【臨床/公認心理師/研究計画書】社会人が研究計画書作りで押さえるべき3ポイント

臨床心理士/公認心理師を目指す社会人が、指定大学院を受ける際に悩むのが研究計画書作りではないでしょうか。本記事では、大学/大学院で社会人の臨床心理士/公認心理師育成に携わってきた著者が社会人に特化して、研究計画書作りの見通しをお伝えします。

結論からいうと、実際に計画している研究について①研究を熟知しているか、②研究を行うことは可能なのか、③志望大学の指導教授がその研究の指導をすることは可能なのか、がポイントになります。また、記事では社会人が研究計画書を書く際の強みと弱みにも触れます。

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目次

研究計画とは?よくある質問

臨床心理士/公認心理師を目指す心理系大学院の研究計画は、大学院によっても違いますが、A4で1枚を書くところが多いです。そして、よくある質問をまず2つあげます。

実証研究でなくてもいいですか?(ケース研究とか、レビューとかでもいいですか?)

結論として、希望している大学院の先生によるところがあるので情報をチェックする必要があります。方法としては、研究室のホームページからその先生やゼミ生がやっている修士論文のタイトルや内容から研究方法を探ります。

実際のところ、統計的に実証することが求められる研究室が多い。なので研究計画も、基本的には、ケース研究等よりも、実証研究で書いた方が無難です。しかし、前提として統計や研究法は学部で押さえる基礎がわかっているということが大事。実証研究を避ける受験生の多くは、基礎的な統計の勉強を回避したいためにその質問をしていることが多いので、そこがどこかにあると結局は見抜かれて印象悪くなります。

もちろん、中には出来のいいケース研究だったり、レビューだったりするとそれで通してくれるようなところもあります。繰り返しになりますが、希望している大学院の先生によるところがあるので情報をチェックする必要があります。

理学部のときに書いた卒論を発展させた形や、その卒論の領域とかぶっている方が研究計画書としてはいいんですか?

もちろん、卒論を発展させた方が良いです。大学院を目指す方は、卒論を書く段階でしっかりと大学院を見据えた研究計画をつくっておくのがよいと思います。すると、説得力があがります。研究室訪問した際も「ああ、この人はこういう分野に興味があって、卒論でここまでやってるのか。それで、さらに課題として残ったこっちの部分を修論で展開していくのね」ってイメージが湧くので好印象です。

そもそも卒論書いてないのですが、どうしましょう?

大学院受験を目指している社会人に「現場経験ある社会人は卒論は書かなくても受かる(から書かなくていい)」という人がいます。謎に教員でもそのように言う人がいます。確かに受かります。が!大学院を教えていた著者として、ポイント①の「研究を熟知しているか」を研究計画ではみているので、卒論はその下地と経験になります。書かなかった理由が、「基礎的な統計の勉強を回避したいため」である場合はどこかで伝わってしまいますのでまだ間に合うなら卒論はしっかりと取り組むべきと考えます。

しかし、忙しい社会人の皆さんが全員、卒論を書いているわけでもないのも事実です。大事なのは、最初にポイントとした、①研究を熟知しているか、②研究を行うことは可能なのか、③志望大学の指導教授がその研究の指導をすることは可能なのか、を説得力もってプレゼンできるかどうかです。

そのためにも、研究計画書で大学院の先生に説得力を持って伝えるべきポイントをそれぞれ詳しくみてみましょう。

研究計画書で大学院の先生に説得力を持って伝えるべき3ポイント

①心理学研究法を熟知しているか

研究計画書は、問題の背景⇒⽬的⇒⽅法⇒予測される結果や研究の意義というながれで、論理的に説明する必要があります。
これはテンプレートのように決まっていて次のようなものです…

研究計画書のテンプレート

「今まで~というテーマは、~という定義で~という分野で~というような研究がなされてきた。しかし~という点では未だ十分に研究がされているとはいい難い。そこで本研究においては~という点を明らかにすることを目的とする。実証する作業仮説としては~として設定する。そして対象は~で、方法は~を用いて、統計的方法によって得られたデータを解析して、目的を明らかにしてく。この研究を行うことで、臨床的には~という意義があると思われる。」


