精神医学① 診断の枠組みと、神経症圏|院試塾 2限目①

院試塾 2限目① 精神医学① 診断の枠組みと、神経症圏
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院試塾 2限目①。出題率がいちばん高い領域、精神医学の1本目です。診断をするのは医師で、心理職は診断をしません。診断の分類は、医師やほかの職種と話すための共通の言葉として学びます。診断の枠組みと、神経症圏です。精神医学の入り口として、診断の考え方(操作的診断・DSM と ICD・病態水準)と、いまは分割されている「神経症」の各診断(不安症・強迫症・心的外傷関連・解離・身体症状症)を扱います。

目次

動画① 診断の枠組みと、神経症圏

2限目① の頻出語マップ

この動画で覚える 15 語

語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、直近の入試でも出題が続いている語。

動画① 精神医学① 診断の枠組みと、神経症圏(15語)

テキスト

2026年改訂について(何が変わったか)

原文(DSM-Ⅳ-TR 時代)現在(DSM-5-TR/ICD-11)
DSM-Ⅳ-TR が最新、多軸診断DSM-5(2013)で多軸診断は廃止、DSM-5-TR(2022)が最新。ICD は ICD-11(WHO・2022年発効、日本は移行中)
神経症(不安障害・身体表現性障害・解離性障害)「神経症」は分類名としては使われず、不安症群・強迫症及び関連症群・心的外傷及びストレス因関連症群・解離症群・身体症状症及び関連症群に分割
(記載なし)公認心理師制度(2017年施行)により、心理職も精神医学の診断分類を多職種連携の共通言語として理解することが求められる

疾病の分類と診断

1.1 古典的な精神科疾病分類 ― クレペリン

19世紀末から20世紀初頭にかけて、クレペリン(E. Kraepelin)は、原因・症候・経過・転帰・病理解剖所見を同じくするものを一つの疾病単位とみなす立場から、近代的な精神科疾病分類を確立した。

  • 早発性痴呆(dementia praecox)― 支離滅裂な妄想と人格の荒廃を特徴とする。統合失調症の原型(ブロイラーが1911年に「統合失調症(Schizophrenie)」と命名)
  • 躁うつ病 ― 感情と欲動の障害を主症状とする。双極症・抑うつ症群の原型

1.2 病因による三分法(伝統的分類)

  1. 外因性精神病 ― 身体的な原因(脳の器質的疾患、身体疾患、物質)によるもの
  2. 内因性精神病 ― 素質や遺伝など個体内部の要因が想定されるもの(統合失調症、双極症など)
  3. 心因性精神障害 ― 状況の変化や対人葛藤など心理的な要因によるもの

現在の操作的診断ではこの三分法は用いないが、院試では今も問われる。「外因・内因・心因」の順で答えられるようにしておく。

1.3 病態水準(カーンバーグ)

カーンバーグ(O. Kernberg)は、精神病と健常の間に連続性を仮定し、①現実検討能力 ②同一性の統合度(自他の境界) ③防衛操作(どの防衛機制を主に用いるか)の3点からパーソナリティの構造を3つの水準に分けた。

  1. 神経症水準 ― 症状はあるが現実検討は保たれ、同一性は統合され、抑圧を中心とする高次の防衛を用いる
  2. 境界水準 ― 一見神経症水準にみえるが、些細な現実の出来事を契機に一過性の精神病様症状や常軌を逸した行動を呈する。同一性拡散、分裂(スプリッティング)などの原始的防衛が優勢
  3. 精神病水準 ― 幻覚や妄想が出現し、現実検討が重篤に障害される

診断名(DSM)とは別の軸で、力動的な見立てに用いる。

1.4 操作的診断 ― DSM と ICD

国際的に比較可能な診断体系を作る努力から、アメリカ精神医学会(APA)の DSM(精神疾患の診断・統計マニュアル)と、WHO の ICD(国際疾病分類)が整備された。

  • DSM-III(1980)で、症状に基づく操作的診断基準(一定数の症状が一定期間あれば診断する)が導入され、病因論を排した記述的分類となった。同時に「神経症」という分類名が廃止され、多軸診断もこの版で導入された(『精神分析事典』p.249。2026-09-20 訂正:以前は多軸診断の導入を DSM-Ⅳ と書いていた)
  • DSM-Ⅳ(1994)/DSM-Ⅳ-TR(2000)も、5つの軸で評価する多軸診断を引き継いだ(第Ⅰ軸:臨床的障害、第Ⅱ軸:パーソナリティ障害・精神遅滞、第Ⅲ軸:身体疾患、第Ⅳ軸:心理社会的・環境的問題、第Ⅴ軸:機能の全体的評定 GAF)
  • DSM-5(2013)で多軸診断は廃止され、すべての診断を一列に記載する方式になった。障害を連続体(スペクトラム)としてとらえる考え方(自閉スペクトラム症など)と、重症度の次元評価が取り入れられた
  • DSM-5-TR(2022)は本文改訂版。日本語版(2023)では病名の訳語が「〜症」に整理された(例:不安障害 → 不安症、パーソナリティ障害 → パーソナリティ症。ただし「障害」も併記される)
  • ICD-11(WHO、2022年発効)は日本でも移行が進められており、DSM-5 とおおむね対応する。医療保険や統計では ICD が使われる

院試での問われ方:「操作的診断基準とは何か」「多軸診断が廃止された理由」「DSM と ICD の違い」。操作的診断の長所(信頼性の向上、研究と臨床の共通言語)と短所(原因や個人の文脈を扱わない、症状の数え上げ)を対で書けるようにする。

「神経症」概念と、現在の分類

2.1 神経症とは(歴史的概念)

