学前の小さなお子さんから大人の方まで悩まれている方も多いと思います。

一方、発達障害に関する情報や体験談が溢れ、どのように対処したら良いかわからないという声もよく聞きます。

FromU戦略心理研究所では、「発達障害」ではなく、「発達の偏り」という言葉を使います。発達の偏りによる困りごとに対して、表面的なハウツーではなく、一人ひとりの特性を根本から理解することで、より適切な支援や対処ができるようになります。

この記事では、人の能力をどのように立体的にとらえ、活かしていけば良いかについて、神経心理学的な発達の知見に基づいて解説していきます。

解説者

 沢 哲司 (医学博士/臨床心理士/公認心理師)

神経心理学的発達アセスメントで医学博士を取得し、自身も発達障害(ADHD:注意欠如多動症と、LD:学習障害)の診断を受けている。
専門的な知見と当事者目線の両面を生かし、クライエントの苦手なことを無理に矯正するのではなく、能力の偏りを自分で理解し、活用できるようになるための、心理療法を得意とする。
北里大学を始め5つの大学院・大学で大学講師を歴任。述べ500名以上の学生に臨床心理を教える。

発達の偏りは診断名ではなく「知能」「社会性」「制御力」でとらえよ

沢: まず、発達の偏りがあるなしに関わらず、人の能力はひとつの単純な軸ではなく、いろんな軸でとらえることが大事です。

歴史軸だとか能力軸だとか幸せ軸だとか、ありとあらゆる心理学の軸ですね。その中でも、基本で大事な3軸があるので、ぜひ持ち帰ってください。

例えば小学校で、勉強に集中しないとか私語が多いとか授業中に歩き回るとかいう生徒がいると、先生が怒るわけですよね。ある問題に対してピンポイントで注意の言葉を感情的に伝える。
しかし、これはあくまで「点」の事象だから、問題解決の材料にはなりにくい。場当たり的に恐怖で支配することで“その場では”解決するかもしれませんが。

そうではなく、「知能」、「社会性」、「制御力」の3軸でとらえます。これが「発達軸」だと私は考えています。エリクソンの発達論とかあるけど、私が本当に専門にしているのは神経心理学的な発達なんです。

イラストレーション:はるか @haruka180cm

知能

知能は頭の中で発達していくものですよね。それを神経心理学的に発達させているといいます。

知能が何かというと、合理的な情報を処理する力です。3+4は7とか。

社会性

もう一つの軸は、社会性の軸です。これも僕らは小さい頃から段々と培っていくもので、合理的な能力に対して、非合理的なものを処理する力です。

例えば表情を読み取る力。「お母さんの顔はいま眉毛が2ミリあがっててこれは感情の基本的表情分類の中で怒りだからこれは怒ってるんだ!」とは思わないですよね。直感的に「怒ってるんだ!」と思うわけです。

これも、私たちが神経心理学的に発達させているものです。

③制御力

もう一つが制御力。行動を制御しています。

例えば授業ですごく疲れていても、頑張って聞くこと。注意を持続制御して集中する力が、注意力。
あとは余計な情報を入れずに衝動を制御する力。授業中に後ろから子どもの声が聞こえても、先生の話に集中する。

この一点に集中する力とお手つきをしない力、これが制御力です。

具体例:「知能」「社会性」「制御力」の3軸で発達を捉える

先ほどの小学校の事例では、授業中に落ち着かない子を一緒くたにADHDと診断してみたり、先生たちが落ち着きなさいといって生徒に怒るのですが、この3軸で考えずに、表面的な事象だけを取り上げて怒るから、うまく伝わらないんです。

この3軸を先生方に伝えると子どもへの理解がすすんで改善に向かいやすいようです。

授業中に落ち着かないのは知能、社会性、制御力どれのせい?

落ち着かない原因が、知能が低いことである場合があります。授業がわからなくて落ち着かない。僕らも海外に行ってわけわからない英語の授業とか聞いても落ち着かないですよね。

社会性が低いことが原因の場合は、言ってることはわかるんです。僕らは空気を読んでなんとなく静かにしてたらいいなと感じるわけですが、社会性が低い場合は人の目なんて気にせず読書したり、好きな雲を見たりしてしまいます。

制御力が低いことが原因の場合は、授業の内容も授業を聞かなければいけないのもわかるんだけど、エアコンの音が気になるとか、眠くなるとか、そういう理屈です。

発達の3軸から考える、落ち着きのない子への対処法

それで、それぞれ何の軸で困っているのかを理解すると対処方法が大きく変わってくるんですよね。

まず、知能が低い子には、わかりやすくやさしく教えてあげる必要がありますよね。

社会性が低い子には、なぜいまあなたが授業を受ける必要があるのか合理的に説明してあげる必要がある。授業は大事だからって言ってもダメなんですよ。なんで大事かわからないという話なので。

