【1限目】臨床心理学とは、何をする学問か|無料オンライン臨床心理系大学院対策

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院試塾 1限目。院試で最初に問われる総論、臨床心理学とは何かを扱います。暗記の前に、まず全体の地図を持ってもらいます。動画は約15分、テキストは下にあります。

2026年の補注(公認心理師について) 本文は臨床心理士の4つの専門業務を軸に書かれています。2017年に施行された公認心理師法(第2条)は、公認心理師の業務を「①心理状態の観察と結果の分析 ②本人への相談・助言・指導その他の援助 ③関係者への相談・助言・指導その他の援助 ④心の健康に関する教育と情報提供」の4つに定めています。臨床心理士の「査定・面接・地域援助」と対応させて覚え、④が法で明記された業務である点、臨床心理士の「調査・研究」が法の業務には含まれない点を押さえてください。いまの院試では両資格の違いを問う出題があります。

1限目の頻出語マップ

1限目で覚える 15 語

語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、直近の入試でも出題が続いている語。

動画 臨床心理学とは、何をする学問か(15語)

目次

臨床心理学・心理臨床とは

「臨床」とはギリシャ語でベッドを意味した医学用語で、患者を実際に診断したり、治療あるいは予防することを指していた。臨床心理学という学問領域はまだ新しく,十分な体系化がなされているわけではない。したがってこれという定義はない。

APA(American Psychological Association)によると、「臨床心理学とは、科学、理論、実践を統合して、人間行動の適応調整や人格的成長を促進し、さらには不適応、障害、苦悩の成り立ちを研究し、問題を予測し、そして問題を軽減、解消することを目的とする包括的な学問である」と定義されている。

臨床心理学の仕事

臨床心理学の固有の専門性について日本臨床心理士資格認定協会が、臨床心理士の仕事として以下の4つを挙げている。

  1. 心の特徴や問題はどこにあるのか(臨床心理査定)面接・観察・種々の心理テストを用いてその人の特徴や問題点の所在を明らかにし、どのような方法で援助するのが望ましいかを検討する。
  2. 心理カウンセリング(心理相談)の実施 来談する人の特徴に応じて、さまざまな臨床心理学的技法(遊戯療法、家族療法、精神分析、行動療法、等々)を用いて、心の問題改善に向けて援助を行う。
  3. 臨床心理学的援助 個人だけではなく、学校や職場や地域社会の人々に働きかけて有機的な援助を適切に行う(いわゆるコンサルテーション)。個人のプライバシーを十二分に守りながら、心の環境調整を専門的に行う活動ともいえる。また、一般的な生活環境の健全な発展のために、心理的情報を提供したり提言する活動も行う。
  4. 調査・研究活動 心の問題への援助を行っていくうえで、技術的な手法や知識を確実なものにしていくために、基礎となる臨床心理的調査や研究活動も行う。

臨床心理士の職域

教育の分野 学校の相談室・教育センター・教育相談機関 など

医療保険の分野 病院・診療所・保健所・精神保健センター など

福祉の分野 児童相談所・療育施設・心身障害者福祉センター・障害者作業所・各種福祉機関 など

司法・矯正の分野 家庭裁判所・少年鑑別所・刑務所・拘置所・少年院・保護観察所 など

労働・産業の分野 企業内相談室・企業内健康管理センター・ハローワーク など

臨床心理学史

元々、古代ギリシャ時代には人間の異常行動に関して、悪霊学が信じられており、治療としては、悪霊払いが行われていた。そのような中、ヒポクラテスは精神障害を、躁病・うつ病・精神錯乱に分類し、それを脳の異常とみなして安静と制約を重視する自然療法を試みた。その後、12世紀頃より、魔女狩りがヨーロッパ各地に広がり、狂気を魔女の仕組みとみなし精神病者が魔女狩りの対象となった。その後15世紀になると精神病者がハンセン病患者の収容施設に収容される事態が起こり、非人間的な待遇を受けていた。

このような状況に対し、フランスの医師ピネル(1745-1826)は精神病者の解放運動を行った。これらは精神病者の社会的な待遇改善のための施設整備を求める活動(社会モデルの動き)であったが、精神病者を市民生活から隔離し、管理する精神病院の発展に繋がったという見方もある。

19世紀半ばになると、近代科学の発展を受け精神病や異常行動を身体因による病気とみなす生理モデルが再び取り上げられ、クレペリンの精神病理学へと発展した。一方で、18-19世紀にはフランスやオーストリアでは心因論が唱えられるようになった。

メスメルは「電気磁気術」と呼ばれる治療法としての催眠性トランス状態の導入を行った。この流れは、メスメリズムとよばれ、催眠という用語が作られ発展していった。その後19世紀末にはサリペトール学派のシャルコーがヒステリー研究を始め、無意識の解明の関心が集まった。フロイトはシャルコーの下に留学し、催眠を用いた治療を行っていたが、独自に精神分析を独自に開発した。

