時間とお金を無駄にせず社会人がカウンセラー、公認心理師/臨床心理士を目指すポイント
これまで10年近く大学・大学院で社会人の方に対して公認心理師/臨床心理士の育成に携わってきました。社会人経験のある方が一念発起でわざわざ心理学を学びはじめた背景には心動かされる物語があり、それに携わってこれたことは私自身が社会を知るきっかけにもなっています。
一方で、社会人の方々にとっては少ない情報で見通しがつかず、挫折や時間とお金を浪費してきた姿もみてきました。
そこで本記事では社会人の方に特化して最初に大事な見通しをお伝えします。
この記事をざっくり説明すると…
社会活動はすべて心理支援につながっているので、社会人の方はすでにそれぞれの専門性で心理支援をしている。臨床心理士/公認心理師は、心理学的視点で心理支援を組み立てる仕事で、それは明確な目標が必ずしもないアプローチである。いずれも心理支援ではあるが、2つのことを同じ人が同時にはできないので、
1.いまの専門性に臨床心理学的視点を取り入れて心理支援をする人になる(心理学の専門家を目指す)
2.臨床心理学を専門に(鞍替え)して心理師支援をする人になる(専門に心理学視点を加える)
かを選ぶときがくる。それに迷い続けることが挫折や時間とお金の浪費になりやすい。
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多くの社会人はすでに心理支援をしている。
臨床心理士/公認心理師は、”こころ”の問題にアプローチし、心理支援をする専門家で、”こころ”の専門家といわれることがあります。しかし、”こころ”は見えないですし、いろいろな意味が含まれているので、臨床心理士/公認心理師でも”こころ”の専門家といわれることに違和感を持つ人がいますし、私としても社会に誤解を与えるフレーズだなと思っています。
臨床心理士/公認心理師として、また、社会人が臨床心理士/公認心理師を目指すうえで謙虚さを持っておかなければならないのは、「臨床心理学」あるいは「心理学」に基づいて心理支援をする専門家が臨床心理士/公認心理師だという点です。このことは、経験上、社会人の方に知っておいていただきたい最も重要な点であります。
なぜなら、社会活動している方はみんな何らかの心理支援を専門的にしてきており、それをベースに心理支援を目指そうとする方がいらっしゃるからです。たとえば、会社員は、自身の仕事をやり遂げることや部下のマネージメントを通して他者の心理支援をしていますし、マーケッターやサイトデザイナーは自身の専門性で商品と人を結ぶことで心理支援をしています。学校の先生や、保育士も子どもの心理支援をしている専門性高い職業といえます。
つまり、社会人はそれぞれ独自の専門性をもって心理支援をすでにしていらっしゃており、それぞれの専門性で心理支援してこられたことと、公認心理師/臨床心理士の専門性で心理支援をするということは別モノであることをまずは知って欲しいと思っています。
そして、公認心理師/臨床心理士を目指すうえで2つの道を選ぶ必要があることを知っておいてください。
- いまの専門性に臨床心理学的視点を取り入れて心理支援をする人になる
- 臨床心理学を専門に(鞍替え)して心理師支援をする人になる
繰り返しになりますが、1と2は大きく違っていて、どちらに進むかはいつか決心しなければいけないときがきます。1と2どちらに進むか先送りにしてしまうことが、社会人の方にとって最大の時間とお金の浪費ポイントです。
なぜ、先送りにしてしまうのか
なぜ先送りにしてしまのでしょう。その理由は、臨床心理士/公認心理師の仕事が見えないことにあるでしょう。見えないのでとりあえず進んでみると底なし沼にハマるということは、見知らぬ森の中でも進路の中でも起こることです。
これを見ている方は是非一度改めて考えて欲しいのですが、パイロットやお花屋さんの仕事をイメージしたときの解像度に比べて、臨床心理士/公認心理師の仕事の解像度はどうでしょうか。もちろん見えない部分もあると思いますが、はっきりいって、4Kテレビとモノクロテレビの差があるのに気づくかと思います。
実は、臨床心理士/公認心理師の仕事って専門家でも見えづらいくらい、わからないのです。
私自身10代のころ、精神保健福祉士と臨床心理士の違いが分からず進路選択のときに専門学校までいって先生に聞いたら「精神保健福祉士は汗水垂らして患者の為に頑張って動く人、臨床心理士は偉そうに椅子に座って話を聴く人(※発言ソノママでその方の見解です)」と聞いて余計に訳分からずとりあえず偉そうな方を選んだ経緯があります。
たま~にドラマに出てくる臨床心理士/公認心理師も実態からかけ離れすぎていて見ていられないのが正直なところです。10代であれば、憧れや夢の勢いで見えない世界に足を踏み入れるのも一興かと思いますが、社会人の方にはもう少し先見を持っていただくと貴重な時間の浪費にならないかなと思って本記事を執筆しています。
では臨床心理士/公認心理師の仕事とは?