神経症(neurosis)とは、器質的な基盤がなく、心理的な原因によって生じる心身の機能的障害で、現実検討能力と人格は保たれている状態を指す古典的概念である。シャルコー、ジャネ、フロイトのヒステリー研究に原型があり、フロイトは「無意識の葛藤が不安を引き起こし、それを防衛する心理機制によって症状が生じる」と説明した。

DSM-III 以降、分類名としての神経症は用いられなくなったが、病態水準論や力動的な見立てでは、精神病水準と対比する概念として現在も生きている。院試では「神経症の定義」と「現在の分類でどう分かれたか」の両方を押さえる。

2.2 不安症群

不安とは、明確な対象を持たない恐れであり、対処できないと感じるときに生じる感情である。不安が強く生活を妨げる状態が不安症である。

  • パニック症 ― 予期しないパニック発作(動悸、息苦しさ、死ぬのではないかという恐怖などが突然生じる)を繰り返し、発作への予期不安が続く
  • 全般不安症 ― さまざまな出来事についての過剰な心配が6か月以上続く。心配の対象は特定されない
  • 限局性恐怖症 ― 特定の対象や状況(高所、動物、血液など)への持続的で不合理な恐怖
  • 社交不安症 ― 他者から注目される場面での恐怖。日本の「対人恐怖」と重なる部分が大きい
  • 分離不安症・選択性緘黙 ― DSM-5 から不安症群に含められた(従来は「小児期の障害」)。分離不安症は成人にも診断される

2.3 強迫症及び関連症群

  • 強迫症(OCD) ― 不合理と分かっていても繰り返し浮かぶ強迫観念と、それによる不安を打ち消すための強迫行為。DSM-5 で不安症群から独立した
  • 関連症として、醜形恐怖症(身体醜形症)、ためこみ症、抜毛症、皮膚むしり症が同じ群に置かれた

2.4 心的外傷及びストレス因関連症群

  • 心的外傷後ストレス症(PTSD) ― 生命の危険を感じるような出来事のあと、①侵入症状(フラッシュバック、悪夢)②回避 ③認知と気分の陰性の変化 ④過覚醒 が1か月以上続く
  • 急性ストレス症 ― 同様の症状が出来事から3日〜1か月の範囲で生じる
  • 適応反応症(適応障害) ― 明確なストレス因への反応として、情緒面・行動面の症状が生じる
  • 反応性アタッチメント症・脱抑制型対人交流症 ― 養育の著しい不足に関連する小児の障害

2.5 解離症群

記憶・同一性・知覚・身体運動の統合が失われる状態。

  • 解離性同一症(旧・多重人格) ― 2つ以上の別個のパーソナリティ状態
  • 解離性健忘 ― 心的外傷に関連した重要な記憶の想起不能。解離性遁走は DSM-5 では解離性健忘の下位型
  • 離人感・現実感消失症

2.6 身体症状症及び関連症群(旧・身体表現性障害)

  • 身体症状症 ― 苦痛を伴う身体症状に対して、過度の思考・感情・行動を示す。DSM-5 では「医学的に説明できない」ことを要件とせず、症状への過剰な反応を基準とする
  • 病気不安症(旧・心気症)― 重い病気にかかっているという強い不安
  • 変換症/転換性障害(機能性神経学的症状症) ― 麻痺や失声など神経症状が、神経学的疾患では説明できない
  • 作為症(虚偽性障害)― 症状を意図的に作り出す

心身症と関連する状態

心身症とは、日本心身医学会の定義(1991)では「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態」をいい、神経症やうつ病など他の精神障害に伴う身体症状は除外する。DSM の診断名ではなく、日本の心身医学の概念である点に注意する。DSM-5-TR では「他の医学的疾患に影響する心理的要因」がこれに近い。

  • 過敏性腸症候群 ― 下痢・便秘・腹痛などが持続する腸管の機能異常。ストレスの関与が大きい
  • 虚血性心疾患とタイプA行動パターン ― 時間切迫感、競争心、敵意などを特徴とするタイプA行動は心筋梗塞などの危険因子とされた(フリードマンとローゼンマン)
  • アレキシサイミア(失感情症) ― シフネオスが提唱。自分の感情を認知し言葉にすることが難しく、空想が乏しく、身体症状を細かく訴えるが感情は語らない。心身症患者の特徴として研究された

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 用語説明 ― 「操作的診断基準」「多軸診断(とその廃止)」「病態水準」
  2. 歴史と変更 ― 神経症の分割。なぜ変わったか(偏見の回避、記述的分類)まで書く
  3. 心理職の関わり ― 診断は医師の業務。心理職はアセスメント・心理教育・心理療法・家族支援・多職種連携で関わる。公認心理師法(第2条)の業務に即して書く

2限目①の課題:頻出語の200字と、論述800字

動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(15語)を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義 → 外せないキーワード → 人物・分類名と、対応する内容 → 似た語との違い」の順で書くと、200字になります。

課題2 論述(800字)
① 操作的診断基準の長所と短所を述べ、心理職がそれをどう用いるべきかを論じなさい(DSM と多軸診断の歴史に触れること)。

書いたら「できた!」を押す。頻出語の200字と、論述の模範解答は、学生証(無料登録)で読めます。

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看護のための精神医学[第2版]

中井久夫・山口直彦 著/医学書院(2004年)

精神科の病気を、分類や基準としてではなく、目の前の人とどう関わるかという視点から書いた本です。題名は「看護のための」ですが、心理職を目指す人にも長く読まれてきました。動画で診断の枠組みを押さえたあとに読むと、病名の向こうにいる人の姿が見えてきます。2004年の刊行なので、病名や診断基準は当時のものです。いまの病名は、この限目のテキストで確かめてください。

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この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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この記事を書いた人

Lab.FromUのアバター Lab.FromU FromU 心理支援ラボ

FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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