精神医学 診断の枠組みと主な精神疾患|院試塾 2限目

院試塾 2限目 精神医学 診断と主な精神疾患
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院試塾 2限目。出題率がいちばん高い領域、精神医学です。語が多いので、動画は3本に分けました。診断をするのは医師で、心理職は診断をしません。診断の分類は、医師やほかの職種と話すための共通の言葉として学びます。テキストは、動画の下にあります。

目次

動画(3本)

動画① 診断の枠組みと、神経症圏

動画② 統合失調症・気分・パーソナリティ

動画は準備中です(近日公開)

動画③ 子どもと高齢者

動画は準備中です(近日公開)

テキスト

2026年改訂について(何が変わったか)

原文(DSM-Ⅳ-TR 時代)現在(DSM-5-TR/ICD-11)
DSM-Ⅳ-TR が最新、多軸診断DSM-5(2013)で多軸診断は廃止、DSM-5-TR(2022)が最新。ICD は ICD-11(WHO・2022年発効、日本は移行中)
神経症(不安障害・身体表現性障害・解離性障害)「神経症」は分類名としては使われず、不安症群・強迫症及び関連症群・心的外傷及びストレス因関連症群・解離症群・身体症状症及び関連症群に分割
精神分裂病統合失調症(2002年に呼称変更。統合失調スペクトラム症及び他の精神症群)
気分障害(単極性うつ病/双極性障害)抑うつ症群双極症及び関連症群に分離
人格障害パーソナリティ症(DSM-5-TR 日本語版。「パーソナリティ障害」も併用)
精神遅滞知的発達症(知的能力障害)。重症度は IQ ではなく適応機能で判定
広汎性発達障害・自閉性障害・アスペルガー障害自閉スペクトラム症(ASD)に統合
注意欠陥/多動性障害注意欠如多動症(ADHD)。発症年齢の基準は7歳以前 → 12歳以前
学習障害限局性学習症(SLD)
痴呆認知症(2004年に行政用語変更)。DSM-5-TR では神経認知障害群
(記載なし)公認心理師制度(2017年施行)により、心理職も精神医学の診断分類を多職種連携の共通言語として理解することが求められる

疾病の分類と診断

1.1 古典的な精神科疾病分類 ― クレペリン

19世紀末から20世紀初頭にかけて、クレペリン(E. Kraepelin)は、原因・症候・経過・転帰・病理解剖所見を同じくするものを一つの疾病単位とみなす立場から、近代的な精神科疾病分類を確立した。

  • 早発性痴呆(dementia praecox)― 支離滅裂な妄想と人格の荒廃を特徴とする。統合失調症の原型(ブロイラーが1911年に「統合失調症(Schizophrenie)」と命名)
  • 躁うつ病 ― 感情と欲動の障害を主症状とする。双極症・抑うつ症群の原型

1.2 病因による三分法(伝統的分類)

  1. 外因性精神病 ― 身体的な原因(脳の器質的疾患、身体疾患、物質)によるもの
  2. 内因性精神病 ― 素質や遺伝など個体内部の要因が想定されるもの(統合失調症、双極症など)
  3. 心因性精神障害 ― 状況の変化や対人葛藤など心理的な要因によるもの

現在の操作的診断ではこの三分法は用いないが、院試では今も問われる。「外因・内因・心因」の順で答えられるようにしておく。

1.3 病態水準(カーンバーグ)

カーンバーグ(O. Kernberg)は、精神病と健常の間に連続性を仮定し、①現実検討能力同一性の統合度(自他の境界) ③防衛操作(どの防衛機制を主に用いるか)の3点からパーソナリティの構造を3つの水準に分けた。

  1. 神経症水準 ― 症状はあるが現実検討は保たれ、同一性は統合され、抑圧を中心とする高次の防衛を用いる
  2. 境界水準 ― 一見神経症水準にみえるが、些細な現実の出来事を契機に一過性の精神病様症状や常軌を逸した行動を呈する。同一性拡散、分裂(スプリッティング)などの原始的防衛が優勢
  3. 精神病水準 ― 幻覚や妄想が出現し、現実検討が重篤に障害される

