院試塾 0限目(登録不要)。臨床心理系の大学院を目指す人に向けて、院試の地図を渡す回です。52大学の過去問676本を数えて、何が出るのかを見ていきます。動画は約12分、テキストは下にあります。
何を数えたか
52大学の入試問題、676本を数えました(1999〜2004年度)。内訳は日本語の専門科目が373本、英語が291本です。古い資料なので、直近の2024〜2026年度に各大学が公式サイトで公開した90本(9大学)で、変化を確かめました。
数え方は単純です。その領域の用語が1問に1語でも出てくれば1本と数えます。だから、以下の数字は「重要度」ではなく「出会う確率」として読んでください。
出る領域の順位
専門科目373本のうち、その領域の用語が出てくる問題の割合です。
| 順 | 領域 | 出題率 |
|---|---|---|
| 1 | 精神医学 | 58.7% |
| 2 | パーソナリティと査定 | 56.8% |
| 3 | 臨床心理学とは・職域・歴史(総論) | 52.3% |
| 4 | 精神分析 パーソナリティ論 | 48.5% |
| 5 | 研究法・統計 | 46.9% |
| 6 | 行動療法・認知行動療法 | 38.1% |
| 7 | 精神分析 発達論 | 30.6% |
| 8 | 人間性心理学 | 29.0% |
| 9 | 知能と査定 | 24.4% |
| 10 | 精神分析 治療論 | 20.1% |
| 11 | 精神分析 対象関係論 | 13.9% |
上の5つで、臨床領域の骨格はほぼ決まります。ただし、この表は臨床領域だけを数えたものです。基礎心理学は別に数えました。
頻出の語 上位3つ
語で数えると、1位は「臨床心理学」(35.9%)、2位は「パーソナリティ/人格」(28.2%)、3位は「精神分析」(16.9%)です。この3つは、用語の定義を200字で書けるようにしておくのが最低ラインです。
基礎心理学も出る
臨床心理系の大学院でも、基礎心理学(動機づけ・感情、発達、社会、記憶・認知、神経・生理、知覚、学習)は出ます。同じ373本を基礎心理学の用語で数え直すと、59.8%の問題に1語以上出てきました。直近の73本でも47.9%です。20年で知覚・学習・社会が減り、神経・生理(脳、自律神経、睡眠)と発達(心の理論)が増えています。
大学による差が大きい領域です。心理学専攻の中に臨床コースがある大学院ではほぼ必ず出て、臨床心理学専攻として独立している大学院ではあまり出ません。志望校の募集単位を見て、配分を決めてください。院試塾では「基礎心理学編」として別に時間割を組みます。
語では見えない本命:研究法・統計
語で数えると目立ちません。「仮説」が12.3%で9位、「相関」が10.2%で11位。ところが「有意」「尺度」「事例研究」と合わせると、上位30語のうち5語がこの領域で、束ねると46.9%。ほぼ2問に1問、研究法か統計の言葉に出会います。市販の対策書でも手薄な領域で、このコースでは第11章と模範解答例で扱います。
もう一つの科目:英語
676本のうち291本が英語でした。数が多いのは当然で、多くの大学院は専門科目と英語の2科目を課します。つまり英語は、専門と並ぶ独立した1科目です。中身の多くは心理学の論文を読んで要約したり訳したりするもので、直近では出典の論文名まで公開している大学もあります。専門の暗記と同じ比重で、英語も毎日少しずつ。
20年で変わったこと
1999〜2004年度(52大学・373本)と、2024〜2026年度(9大学・90本)を比べました。
| 領域 | 1999〜2004 | 2024〜2026 | 動き |
|---|---|---|---|
| 総論(臨床心理学とは・職域・歴史) | 52.3% | 64.4% | 伸びた |
| 精神医学 | 58.7% | 30.0% | 下がった |
| 精神分析 パーソナリティ論 | 48.5% | 18.9% | 下がった |
| 研究法・統計 | 46.9% | 45.6% | ほぼ不動 |
もっとも信頼できるのは、研究法・統計が20年間ほぼ不動という点です。直近は9大学90本しかないので、方向は信じてよく、数字は割り引いてください。
直近で増えた語
- 倫理:直近では25.6%、頻出2位。20年前は上位50語の圏外
- 公認心理師:2017年に制度が始まったので旧過去問にはゼロ。直近では6.7%
- 予防・多職種・虐待・認知症:地域と連携を問う軸。古い参考書だけで勉強すると、この軸が丸ごと抜けます
大学ごとの色
同じ院試でも、大学ごとに色があります。1999〜2004年度の出題本数が多い大学から4つ。
| 大学院 | 最上位 | 上位3領域 |
|---|---|---|
| 専修大学 | 研究法・統計 | 研究法/行動・認知/査定 |
| 学習院大学 | 研究法・統計 | 研究法/精神分析/精神医学 |
| 愛知学院大学 | 査定 | 査定/精神医学/精神分析 |
| 久留米大学 | 精神医学 | 精神医学/査定/研究法 |
全国平均の順位だけで勉強すると、志望校の色を外します。志望校の過去問を3年分並べて、どの領域が厚いかを自分で数える。これが最初の作業です。
過去問はどこにあるか
臨床心理士の指定大学院153校の公式サイトを調べると、83校(54%)に過去問のページがありました。半分ほどです。ただし、学部の入試や、ほかの研究科の問題も混ざっています。志望する研究科の分があるかは、自分の目で確かめてください。なかには出題の意図や評価の基準まで公開している大学もあります。まず志望校の公式サイトで「過去問」を探してください。
だから、何から勉強するか
- 骨格の3領域:精神医学・査定・総論。出題率が5割を超える定番(第1章・第8〜10章)
- 研究法・統計:20年不動の46%。出願に必要な研究計画書と地続き(第11章・模範解答例)
- 英語を毎日:専門と並ぶもう一つの科目。論文の要旨を1日1本、読んで要約する
- 志望校で補正:過去問3年分を数えて、厚い領域を足す
数字の読み方(限度)
- 出題率は「出会う確率」です。1問に1語でも出れば数えているので、設問の中心とは限りません
- 元データは1999〜2004年度です。骨格は読めますが、いま何が出るかは直近で確かめてください
- 直近のデータは9大学90本です。変化の方向は信頼できますが、下げ幅の数字は割り引いてください
- この順位は臨床領域だけを数えたものです。基礎心理学は別に数えると、約6割の問題に出ます
地図は地図です。現地は、志望校の過去問で確かめてください。
心理学辞典
中島義明ほか 編/有斐閣(1999年)
ここから先、知らない用語に出会うたびに引く1冊です。院試の用語説明は、定義を正確に書くところから始まります。ネットの説明で済ませず、辞典で確かめる習慣を0限目のうちに。1999年刊なので、その後に出てきた診断名や概念は載っていません。そこは各限目のテキストで補ってください。
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0限目の課題:勉強の順番を決める
時間割を見て、自分の順番を決めたら押してください。この端末に記録され、時間割に反映されます。
臨床心理系大学院で教鞭をとってきた教員が作成しています。ナレーションは合成音声です。公開前に教員が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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