「見えない」心を扱っていることから、この「見え無さ」こそ心理士の仕事の本質ともいえます。臨床心理士/公認心理師の仕事はゴールがない、見えない仕事といってもいいのかもしれません。心理学を学んでいるうちにその「見え無さ」が徐々に見えてくることでしょう。次のツイートに専門家含めて反響があったのもそうしたことを表しているかもしれません。
まず、「精神的健康」や「幸せ」などをゴールにできません。もし明確な方法やゴールがあったら、世界中の人が精神的に健康、幸せになっているはずで、先進国ほどこの問題が出ないはずです。しかし、複雑なこの問題は人類はじまって以来、今もどこの国でも存在し続けています。それは、人類全体に明確な方法やゴールでアプローチできないからです。それよりも個別な人に個別なアプローチをするといっていいかもしれません。
臨床心理士/公認心理師の仕事は、心理・社会・生物学的多視点でアプローチする複雑性へのアプローチを使います。
ちなみに、複雑なこの問題に向き合う専門家になる研修にもゴールはありません。長い時間(学部編入2年+大学院2年)の下積みと終わりなき研鑽の日々があって学びにゴールはありません。私も大学で教えていますが、私自身が教わり続けてもいます。本当に終わりがない領域だなと感じています。以下の動画は心理学部在学、卒業した社会人の感想で、学ぶと「わからなくなる」とみなさんおっしゃっています。良ければご覧ください。
目指す先のみえ無さがみえてきたとき
そして、臨床心理士/公認心理師にとって「幸せ」や「精神的健康」がゴールにならないことや、終わりなき自己研鑽という見え無さが学びはじめて見えてきたときに、社会人の方(の多く)はきっとこう思うのです。
「なんか、思ってたのと違う」
それは、いろいろな形で思います。授業中に教員の話を聴いているとき、レポートを一人で書いているとき、よくわからない成績がついたとき…。
それはある意味正しい感覚と私は思います。なぜなら、社会人の方はその専門性を持って具体的な心理支援をしてきたのに、あえて目標が曖昧な臨床心理士/公認心理師の仕事をする意味がわからなくなってくるからです。たとえるなら、車を売って、あるいは、部下を励ますことで明確な心理支援をしてきたのに、今更「車を買うことが幸せなのか」「励ましたり会社に部下を残すことが相手にとって幸せなのか」という答えのない問題に心理的に寄り添うポジションになる意味がよくわからなくなるのだと思います。
なので、あえてトゲのある言い方をすると、
(あまり社会経験がない)教員の話を聴いたり、(頭だけで抽象的な)レポートを書いているとき、(ゴールが曖昧な)成績がついたとき、違和感を感じるのだと社会人の臨床心理士/公認心理師育成をしていて感じます。
もちろん、「2.臨床心理学を専門に(鞍替え)して心理師支援をする人になる」ことを決心した人はそこでも耐えて学び続けます。「なんか、思ってたのと違う」という違和感に向き合うことが臨床心理士/公認心理師の素質でもあります。おそらく、社会人の方にとって心理学・臨床心理学と大学での学びは違和感だらけであると思います。
問題は、「1.いまの専門性に臨床心理学的視点を取り入れて心理支援をする人になる」と決心した人がです。最初に述べたように、会社員、マーケッター、サイトデザイナー、教員、保育士、みんなそれぞれの専門性で心理支援をする専門家です。社会人の方たちはすでに、具体的に行動レベルで支援をしてきているので、違和感を感じたときに抽象的な勉強を辞めてしまう傾向にあります。大学・大学院には、臨床心理士/公認心理師育成のカリキュラムはありますが、今のあなたの専門性に臨床心理士/公認心理師の視点を取り入れる具体的なカリキュラムはないからです。今のあなたの専門性に臨床心理士/公認心理師の視点を取り入れるには、大学での学びを超えて、専門家のコンサルテーションと具体的な実践が必要でフロムユーではそうしたコンテンツの充実を目指していきます。
なので、本記事を読んだ方は、
1.いまの専門性に臨床心理学的視点を取り入れて心理支援をする人になる
2.臨床心理学を専門に(鞍替え)して心理師支援をする人になる
かを選ぶときがくる。それに迷い続けることが挫折や時間とお金の浪費になりやすいことを知っておいてください。
最後に
しかし、このあたりのことは体験してみないと分からないことかもしれませんし、大学で出会える仲間は先述したYOUTUBEでもあったように投資価値のある部分かもしれません。進路で迷っている方は、原則毎週土曜日21時~に私が主催している、【無料】心理学なんで相談会(別サイト)にご参加ください。社会人で心理学を学ばれている方も集まってきますのでいろいろ話を聞けると思います。
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