子どもと家族の心理療法① 家族療法とブリーフ・ナラティブ|院試塾 12限目①

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院試塾 12限目①。子どもと家族の心理療法です。12限目の1本目です。この動画では、家族療法の見方、二重拘束、家族療法の3つのモデル、ジョイニングとリフレーミング、解決志向ブリーフセラピー、ナラティブ・セラピーを、院試で問われる形に整理します。

目次

動画① 家族療法とブリーフ・ナラティブ

12限目①の頻出語マップ

この動画で覚える 10 語

語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、中身まで問われた語。

動画① 子どもと家族の心理療法① 家族療法とブリーフ・ナラティブ(10語)

テキスト

この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。12限目は、子どもと家族の心理療法である。2本に分け、この回は1本目の、家族療法と、ブリーフセラピー、ナラティブ・セラピーである。2本目は、遊戯療法と箱庭療法である。

直近の入試では、用語説明、家族療法の特徴と主なモデルを述べる論述、そして、人名と療法の組を選ぶ問題が出ている。大学によっては、1つの試験で、この分野から何問もまとめて出る。

家族療法と、IP(患者とみなされた人)

家族療法は、家族を、1つのまとまりをもつシステムとみなす。システムとは、部分どうしが影響し合って動く、全体のことである。

だから、問題を、1人の心の中だけに探さない。家族の関係と、やりとりのパターンを見て、そこに働きかける。

家族の中で、患者、あるいは問題を抱えているとみなされた人を、IPと呼ぶ。患者とみなされた人、という意味である。家族療法では、問題を、IPひとりのせいにはしない。家族全体のやりとりの中で考える。

直線的因果律と円環的因果律

家族療法の考え方の中心が、円環的因果律である。直線的因果律と比べると、分かりやすくなる。

  • 直線的因果律 = 原因から結果へ、一方向に考える。たとえば、母親が口うるさいから、子どもが黙り込む。これでは、母親が悪者になる
  • 円環的因果律 = 原因と結果が、輪のように回っていると考える。循環的因果律とも言う

母親が言うと、子どもが黙る。子どもが黙ると、母親は、もっと言う。どちらも、原因であり、結果でもある。悪者を作らずに、この悪循環そのものに働きかける。

二重拘束(ダブルバインド)

家族療法の土台の1つになったのが、Bateson と、その研究グループの、二重拘束である。ダブルバインドとも言う。統合失調症の理論を考える研究の中から、出てきた考えである。

二重拘束とは、2つの水準のメッセージが、食い違っている状態である。言葉で伝えた要求が、態度や表情という別の水準で、ひそかに打ち消される。たとえば、親が、怒らないから正直に言いなさい、と言う。ところが、正直に言うと、不機嫌になる。

子どもは、言葉に従っても、態度に従っても、責められる。人名と用語の組では、Bateson は、二重拘束である。

家族療法の3つのモデル

家族療法の主な3つのモデルを挙げる論述が出ている。本によって数え方が違うが、多世代、構造、コミュニケーションの3つで書けば通る。戦略派は、コミュニケーションに含めて書く。

  • 多世代のモデル = Bowen。家族から、自分を、情緒的に分けられているか、つまり、自己分化をみる。三角関係や、親から子へ、世代をこえて伝わる情緒にも注目する
  • 構造のモデル = Minuchin。セラピストが、まず家族に溶け込む。そして、両親や、きょうだいなど、家族の中の小さなまとまりの境界に働きかけて、家族の構造を組みかえる
  • コミュニケーションのモデル = Bateson の流れをくむ、MRI のグループ。問題を続けさせている、やりとりの悪循環を変える。Haley の戦略派も、ここに含める

ジョイニングとリフレーミング

家族療法の技法で、とくに押さえておきたいのが、2つである。

  • ジョイニング = セラピストが、家族に溶け込むこと。構造のモデルで、最初に行う
  • リフレーミング = 出来事や症状の事実は変えずに、その意味づけを変えること

たとえば、母親が口うるさい、を、母親は、それだけ子どもを心配している、と言いかえる。責められていた人が、責められなくなると、家族のやりとりが動き出す。

解決志向ブリーフセラピー

家族療法の流れからは、短い期間で効果をめざす、ブリーフセラピーも生まれた。短期療法とも言う。

その代表が、de Shazer と Berg の、解決志向ブリーフセラピーである。ソリューション・フォーカスト・アプローチとも呼ばれる。入試では、この名前でも出る。

