院試塾 13限目②。領域・制度と見立てです。13限目の2本目で、臨床心理学編の最後の回です。この動画では、児童福祉法と児童相談所、高齢者虐待の5つの類型、合理的配慮、心神喪失と心神耗弱、医療観察法、保護観察、司法面接を、院試で問われる形に整理します。
動画② 領域と制度
この動画で覚える 10 語
語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。
動画② 領域・制度と見立て② 領域と制度(10語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。13限目は、臨床の領域・制度と見立てである。2本に分け、この回は2本目の、領域と制度である。臨床心理学編の、最後の回である。
1限目で見た、5つの領域の続きである。福祉と司法の法律と制度を、入試で問われる形で押さえる。
直近の入試では、定義の文を示して、語を答えさせる穴埋めが多く出ている。とくに司法は、5つの試験で出ていた。
要保護児童(児童福祉法)
まず、福祉の領域である。子どもの福祉の土台になる法律が、児童福祉法である。この法律で、児童とは、18歳未満の人を言う。
穴埋めで出ている語が、要保護児童である。保護者のいない子ども、または、保護者に育てさせるのが適当でないと認められる子どもを言う。虐待を受けている子どもも、ここに入る。
通告から措置まで(児童相談所・一時保護)
要保護児童を見つけたら、通告する。虐待を受けたと思われる子どもを見つけた人には、通告の義務があり、守秘義務より優先される。2限目の3本目と、11限目の1本目のおさらいである。
- 通告 = 思われる段階で、市町村・児童相談所などへ。守秘義務より優先される
- 調査・判定 = 児童相談所が、心理学・医学・社会学など、いくつもの面から行う
- 一時保護 = 子どもの安全をまず確保する。2か月を超えてはいけない。延長は、親が反対のとき家庭裁判所の承認が要る
- 措置 = 施設への入所や、里親への委託。児童養護施設、児童自立支援施設など
通告を受けて動くのが、児童相談所である。相談を受けるだけでなく、心理学や医学などの面から、調査と判定を行う。
一時保護の期間は、2か月を超えてはいけない、と定められている。延ばすことはできるが、親が反対しているときは、家庭裁判所の承認が要る。選択肢では、4か月という誤りが出ている。
そして、措置である。施設への入所や、里親への委託を決める。
取り違えやすい3つの施設(児童自立支援施設)
措置の先の施設から、取り違えやすい3つを並べる。
- 児童養護施設 = 保護者のいない子どもや、虐待されている子どもなどを、養護する施設
- 児童自立支援施設 = 不良行為をした、またはするおそれのある子どもなどを、入所させたり、通わせたりして、自立を支援する。以前の名前は、教護院。用語説明で出ている
- 児童心理治療施設 = 環境上の理由で、社会生活への適応が難しくなった子どもに、心理の治療と、生活の指導を行う。以前の名前は、情緒障害児短期治療施設
古い教科書は、旧い名前で書いていることがある。答案は、いまの名前で書く。
高齢者虐待の5類型
次は、高齢者虐待防止法である。高齢者とは、65歳以上の人を言う。家族などの養護者による虐待と、介護施設の職員による虐待の、両方が対象である。
虐待の類型は、5つである。
- 身体的虐待 = 外傷が生じるおそれのある暴行
- 介護・世話の放棄・放任 = 著しい減食や、長時間の放置
- 心理的虐待 = 著しい暴言や、拒絶的な対応
- 性的虐待 = わいせつな行為をする、させる
- 経済的虐待 = 財産を不当に処分し、利益を得る
穴埋めでは、4つを示して、5つ目を答えさせる形で出ている。その答えが、経済的虐待であった。本人の年金や預金を、勝手に使ってしまうことなどである。
児童虐待と高齢者虐待の違い
ここで、児童虐待と並べる。違いは3つである。
- 類型の数 = 児童虐待は4つで、経済的虐待は入らない。高齢者虐待は5つで、経済的虐待が入る
- 知らせる義務 = 児童虐待は、思われる段階で、誰にでも通告の義務がある。高齢者虐待は、家族などの養護者による虐待のとき、命や体に重大な危険があれば通報の義務で、それ以外のときは、通報に努める努力義務である。施設の職員が、自分の職場での虐待に気づいたときは、通報の義務である
- 届け先 = 児童虐待は、市町村・福祉事務所・児童相談所。高齢者虐待は、市町村
どちらも、守秘義務は、通告・通報の妨げにならない。
合理的配慮 定義の3点
次は、障害のある人への、合理的配慮である。直近では、4つの試験で出ている。
障害者権利条約の定義が、そのまま穴埋めの文になっている。押さえる点は、3つである。