よく使う技は、「あなた受験したいんでしょ、内申点が大事なんだよ」と説明すると、点数というのは合理的なので「じゃあちゃんとやらなきゃな」となったりする。

制御力が低い人たちは、わかっているけどできないんです。ではどうしたら良いかというと、「気分転換に校庭走っておいで」とかっていうと、また授業に戻れたりします。

そのADHD傾向はどこから?ものをなくしがちな場合

ものを探し回る場合も、知能が低くてものをなくしてる場合は単純に忘れちゃってるんですよね。そういう人には例えば、片付けの仕方を写真などを使ってわかりやすく説明してあげる必要があります。    

社会性が低くてものを探し回ってる人は、よくよく聞いてみるとそんなに危機感を感じてない場合があります。怒られるから探してるけど、宿題なんてやらなくていいやと思っているとか。そういう人には宿題の重要さを説明しないといけません。

制御力が低くてものを探し回ってる場合は、「忘れてる」というより、探した場所をもう一度探してしまっている     とか、注意が散漫で失くしがちとかです。これは僕自身がまさにそうで、制御力が低くてしょっちゅう探し物ばかりしています(笑)。 

そのような当事者視点を活かして、失くし物の対処法を詳しく解説したので、よかったらこちらの記事も読んでみてください。音のなるキーを財布につけて失くしたらスマホから音を鳴らす対処法です。困っている当事者だからこそ、考えられることってあるんですよね。

あわせて読みたい
ADHD心理士がおすすめするADHD対策グッズ
ADHD心理士がおすすめするADHD対策グッズ【ADHD 忘れ物 対策の現状】ADHDの忘れ物対策をよく、本人や親、専門家から聞かれます。よく言われるのは、「怒ってはだめですよ。」とか、「身の回りを片付けて、余計...

発達支援方法を具体的に学ぶには?

発達の偏りで困っている時に、どのようにしてアイデアを考えるか。それは、本を読んで勉強しましょうということではないんですね。    

知識ではなく、「自分ごと化して想像する」ことが大事です。

自分も知能が足りなくてわからないことあるよな、そういうときどうしたらいいんだろうな、とか。例えば語学が堪能じゃないのにいきなり英語で授業を受けたら、落ち着きがなくなりますよね。

他にも空気が読めなくなる時あるよな、例えば酔っ払って制御力が低くなっている時ってどうしたらその場にいられるかな、とか。

そのように考えると、自ずとアイデアがでてきます。何人かでブレーンストーミングをしてみても、いろんな対処法が浮かんで面白いですよ。

以上、落ち着きのなさや失くし物が多い要因を、「知能」「社会性」「制御力」の3軸でとらえて支援する考え方について、解説しました。

まとめ:発達障害や発達の困りごとは「知能」「社会性」「制御力」で考える

発達障害、もとい発達の偏りについては、”知的障害”や”ASD”などの診断ではなく、「知能」「社会性」「制御力」の3軸で多面的に考えることが大事です。ぜひ持ち帰ってくださいね。

後編では、実際にこの3軸で人の能力をとらえる方法について、具体的な検査方法などを紹介します。

あわせて読みたい
【後編】発達障害とは?種類は「知能」「制御力」「社会性」でとらえる     ―     心理検査方法と活かし方―
【後編】発達障害とは?種類は「知能」「制御力」「社会性」でとらえる ― 心理検査方法と活かし方―前回は、発達障害、もとい発達の偏りは「知能」「制御力」「社会性」の3軸で立体的に捉えることが大事だと話しました。https://fromu.jp/develop1この記事では、それぞ...

ご自身の発達についてより理解を深めたい方は

実際に心理検査・発達検査を受けてみたい方、自分の発達の3軸を知った上でどう生かすかをコンサルティングしてほしい方は、ぜひFromU発達心理相談室にお越しください。

あわせて読みたい
FromU発達心理相談室のご紹介
FromU発達心理相談室のご紹介【【北区 赤羽駅6分/オンライン対応】 FromU発達心理相談室のご紹介】FromUでは、北区赤羽でご自身の発達や能力理解に特化した心理相談室を運営しています。コンセプト...

心の正常・異常や発達障害を決めつけるのは危険、というオリジナルアニメーション

こちらもぜひご覧ください!心の正常・異常や発達障害を決めつけるのは危険であること、検査でわかるのは人格のごく一部に過ぎないことを、オリジナルキャラ「ナンマンパン」がわかりやすく解説します。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

はるか(社会人心理学生)のアバター はるか(社会人心理学生) FromU臨床心理ゼミ生/企画運営

haruka180cm|FromUで心理学を学び、また企画運営やデザインのプロボノをしています。30代心理系社会人大学生(2022卒)。普段は広告会社で育成人事をしつつ、メンタルヘルス推進を担当。
鬱で休職2年→メンタルに興味→2020通信大編入しました。卒論テーマは休職者のメンタルヘルス。休職について考える「休職ラボ」主宰(下記リンクより)。双極性障害とADHD当事者でもあります。

コメントをどうぞ

コメントする

目次
閉じる