診断名(DSM)とは別の軸で、力動的な見立てに用いる。

1.4 操作的診断 ― DSM と ICD

国際的に比較可能な診断体系を作る努力から、アメリカ精神医学会(APA)の DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)と、WHO の ICD(国際疾病分類)が整備された。

  • DSM-III(1980)で、症状に基づく操作的診断基準(一定数の症状が一定期間あれば診断する)が導入され、病因論を排した記述的分類となった。同時に「神経症」という分類名が廃止され、多軸診断もこの版で導入された(『精神分析事典』p.249。2026-09-20 訂正:以前は多軸診断の導入を DSM-Ⅳ と書いていた)
  • DSM-Ⅳ(1994)/DSM-Ⅳ-TR(2000)も、5つの軸で評価する多軸診断を引き継いだ(第Ⅰ軸:臨床的障害、第Ⅱ軸:パーソナリティ障害・精神遅滞、第Ⅲ軸:身体疾患、第Ⅳ軸:心理社会的・環境的問題、第Ⅴ軸:機能の全体的評定 GAF)
  • DSM-5(2013)多軸診断は廃止され、すべての診断を一列に記載する方式になった。障害を連続体(スペクトラム)としてとらえる考え方(自閉スペクトラム症など)と、重症度の次元評価が取り入れられた
  • DSM-5-TR(2022)は本文改訂版。日本語版(2023)では病名の訳語が「〜症」に整理された(例:不安障害 → 不安症、パーソナリティ障害 → パーソナリティ症。ただし「障害」も併記される)
  • ICD-11(WHO、2022年発効)は日本でも移行が進められており、DSM-5 とおおむね対応する。医療保険や統計では ICD が使われる

院試での問われ方:「操作的診断基準とは何か」「多軸診断が廃止された理由」「DSM と ICD の違い」。操作的診断の長所(信頼性の向上、研究と臨床の共通言語)と短所(原因や個人の文脈を扱わない、症状の数え上げ)を対で書けるようにする。

「神経症」概念と、現在の分類

2.1 神経症とは(歴史的概念)

神経症(neurosis)とは、器質的な基盤がなく、心理的な原因によって生じる心身の機能的障害で、現実検討能力と人格は保たれている状態を指す古典的概念である。シャルコー、ジャネ、フロイトのヒステリー研究に原型があり、フロイトは「無意識の葛藤が不安を引き起こし、それを防衛する心理機制によって症状が生じる」と説明した。

DSM-III 以降、分類名としての神経症は用いられなくなったが、病態水準論や力動的な見立てでは、精神病水準と対比する概念として現在も生きている。院試では「神経症の定義」と「現在の分類でどう分かれたか」の両方を押さえる。

2.2 不安症群

不安とは、明確な対象を持たない恐れであり、対処できないと感じるときに生じる感情である。不安が強く生活を妨げる状態が不安症である。

  • パニック症 ― 予期しないパニック発作(動悸、息苦しさ、死ぬのではないかという恐怖などが突然生じる)を繰り返し、発作への予期不安が続く
  • 全般不安症 ― さまざまな出来事についての過剰な心配が6か月以上続く。心配の対象は特定されない
  • 限局性恐怖症 ― 特定の対象や状況(高所、動物、血液など)への持続的で不合理な恐怖
  • 社交不安症 ― 他者から注目される場面での恐怖。日本の「対人恐怖」と重なる部分が大きい
  • 分離不安症選択性緘黙 ― DSM-5 から不安症群に含められた(従来は「小児期の障害」)。分離不安症は成人にも診断される

2.3 強迫症及び関連症群

  • 強迫症(OCD) ― 不合理と分かっていても繰り返し浮かぶ強迫観念と、それによる不安を打ち消すための強迫行為。DSM-5 で不安症群から独立した
  • 関連症として、醜形恐怖症(身体醜形症)、ためこみ症抜毛症皮膚むしり症が同じ群に置かれた