- 必要かつ適当な、変更と調整であること
- 特定の場合に、必要とされるものであること
- 均衡を失した、または過度の負担を課さないものであること
そして、合理的配慮をしないことも、差別にあたる。
合理的配慮は、誰の義務か
日本では、障害者差別解消法が、合理的配慮を定めている。古い教科書には、行政機関は義務、民間の事業者は努力義務、と書かれている。
いまは、違う。民間の事業者にも、合理的配慮は、法的な義務である。答案では、行政も事業者も義務、と書く。
ただし、負担が過重でないときに限られる。この限界も、定義の一部として書く。
心神喪失と心神耗弱
ここから、司法の領域である。まず、責任能力である。
刑法では、罪に問うために、善悪を判断して、それに従って行動する力が要る。精神の障害で、この力が著しく弱い状態を、心神耗弱と言う。刑法の39条で、心神耗弱の人の行為は、刑を減軽する、とされている。
この力がない状態が、心神喪失である。心神喪失の人の行為は、罰しない、とされている。答案用紙に書くときは、耗弱は減軽、喪失は罰しない、の対で書く。
- 責任能力がある = 通常どおり罰する
- 心神耗弱 = 判断し、それに従って行動する力が、著しく弱い。刑を減軽する
- 心神喪失 = その力がない。罰しない
医療観察法の流れ
心神喪失などが認められて、刑罰を受けなかった人に、医療を受けてもらい、社会に戻る支援をする法律が、医療観察法である。正式な名前は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律である。
- 対象 = 殺人、放火、強盗、不同意性交等など、他の人を害する重大な行為。心神喪失・心神耗弱と認められた人。自分を傷つける行為は、対象ではない
- 審判 = 地方裁判所で行う。家庭裁判所ではない。裁判官と、精神科医である精神保健審判員が、合議で決める
- 医療 = 指定入院医療機関への入院、または通院で行う
- 地域で = 社会復帰調整官が、生活を支える。保護観察所に置かれる専門職だが、保護観察官ではない
選択肢では、社会復帰調整官と保護観察官が、入れ替えられていた。
保護観察
次は、保護観察である。穴埋めで出ている。
犯罪をした人や、非行のある少年を、刑務所や少年院などの、施設の中で処遇するのが、施設内処遇である。
これに対して、社会の中で、ふだんの生活を送りながら、立ち直りを支えるのが、保護観察である。社会内処遇と呼ばれ、更生保護の中心になる仕組みである。
担うのは、国の職員である保護観察官と、地域のボランティアである保護司である。指導監督と、補導援護の、2つを柱に行う。
司法面接
虐待や事件の被害を受けた子どもから、何があったかを聞くとき、どうすればよいか。
答えは、司法面接である。子どもの負担を、できるだけ小さくし、誘導せずに、正確な話を聞き取る面接の方法である。穴埋めで出ている。
何度も聞かれると、子どもは傷つき、話も変わっていく。そのため、早い時期に、原則として1回、録画しながら行う。
はじめに、自由に話してもらい、細かい質問はそのあとである。心のケアの面接とは、分けて行う。
教育と、性の多様性
最後に、教育と、性の多様性の語を、札で押さえる。名前と一言だけ、確かめておく。
- 教育機会確保法 = 不登校の子どもの、学校の外での学びも確保する
- 教育支援センター = 以前の名前は、適応指導教室
- いじめの重大事態 = 命・心身・財産への重大な被害、長い欠席
- SOGIE = 性的指向・性自認・性表現の頭文字。すべての人が持つ
- 性別違和 = DSM-5-TR の診断の名前。性同一性障害は、古い言い方
- 不同意性交等罪 = 被害者の性別を問わない
答案でやりがちな間違い
- 医療観察法の審判を、家庭裁判所と書いてしまう。地方裁判所。地域で支えるのは、社会復帰調整官
- 高齢者虐待の類型から、経済的虐待を落としてしまう。高齢者は5つ、児童虐待は4つ
- 民間の事業者の合理的配慮を、努力義務と書いてしまう。いまは、行政も事業者も、法的な義務
13限目②のまとめ
まとめる。児童福祉法の児童は、18歳未満である。要保護児童は通告され、児童相談所が、調査と判定、一時保護、措置を行う。一時保護は、2か月を超えない。
高齢者虐待は5つの類型で、5つ目は経済的虐待である。合理的配慮は、過度の負担がない範囲で、行政も事業者も、法的な義務である。
司法では、心神耗弱は減軽、心神喪失は罰しない。医療観察法の審判は地方裁判所。保護観察は社会内処遇。子どもの被害には、司法面接である。
臨床心理学編を終えて
これで、臨床心理学の内容を扱う、院試塾の講義は、ひと通り終わりである。次からは、入試にも出る、基礎心理学編に移る。