つまり、問題の背景・⽅法予想される結果や研究の意義、という流れで論理的に説明してくださいということです。
大事なのは、これやると臨床的にはこんな意味・意義がありますよっていう部分です。
これはもうフォーマットなので、これに⾃分の興味・関⼼のあるテーマの先⾏研究とか調べて⼊れ込めばいいだけの話です。

②研究を行うことは可能なのか

計画段階で、実際に本当にその研究を⾏うことがあなたにできるのかどうかをチェックしてください。⾃分が活⽤できる資源、技術を⾒極めてください。受験生の現実感をみるうえでも、ここはものすごく⼤事です。実際に研究対象を確保できるフィールド持っているのか、とか、分析方法を熟知しているのか等です。

対象でいえば、フィールドがなければ病気の人を対象にするのはかなり難しいです。発達障害やAD/HD対象にって書いてあっても、「どこで誰が被験者集めるの?」となってしまいます。また、研究法でいえば、たとえば、KJ法とか質的研究は資格が必要です。そうしたことを知らないで書いたり、夢物語を書くと、研究計画書はイメージ悪いです。実現可能な現実的なものを書きましょう。

③志望大学の指導教授がその研究の指導をすることは可能か

ここでミスする人はあまりいないのですが、指導教授の研究内容やフィールド方法論を知らずに研究計画を持っていくとアウトです。しっかりホームページや著書、論文でイメージをしていきましょう。あまり媚びるのもよくはないのですが、直近でやっている研究内容と関係していると印象はいいはずです。科学研究費助成事業で研究費をとっている先生だと、最近の研究内容はそこでも検索するとわかるのでチェックしてみてください。

社会人が研究計画書を書く際の強みと弱み

弱み

社会人が研究計画書で陥る弱みは、研究法や統計を熟知していない傾向です。特に学部編入で卒論も書いていないとどうしても基礎的な知識と経験が足りない傾向にあります。

研究や統計の基礎が押さえられていない方は研究室訪問までにぜひ研究・統計勉強ページを活用して基礎を押さえておきましょう。

また、これも傾向ですが、経験豊富なこととアツい思いが裏目に出て社会人の方は壮大な研究計画を立てがちです。研究は驚くほど地道な作業です。大学院にいる先生たちはプロでありながら解明しようとしている部分の欠片を集めているイメージで研究に取り組んでいます。卒論は場に立つレベル、修士論文はまだまだ練習です。②研究を行うことは可能なのか、を改めて確認ください。

強み

社会人の方がピンときていないだろう強みは、その研究フィールドにあります。大学教員は大学の外に出て研究フィールドを手に入れる難しさがあるので、独自のフィールドがある場合は「②研究を行うことは可能なのか」に外れない範囲で謙虚にアピールすると良いでしょう。たとえば、職場内で調査する許可を得ている、(親、自助)コミニティと関わっていて調査協力を得られる、等です。

また、社会人経験ならではの経験を通して練られた研究計画は臨床的な意味・意義という点で、教員の方が気づかされることもあります。その熱意を「先生の指導のもとでやりたい」と伝えることは大事です。

ただ、繰り返しになりますが、壮大な夢物語の研究計画を語っては決していけません。
謙虚で実現可能な研究計画が好印象です。

社会人が研究計画をチェックする方法…

とはいえ、一人でやっていると、どんどんドツボにハマる研究計画は人にみてもらうのが良いでしょう。しかし、孤軍奮闘で院試に挑戦している方も多いはず。FromUでは、原則、毎週土曜日に【無料】心理学何でも相談会(新しいタブで別ページに飛びます)を実施しています。そこで研究計画の質問をすることも可能ですのでよろしければいらっしゃってください。院試に向けて頑張っている他の社会人も参加していますので、そこで情報交換ができるかもしれません。

こんな本もあります

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この記事を書いた人

沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師)のアバター 沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師) 医学博士/臨床心理士/公認心理師

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