2.4 心的外傷及びストレス因関連症群

  • 心的外傷後ストレス症(PTSD) ― 生命の危険を感じるような出来事のあと、①侵入症状(フラッシュバック、悪夢)②回避 ③認知と気分の陰性の変化 ④過覚醒 が1か月以上続く
  • 急性ストレス症 ― 同様の症状が出来事から3日〜1か月の範囲で生じる
  • 適応反応症(適応障害) ― 明確なストレス因への反応として、情緒面・行動面の症状が生じる
  • 反応性アタッチメント症脱抑制型対人交流症 ― 養育の著しい不足に関連する小児の障害

2.5 解離症群

記憶・同一性・知覚・身体運動の統合が失われる状態。

  • 解離性同一症(旧・多重人格) ― 2つ以上の別個のパーソナリティ状態
  • 解離性健忘 ― 心的外傷に関連した重要な記憶の想起不能。解離性遁走は DSM-5 では解離性健忘の下位型
  • 離人感・現実感消失症

2.6 身体症状症及び関連症群(旧・身体表現性障害)

  • 身体症状症 ― 苦痛を伴う身体症状に対して、過度の思考・感情・行動を示す。DSM-5 では「医学的に説明できない」ことを要件とせず、症状への過剰な反応を基準とする
  • 病気不安症(旧・心気症)― 重い病気にかかっているという強い不安
  • 変換症/転換性障害(機能性神経学的症状症) ― 麻痺や失声など神経症状が、神経学的疾患では説明できない
  • 作為症(虚偽性障害)― 症状を意図的に作り出す

統合失調スペクトラム症及び他の精神症群

統合失調症(schizophrenia)は、①陽性症状(幻覚、妄想、まとまりのない思考・発語・行動)と ②陰性症状(感情の平板化、意欲の低下、会話の貧困、ひきこもり)を主な症状とし、DSM-5-TR では特徴的症状が6か月以上(活動期の症状が1か月以上)持続し、機能が低下していることが基準となる。認知機能の障害も注目されている。

  • 呼称:2002年に日本精神神経学会が「精神分裂病」から「統合失調症」に変更した。人格の分裂という誤解と偏見を避けるため
  • 経過:前駆期 → 急性期 → 消耗期(休息期)→ 回復期。早期発見・早期介入が重視される
  • 関連する診断:統合失調型パーソナリティ症、妄想症、短期精神症、統合失調症様症、統合失調感情症
  • 治療と支援:抗精神病薬による薬物療法を基本に、心理教育、SST(社会生活技能訓練)、家族支援、リハビリテーション、地域での生活支援を組み合わせる。心理職は心理教育・認知機能の評価・家族支援・地域移行に関わる

抑うつ症群と双極症及び関連症群

DSM-Ⅳ-TR の「気分障害」は、DSM-5 で 抑うつ症群双極症及び関連症群 に分けられた。診断はどのような気分のエピソード(抑うつエピソード、躁エピソード、軽躁エピソード)が、どのような経過で現れるかによって行う。

4.1 抑うつ症群

  • うつ病(大うつ病性障害) ― 抑うつ気分または興味・喜びの喪失を含む5つ以上の症状(食欲・体重の変化、睡眠障害、精神運動の焦燥または制止、易疲労感、無価値感・罪責感、思考力・集中力の低下、死についての反復思考)が2週間以上続く
  • 持続性抑うつ症(気分変調症)― 軽いうつ状態が2年以上続く
  • 重篤気分調節症 ― DSM-5 で新設。小児の持続的な易怒性と癇癪
  • 月経前不快気分障害 ― DSM-5 で正式診断に

4.2 双極症及び関連症群

  • 双極症Ⅰ型 ― 少なくとも1回の躁エピソード(気分の高揚・易怒性と活動性の亢進が1週間以上、または入院を要する)。抑うつエピソードを伴うことが多い
  • 双極症Ⅱ型軽躁エピソード(4日以上、社会的機能の著しい障害はない)と抑うつエピソードの両方があり、躁エピソードはない
  • 気分循環症 ― 軽躁症状と抑うつ症状が2年以上続くが、いずれのエピソードの基準も満たさない