19世紀後半には、実験心理学が誕生していた。近代科学の発展の影響を受けた科学としての心理学の誕生は、1860年のフェヒナー『精神物理学原論』であるとされている。フェヒナーは物理学的方法論を用いたこころの測定を試みた。その後フェヒナーの弟子であったヴントが、1879年にライプチヒ大学に世界初の心理学実験室を作った。また、この科学的としての心理学の誕生と平行して、ゴールトンの知的能力の個人差研究、その弟子のキャッテルが個人差を測定する精神検査(mental test)を開発していった。

1896年にウイットマー(Witmer)がペンシルバニア州に「心理クリニック(Psychological Clinic)」を開設し、APAの年次総会で「臨床心理学(Clinical Psychology)」という用語を用いて講演を行ったことが、臨床心理学の始まりであるとされている。ウィットマーは、キャッテルの下で学び、ヴントのもとで博士号を所得している。ウィットマーは、このような素養をもとに「心理クリニック」を創始し、臨床心理学を提唱するのである。

精神分析の台頭

フロイトの精神分析は1909年にアメリカに伝わり(クラーク大学での講演)非常に大きな流れになっていた。精神分析の考え方は投影法の開発などアセスメントの分野にも大きな影響を与えた。フロイトの精神分析的治療法は、基本的にはフロイトの思想や態度を踏まえながら、様々な改変を経てきている。フロイトの元を離れて異なる人格理論を提唱したユングの分析心理学、アドラーの個人心理学のほかに、フロイトの学派に属しながら理論や技法の修正を試みて、フロイト以降は自我心理学、対象関係論、自己心理学、新フロイト派などの精神分析のグループに分かれる。

行動主義心理学 ⇒ 行動療法から認知行動療法へ

ウィットマーの臨床心理学は、主観性に個人差を残しつつも実験心理学に準じて「こころ」を客体化し、科学的に分析しようというものであった。このような、科学的手法をさらに徹底させ心を客観的に観察可能な行動として理解する行動主義が出現した。

1920年にワトソンは、パヴロフが見出した古典的条件付けの原理を異常行動に適用した例を報告しており、これが行動療法の起源となった。その後、スキナーによって行動療法という用語が用いられた(後にアイゼンクが行動療法を定義)。その後、行動療法は目覚しく発展していった。

科学としての心理学を強調していた行動主義心理学であったが、情報理論を中心に批判が起こり、認知心理学が主流となっていった。エリスの論理療法(1962)・ベックの認知療法(1976)・バンデューラのモデリング療法(1970年代)などが提案され、認知過程という点で認識する主体の主観性を取り入れた。この考え方は、認知の変容から行動変容を目指す認知行動療法へと変遷していった。

クライエント中心療法の出現・人間性心理学

精神分析の考え方を批判し、人間の主観性や主体性の復権を図った新たな流れが、ロジャースのクライエント中心療法であった。クライエント中心療法では、人間性のもつ主体性を実存として尊重し、人それぞれに固有な主観的世界を現象学的世界として重視する立場(自然科学とは異なる)をとっている。このような人間性心理学の立場をとる心理療法は、この時期に第3勢力(マズローによりこう呼ばれた。)として、クライエント中心療法の他にも、パールズのゲシュタルト療法、ジェンドリンのフォーカシング、バーンの交流分析などが出現した

心理職として働くために

ここからは、直近の入試で出題が増えている「資格・連携・職業上の約束ごと」の語を、答案に書ける形で整理する。

医療モデルと、臨床心理学の見方

精神医学が見るのは、精神障害の有無とその病理であり、行うのは診断と治療である。原因を特定して取り除くというこの考え方を、医療モデル(医学モデル)と呼ぶ。

臨床心理学が見るのは、その人の心理的な側面と、生活の全体である。そのため、診断ではなくアセスメント、治療ではなく援助という語を使う。病理だけでなく、健康な面や強みも含めて見立てる点が、答案で書くべき違いである。どちらが上というものではなく、同じ人を別の角度から見る2つの専門である。

科学者-実践家モデル

臨床心理学の訓練では、研究する力と援助する力の両方を身につける。この考え方を科学者-実践家モデルと呼ぶ。1949年にアメリカ・コロラド州ボールダーの会議で示されたため、ボールダーモデルとも呼ばれる。大学院で研究と実習の両方が課されるのは、この考え方が土台にあるからである。

公認心理師と臨床心理士

臨床心理士は、日本臨床心理士資格認定協会(1988年発足)が認定する民間資格である。専門業務は、臨床心理査定、臨床心理面接、臨床心理的地域援助、調査と研究の4つ。

公認心理師は、心理職で初めての国家資格である。公認心理師法は2015年に成立し、2017年に施行された。法第2条が定める業務も4つで、①心理状態の観察と分析、②本人への相談・助言・指導、③関係者への相談・助言・指導、④心の健康に関する教育と情報の提供、である。