補足や訂正があるときは、そのための動画を作り、動画の概要欄で案内する。
独学とは、ひとりきりで勉強することではない。何がどれだけ出るかの地図を持って、自分の順番で進めることである。
この講義は、聞き流すだけでもかまわない。何度でも、くり返し見てほしい。まず、なじませることが大事である。なじんだ語から、答案に書ける知識になっていく。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 児童福祉法と児童相談所 ― 児童は18歳未満。要保護児童(保護者のない児童、または保護者に育てさせるのが適当でない児童。虐待を受けた子どもも入る)は通告され、児童相談所が調査と判定、一時保護、措置を行う。一時保護は2か月を超えない(延長は親が反対のとき家庭裁判所の承認。4か月は誤り)。児童自立支援施設は旧教護院、児童心理治療施設は旧情緒障害児短期治療施設。答案はいまの名前で
- 高齢者虐待の5類型と、児童虐待との違い ― 高齢者は65歳以上。類型は身体的・介護世話の放棄放任・心理的・性的・経済的の5つ(児童虐待は4つで経済的は入らない)。通報は、養護者による虐待で重大な危険があれば義務、それ以外は努力義務。施設職員の通報は義務。届け先は市町村。守秘義務は妨げにならない
- 合理的配慮 ― 障害者権利条約の定義の3点(必要かつ適当な変更と調整/特定の場合に必要/均衡を失した、または過度の負担を課さない)。しないことも差別にあたる。障害者差別解消法で、いまは行政機関にも民間の事業者にも法的義務。ただし負担が過重でないときに限る
- 司法の4語 ― 刑法39条で、心神耗弱は刑を減軽、心神喪失は罰しない。医療観察法は他害行為が対象で、審判は地方裁判所(裁判官と精神保健審判員の合議)、医療は指定入院医療機関、社会復帰調整官は保護観察所に置かれ保護観察官ではない。保護観察は社会内処遇で、保護観察官と保護司が指導監督と補導援護を行う。子どもの被害には司法面接(早い時期に原則1回、録画、誘導しない、心のケアの面接とは分ける)
- 教育と性の多様性の札 ― 教育機会確保法、教育支援センター(旧適応指導教室)、いじめの重大事態。SOGIE(性的指向・性自認・性表現)、性別違和(DSM-5-TR。性同一性障害は古い言い方)、不同意性交等罪(被害者の性別を問わない)
13限目②の課題:頻出語の200字と、論述600字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、1語ずつ200字で説明してください。「定義・何のため・似た語との違い」を入れると、200字になります。
課題2 論述(600字)
認知症の母親を、自宅で息子が1人で介護している。高齢者虐待の5つの類型を挙げ、虐待が起きやすくなる要因を、高齢者・介護する人・2人の関係・まわりの環境に分けて述べ、心理職がとる対応を述べなさい。
段落は3つで書けます。1つめは、高齢者虐待防止法が定める5つの類型。2つめは、虐待が起きやすくなる要因を、4つの側面に分けたもの。3つめは、この場面で心理職がとる対応です。
公認心理師エッセンシャルズ 第2版
子安増生・丹野義彦 編/有斐閣(第2版)
この回で扱った福祉と司法の制度を、公認心理師の学びの全体の中で、入門の水準で読み直せる本です。児童虐待の通告と一時保護、里親への委託や施設への入所の措置、高齢者虐待防止法の5つの類型、医療観察法の対象者と地方裁判所の審判と社会復帰調整官、保護観察と保護観察官の項目が、1冊の中でそろっています。この回の課題2を書く前に、高齢者虐待防止法の通報の義務と努力義務を読み直したいときに向いています。なお、合理的配慮の提供について、この本は、民間の事業者を努力義務と書いています。この回で話したとおり、いまは民間の事業者にも法的な義務です。そこは、この動画とテキストで確かめてください。また、公認心理師の学びの全体を薄く広く見渡す本なので、1つの語を長い文章で論じる使い方には向きません。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。
※ このリンクは広告(アフィリエイト)です。ここから購入されると、代金の一部が FromU の運営(この塾を無料で続ける費用)に充てられます。
できた!を押して、学生証へ
できたら、押してください。この端末に記録され、時間割に反映されます。
学生証を作る(無料登録)
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
▶ 院試塾 時間割▶ 学生証(無料登録) ※ 過去問の問題文そのものは各大学の著作物のため、扱っていません。


コメント