院試での問われ方:「うつ病の診断基準の要点」「双極症Ⅰ型とⅡ型の違い」「気分障害という分類がどう変わったか」。うつ病の治療は薬物療法と認知行動療法・対人関係療法などの心理療法、休養と環境調整の組み合わせ。自殺リスクのアセスメントが心理職の重要な役割である。

心身症と関連する状態

心身症とは、日本心身医学会の定義(1991)では「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態」をいい、神経症やうつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する。DSM の診断名ではなく、日本の心身医学の概念である点に注意する。DSM-5-TR では「他の医学的疾患に影響する心理的要因」がこれに近い。

  • 過敏性腸症候群 ― 下痢・便秘・腹痛などが持続する腸管の機能異常。ストレスの関与が大きい
  • 虚血性心疾患とタイプA行動パターン ― 時間切迫感、競争心、敵意などを特徴とするタイプA行動は心筋梗塞などの危険因子とされた(フリードマンとローゼンマン)
  • アレキシサイミア(失感情症) ― シフネオスが提唱。自分の感情を認知し言葉にすることが難しく、空想が乏しく、身体症状を細かく訴えるが感情は語らない。心身症患者の特徴として研究された

食行動症及び摂食症群(旧・摂食障害)

DSM-5 で独立した群となった。食行動の異常と、体重・体型への認知の歪みを特徴とする。

  • 神経性やせ症(拒食症)― 体重増加への強い恐怖と、著しい低体重。制限型と過食・排出型
  • 神経性過食症 ― 過食と、体重増加を防ぐための不適切な代償行動(自己誘発性嘔吐、下剤の乱用、過度の運動)の反復
  • 過食性障害(むちゃ食い症)― 代償行動を伴わない過食の反復。DSM-5 で正式診断に
  • 回避・制限性食物摂取症 ― 体型へのこだわりを伴わない食物回避

パーソナリティ症群(パーソナリティ障害)

パーソナリティの偏りが著しく固定化し、本人が苦しみ、または周囲との間に持続的な問題を生じている状態。DSM-5-TR では10種類を3群(クラスター)に分ける。DSM-5 では多軸診断の廃止に伴い、他の精神疾患と同じ列で診断する。

特徴各パーソナリティ症
A群(奇妙で風変わり)他者への不信、孤立、奇異な信念猜疑性(妄想性):他者の動機を悪意あるものと解釈し、根に持つ/シゾイド(スキゾイド):親密な関係を求めず、感情表出が乏しい/統合失調型:奇妙な信念や知覚、対人不安
B群(演技的・情緒的・移り気)感情と行動の不安定さ、対人関係の激しさ反社会性:規範の無視、欺瞞、衝動性、良心の呵責の欠如(18歳以上、15歳以前に素行症の証拠)/ボーダーライン(境界性):見捨てられ不安、理想化とこき下ろしを揺れ動く対人関係、不安定な自己像、衝動性、自傷/演技性:注目の的でいようとし、感情表出が浅く移ろいやすい/自己愛性:誇大性、賞賛への欲求、共感の欠如
C群(不安・恐怖)不安と自信のなさが目立つ回避性:否定的評価への過敏さから対人接触を避ける/依存性:面倒をみてもらいたい欲求、分離への恐れ、決断を他者に委ねる/強迫性:秩序・完全主義・統制へのとらわれ、融通のなさ
  • ボーダーライン(境界性)パーソナリティ症は心理臨床で最も問われる。カーンバーグの境界水準(§1.3)とは概念が異なる点に注意(前者は DSM の診断名、後者は病態水準)
  • 治療は、弁証法的行動療法(DBT)、メンタライゼーションに基づく治療(MBT)、転移焦点化精神療法(TFP)、スキーマ療法など、パーソナリティ症に特化した心理療法が発展している

神経発達症群(発達障害)

日本の発達障害者支援法(2005年施行)は、発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するもの」と定義している(法律の条文は旧用語のまま)。DSM-5-TR ではこれらは神経発達症群としてまとめられる。

7.1 知的発達症(知的能力障害)

知的機能(推論、問題解決、学習など)と適応機能(概念的・社会的・実用的領域)の両方の欠陥が発達期に生じたもの。DSM-5 では重症度を IQ の数値ではなく適応機能で判定する(軽度・中等度・重度・最重度)。IQ はおおむね70前後以下が目安。旧称「精神遅滞」。