違いは4つめにある。臨床心理士は「調査と研究」、公認心理師は「心の健康教育」。ここがよく問われる。なお公認心理師では、働く場所を保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働の5分野と呼ぶ。

スクールカウンセラー

教育分野の代表がスクールカウンセラーである。1995年度に当時の文部省が、公立学校への派遣を試験的に始めた。仕事は児童生徒の面接だけではない。保護者の相談と、教師へのコンサルテーションが柱になる。

コミュニティ心理学と予防の3段階

コミュニティ心理学は、個人だけでなく、その人を取り巻く環境にも働きかける心理学である。1965年、アメリカ・ボストン郊外のスワンプスコットで開かれた会議(ボストン会議)が始まりとされる。背景には1963年のケネディ教書と地域精神保健センター法があり、心理職が病院の中から地域へ出ていく流れが生まれた。キーワードは、予防、危機介入、コンサルテーション、協働。日本では山本和郎が先駆者の一人である。

予防は、直近の入試で出題が大きく増えた語で、3つの段階で答える。キャプラン(カプランとも表記)が予防精神医学の中で整理した、公衆衛生の考え方である。

  • 一次予防 ― 問題が起きる前に、原因となるものを減らす。ストレスマネジメントの授業や、心の健康教育など
  • 二次予防 ― 早期発見と早期対応。相談しやすい窓口をつくることも含む
  • 三次予防 ― すでに問題を抱えた人の、再発の防止と社会復帰の支援

答案では、段階の名前に具体例を1つずつ添える。

コンサルテーション・スーパービジョン・リエゾン

混同しやすい3語なので、まとめて覚える。

  • コンサルテーション ― ある専門家が仕事の中で心の問題に直面し、心の専門家に相談すること。相談する側をコンサルティ、受ける側をコンサルタントと呼ぶ。教師がスクールカウンセラーに、生徒への関わり方を相談する場面が典型である。専門の違う者どうしの対等な関係であり、生徒への責任は教師の側に残る
  • スーパービジョン ― 同じ職種の中での指導。経験の浅い人(スーパーバイジー)が、担当している事例について、熟練者(スーパーバイザー)から指導を受ける
  • リエゾン ― 連携という意味。精神科の医師や心理職が、内科や外科の治療チームに加わり、共同で患者を診る

コンサルテーションは求めに応じた助言、リエゾンはチームへの参加、と区別する。

心理職の倫理

倫理は、直近の入試でいちばん伸びた語である。6つの柱で押さえる。

  1. 秘密保持 ― 業務で知った秘密を、正当な理由なく漏らしてはならない。公認心理師法第41条に定められ、罰則がある。資格を失ったあとも続く義務である
  2. インフォームド・コンセント ― 説明を受けたうえでの同意。援助の内容・期間・費用、秘密の扱いとその限界を説明し、本人が自分で決めることを保障する
  3. 多重関係の回避 ― 援助する相手と、友人や取引相手のような別の関係を持たない
  4. 信用失墜行為の禁止
  5. 多職種との連携 ― 公認心理師は、相談者に主治医がいるときは、その指示を受けなければならない(法第42条)
  6. 資質向上の責務 ― スーパービジョンを受け、学び続けることも倫理の一部である

守秘義務とその例外

守秘義務には例外があり、論述で問われる。まず確かめるのは、命にかかわる危険があるかどうかである。自殺や、他人を傷つけるおそれが高いときは、秘密を守ることより命を守ることが優先される。

根拠として挙げられるのが、1976年のアメリカのタラソフ判決である。クライエントが他人に危害を加える危険を知ったとき、専門家には相手を守る義務がある、とされた。児童虐待が疑われるときの通告も、法律(児童虐待防止法第6条)で守秘義務より優先される。

危険がない場合でも、学校や病院で情報を共有するときは、本人の同意を得るのが原則である。答案では、①原則、②例外、③開示は必要な範囲にとどめる、の3点を書く。

1限目の課題:頻出語の200字と、論述800字

動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
1限目の頻出語15語を、それぞれ200字で説明してください。「ひとことの定義 → 外せないキーワード → 人物と年 → 似た語との違い」の順で書くと、200字になります。
臨床心理学/心理臨床/臨床心理士/公認心理師/スクールカウンセラー/医療モデル/科学者-実践家モデル/コミュニティ心理学/予防/コンサルテーション/スーパービジョン/リエゾン/倫理/守秘義務/インフォームド・コンセント

課題2 論述(800字)
スクールカウンセラーが、担任から「気になる生徒がいる」と相談を受けた。臨床心理学の立場から、どう関わるかを論じなさい。コンサルテーションと守秘義務に触れること。
「アセスメント → 見立て → 介入 → 連携 → 予防」の5つの順で段落を立てると書けます。

書いたら「できた!」を押す。15語の200字の模範解答と、論述の模範解答は、学生証(無料登録)で読めます。

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この授業について
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この記事を書いた人

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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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