問題の原因を、深く探るのではない。問題が解決した姿と、そこへの手がかりに、目を向ける。

代表的な技法に、ミラクル・クエスチョン、例外探し、スケーリングがある。

ミラクル・クエスチョン

解決志向ブリーフセラピーで、問題が解決したあとの姿を、具体的に思い描いてもらう質問は、何か。

答えは、ミラクル・クエスチョンである。技法の名前を入れる穴埋めで、出ている。

たとえば、こう尋ねる。眠っている間に奇跡が起きて、問題が解決したとする。朝、目が覚めたとき、何が違っていたら、解決したと分かるか。

ほかに、問題が起きていないときを探す、例外探し。いまの状態を、数で表してもらう、スケーリングがある。

ナラティブ・セラピーと、問題の外在化

もう1つ、家族療法を起こりとして生まれたのが、ナラティブ・セラピーである。White と Epston が知られている。ナラティブとは、物語という意味である。

中心の技法が、問題の外在化である。たとえば、ぼくはすぐ怒る子だ、と思っている子どもがいる。この子の中では、自分と問題が、一体になっている。

そこで、イライラは、どんなときにやって来るのかな、と尋ねる。問題を、その人から切り離して、外にあるものとして扱う。

そして、問題に負けなかった経験を集めて、これまでとは別の、新しい物語を作っていく。

人名と療法の組

選択肢で、組の正しさが問われる。

  • Bateson = 二重拘束
  • Bowen = 多世代の家族療法
  • Minuchin = 構造的家族療法
  • de Shazer と Berg = 解決志向ブリーフセラピー
  • White と Epston = ナラティブ・セラピー

8限目のおさらいである。Gendlin は、フォーカシングである。ブリーフセラピーと組み合わせた選択肢は、誤りである。

答案でやりがちな間違い

  • IP を、問題の原因と書いてしまう。円環的因果律で、家族のやりとりの中で考える
  • 3つのモデルの、人名を入れ替えてしまう。多世代は Bowen、構造は Minuchin である
  • Bateson を、家族療法を1人で始めた人と書いてしまう。家族療法は、何人もの人が、同じころに始めた

12限目①のまとめ

まとめる。家族療法は、家族を1つのシステムとして見る。IPひとりのせいにせず、円環的因果律で考える。Bateson は、二重拘束である。

主な3つのモデルは、多世代、構造、コミュニケーションである。技法は、ジョイニングと、リフレーミングである。

解決志向ブリーフセラピーは、de Shazer と Berg で、ミラクル・クエスチョン。ナラティブ・セラピーは、White と Epston で、問題の外在化である。

次の回は、12限目の2本目、遊戯療法と箱庭療法である。

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 家族療法の見方 ― 家族を1つのシステムとみなし、関係とやりとりのパターンに働きかける。問題を抱えているとみなされた人はIP(患者とみなされた人)で、IPひとりのせいにしない。円環的因果律は、原因と結果が輪のように回っていると考え、悪者を作らずに悪循環に働きかける(直線的因果律は、原因から結果への一方向)。Batesonと研究グループの二重拘束は、2つの水準のメッセージが食い違う状態
  2. 3つのモデルと2つの技法 ― 多世代(Bowen・自己分化)、構造(Minuchin・家族に溶け込み、境界に働きかけて構造を組みかえる)、コミュニケーション(Batesonの流れのMRI。Haleyの戦略派を含む。やりとりの悪循環を変える)。ジョイニングは家族に溶け込むこと、リフレーミングは事実は変えず意味づけを変えること。人名の入れ替えと、Batesonを家族療法の創始者と書くことに注意
  3. 解決志向ブリーフセラピーとナラティブ・セラピー ― 解決志向(de ShazerとBerg)は、原因を深く探らず、解決した姿と手がかりに目を向ける。技法はミラクル・クエスチョン・例外探し・スケーリング。ナラティブ・セラピー(WhiteとEpston)は、問題の外在化で人と問題を切り離し、問題に負けなかった経験から新しい物語を作る。Gendlinはフォーカシングで、ブリーフセラピーとは組まない

12限目①の課題:頻出語の200字と、論述600字

動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、1語ずつ200字で説明してください。「定義・何のため・似た語との違い」を入れると、200字になります。

課題2 論述(600字)
中学生の子どもが、学校に行けなくなり、母親だけが相談に来た。母親は、「私の育て方が悪かった」と自分を責めている。円環的因果律という語を使って、家族療法の考え方を説明しなさい。そのうえで、家族療法の主な3つのモデルを挙げて、この家族への関わり方を、それぞれ述べなさい。

段落は2つで書けます。1つめは、円環的因果律の語を使った、家族療法の考え方。2つめは、3つのモデルを挙げて、この家族への関わり方をそれぞれ述べる部分です。

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東豊 著/日本評論社(1993年)

家族療法(システムズアプローチ)を専門とする著者が、理論編と実践編の2部に分けて書いた入門書です。この回の、家族をシステムとして見る考え方を、別の著者の語りで読み直したいときに向いています。なお、この回の3つのモデルの比べ方や、解決志向ブリーフセラピー、ナラティブ・セラピーは、この動画とテキストで補ってください。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。

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この記事を書いた人

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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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