7.2 自閉スペクトラム症(ASD)

DSM-5 で、自閉性障害・アスペルガー障害・特定不能の広汎性発達障害などを一つの連続体(スペクトラム)に統合した。中核特性は2領域。

  1. 社会的コミュニケーションと対人的相互反応の持続的な困難 ― 情緒的相互性、非言語的コミュニケーション、関係の発展・維持の困難
  2. 限定された反復的な行動・興味・活動 ― 常同運動、同一性へのこだわり、限定された興味、感覚の過敏・鈍麻(DSM-5 で追加)

症状は発達早期から存在し、知的障害や言語の遅れを伴う場合も伴わない場合もある。原因は脳の機能的な特性とされ、「母親の養育が原因」という古い説は否定されている。支援は特性理解に基づく環境調整、早期療育、構造化(TEACCH)、SST など。

旧用語の扱い:「アスペルガー障害」「高機能自閉症」「広汎性発達障害」は DSM-5 で診断名としては廃止されたが、院試では歴史と、なぜ統合されたか(境界を引くことの困難、連続体としての理解)が問われる。カナーの早期幼児自閉症(1943)、アスペルガーの報告(1944)、ウィングの「三つ組」とスペクトラムの提唱も押さえる。

7.3 注意欠如多動症(ADHD)

不注意(注意の持続困難、忘れ物、指示に従えない、整理が苦手)と多動性・衝動性(落ち着きのなさ、離席、順番を待てない、しゃべりすぎる)を主症状とする。DSM-5-TR では症状が12歳以前から存在し(DSM-Ⅳ は7歳以前)、複数の場面で6か月以上続き、機能を妨げていることが基準。不注意優勢・多動衝動優勢・混合の3つの状態像がある。成人期まで持続することも多く、成人の診断も増えている。支援は環境調整、ペアレント・トレーニング、行動的支援、薬物療法(メチルフェニデート等)の組み合わせ。

7.4 限局性学習症(SLD)

全般的な知的発達に遅れはないが、読み(ディスレクシア)・書き・算数のいずれかの習得と使用に著しい困難がある。旧称「学習障害(LD)」。教育の場では文部科学省の定義(聞く・話す・読む・書く・計算する・推論する)がより広い。

7.5 その他の神経発達症

  • コミュニケーション症群(言語症、語音症、吃音など)
  • 運動症群発達性協調運動症(不器用)、チック症群:突発的・反復的な運動または音声。多彩な運動チックと1つ以上の音声チックが1年以上続くものをトゥレット症という

7.6 秩序破壊的・衝動制御・素行症群(旧・破壊的行動障害)

DSM-5 で ADHD から分離して独立した群となった。

  • 反抗挑発症 ― 怒りっぽく、反抗的・挑発的な行動様式
  • 素行症(行為障害)― 人や動物への攻撃、所有物の破壊、嘘や窃盗、重大な規則違反を持続的に繰り返す
  • 間欠爆発症 ― 攻撃的衝動の制御不能

かつての用語:「微細脳機能障害(MBD)」は1960年代に LD や ADHD の原因として想定された概念で、現在は用いられない。「軽度発達障害」も行政用語として使われたが、2007年に文部科学省が使用を控える方針を出した。歴史として知っておく。

児童・青年期に特有な問題

  • チック症群・トゥレット症 ― §7.5
  • 排泄症群遺尿症(5歳以上で、衣服や寝具への反復する排尿。夜尿を含む)、遺糞症(4歳以上で、不適切な場所への反復する排便)
  • 分離不安症 ― 愛着対象からの分離に対する過剰な不安。登園・登校しぶり、身体症状を伴う。DSM-5 で不安症群へ
  • 選択性緘黙 ― 他の場面では話せるのに、特定の社会的場面で一貫して話せない。背景に強い不安がある。DSM-5 で不安症群へ
  • 不登校 ― 診断名ではなく、文部科学省の定義(年間30日以上の欠席、病気・経済的理由を除く)による状態像。要因は多様で、不安症・うつ病・発達特性・家庭環境などが重なる。個別の見立てと、学校・家庭・関係機関の連携による支援が基本
  • 児童虐待 ― 身体的・性的・心理的虐待とネグレクト。心理職には通告義務と、トラウマの理解に基づく支援が求められる。直近の院試で出題が増えている

神経認知障害群(老年期に特有な問題)

9.1 認知症

後天的な脳の疾患により、いったん獲得された認知機能が持続的に低下し、日常生活に支障をきたした状態。DSM-5-TR では認知症(major neurocognitive disorder)と、それより軽い軽度認知障害(MCI)を区別する。旧称「痴呆」は2004年に「認知症」に改められた。

  • 中核症状 ― 記憶障害、見当識障害、失語・失行・失認、実行機能の障害
  • 行動・心理症状(BPSD) ― 妄想、幻覚、抑うつ、不安、徘徊、興奮など。環境や関わり方の影響を受けやすく、心理職の関与が求められる領域
  • アルツハイマー型認知症 ― 最も多い(おおむね6〜7割)。脳の神経細胞の変性・脱落による退行性疾患で、進行性。初期に記銘力の低下が目立つ。65歳未満の発症は若年性
  • 血管性認知症 ― 脳梗塞や脳出血の後遺症として生じる。障害された部位により症状がまだらに現れる
  • レビー小体型認知症(具体的な幻視、パーキンソン症状、認知の変動)、前頭側頭型認知症(人格変化、脱抑制)も押さえる

9.2 せん妄

注意と意識の障害(注意の集中・維持・転換の困難、意識の混濁)と認知の変化(見当識障害、記憶欠損、言語の障害)が短期間に出現し、日内変動する状態。身体疾患、薬物、手術、環境変化などが引き金になる。認知症とは異なり、原因を取り除けば回復しうる。

9.3 老年期うつ病

もの忘れや身体の不調を主訴として受診することが多く、認知症との鑑別(仮性認知症)が必要になる。身体疾患、配偶者や友人との死別、退職や転居などの喪失体験がきっかけになりやすく、自己効力感の低下と自殺のリスクに注意する。

院試ではこう問われる(この章のまとめ)

  1. 用語説明 ― 「操作的診断基準」「多軸診断(とその廃止)」「病態水準」「統合失調症の陽性症状と陰性症状」「自閉スペクトラム症」「せん妄と認知症の違い」
  2. 歴史と変更 ― 精神分裂病 → 統合失調症、痴呆 → 認知症、広汎性発達障害 → ASD、神経症の分割。なぜ変わったか(偏見の回避、連続体としての理解、記述的分類)まで書く
  3. 心理職の関わり ― 診断は医師の業務。心理職はアセスメント・心理教育・心理療法・家族支援・多職種連携で関わる。公認心理師法(第2条)の業務に即して書く

2限目の課題:頻出語の200字と、論述800字

動画の終わりで出している課題と同じです。どれも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
それぞれの動画の終わりに出てくる頻出語を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義 → 外せないキーワード → 人物と年 → 似た語との違い」の順で書くと、200字になります。

課題2 論述(各800字)
① 操作的診断基準の長所と短所を述べ、心理職がそれをどう用いるべきかを論じなさい(DSM と多軸診断の歴史に触れること)。
② 統合失調症の陽性症状と陰性症状を説明し、心理職がどのような支援に関わるかを論じなさい(経過の4つの時期に触れること)。

書いたら「できた!」を押す。頻出語の200字と、論述の模範解答は、学生証(無料登録)で読めます。

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『看護のための精神医学 第2版』の表紙

看護のための精神医学[第2版]

中井久夫・山口直彦 著/医学書院(2004年)

精神科の病気を、分類や基準としてではなく、目の前の人とどう関わるかという視点から書いた本です。題名は「看護のための」ですが、心理職を目指す人にも長く読まれてきました。動画で診断の枠組みを押さえたあとに読むと、病名の向こうにいる人の姿が見えてきます。2004年の刊行なので、病名や診断基準は当時のものです。いまの病名は、この限目のテキストで確かめてください。

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この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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