人間性心理学① ロジャーズの来談者中心療法|院試塾 8限目①

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院試塾 8限目①。人間性心理学です。ロジャーズの来談者中心療法を、院試で問われる形に整理します。8限目の1本目です。この動画では、人間性心理学の位置づけ、来談者中心療法の名前の移り変わり、自己概念と経験、実現傾向、カウンセラーの3条件、傾聴の技法、エンカウンター・グループ、他の療法との比較を扱います。

目次

動画① ロジャーズの来談者中心療法

8限目①の頻出語マップ

この動画で覚える 10 語

語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。

動画① 人間性心理学① ロジャーズの来談者中心療法(10語)

テキスト

この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。8限目は、人間性心理学である。2本に分け、この回は1本目の、ロジャーズの来談者中心療法である。7限目までは、精神分析と、行動療法を見てきた。人間性心理学は、そのどちらとも違う立場から、人間をとらえる。院試では、来談者中心療法が、章の中心である。とくに、カウンセラーの3条件は、近年の入試でも、複数の大学で出ている。他の療法と比べて論じる形も、定番である。

人間性心理学の位置づけ(3つの勢力)

人間性心理学は、20世紀の中ごろ、アメリカで勢力を伸ばした。精神分析と、行動主義に続く、第三の勢力と呼ばれる。マズローの呼び方である。人間学的心理学、ヒューマニスティック心理学とも呼ばれる。

精神分析は、人間を、無意識の欲動に動かされる存在と見た。行動主義は、環境の刺激によって学習する存在と見た。

人間性心理学は、人間を、自由な意志をもつ、主体的な存在と見る。人間には、固有の成長する力がある。そして、自分の可能性を、自分の意思で発揮して生きる。これを、自己実現と呼ぶ。

  • 精神分析 = 無意識の欲動に動かされる存在。重点は、無意識・過去の体験
  • 行動主義 = 環境の刺激によって学習する存在。重点は、観察できる行動
  • 人間性心理学 = 主体的に成長に向かう存在。重点は、自己実現・いま、ここの体験

この3つの勢力を並べて比べる論述は、くり返し出ている。人間のとらえ方と、重点の違いで書き分ける。

来談者中心療法の名前の移り変わり

人間性心理学の中心に立つのが、ロジャーズである。ロジャーズの考えは、名前が移り変わっていく。

  1. はじめは、非指示的療法と呼ばれた。助言や、解釈を与えない、やり方という意味である
  2. ところが、非指示という、技法だけが広まった。そこで、ロジャーズの人間観を表す名前として、来談者中心療法と呼ぶようになる。クライエント中心療法とも言う
  3. のちに、ロジャーズは、個人療法よりも、グループや、社会の問題への取り組みに、力を注ぐ。そして、自分のアプローチ全体を、パーソンセンタード・アプローチと呼んだ

この順番は、穴埋めで問われる形がある。非指示的、来談者中心、パーソンセンタードの順で押さえる。表記は、ロジャーズとロジャース、2通りある。答案では、どちらでも通じる。

来談者中心療法の目標は、十分に機能する人間に近づくことである。

自己概念と経験(自己理論)

次に、ロジャーズの、自己理論である。パーソナリティを、どう説明するかの話である。

大事な語が2つある。自己概念と、経験である。自己概念は、自分は、こういう人間だ、という自己像である。経験は、体で感じている、感覚や感情である。

自己概念と経験が、重なっていれば、一致の状態である。心は、安定する。

自己不一致

重ならない経験は、歪められたり、なかったことにされたりする。歪曲と、否認である。この、自己概念と経験のズレを、自己不一致と呼ぶ。

たとえば、人に頼ってはいけない、と思っている人がいる。疲れて、助けてほしい気持ちがあっても、その気持ちを、感じないことにしてしまう。これが、不一致の例である。

自己不一致が強くなると、不適応が起こる。

実現傾向

もう1つ、ロジャーズの理論を支える語がある。実現傾向である。人間の有機体に備わった、成長し、発達しようとする傾向をいう。

人間には、成長し、発達しようとする力が、もともと備わっている。ロジャーズは、そう考えた。ロジャーズの理論では、これが、人間を動かす、ただ一つの力とされる。実現傾向は、指定語つきの論述でも出ている。

注意が1つある。マズローの自己実現の欲求とは、別の語である。ロジャーズは、実現傾向。マズローは、自己実現の欲求である。言い分ける。

カウンセラーの3条件

ここが、この回の山場である。ロジャーズは、クライエントに変化が起こるための、必要にして十分な条件を、6つ挙げた。心理的な接触。クライエントの不一致。カウンセラーの一致。無条件の肯定的配慮。共感的理解。そして、クライエントが、それを感じ取っていること。このうち、カウンセラーの側の3つを、カウンセラーの3条件と呼ぶ。

自己一致(純粋性)

1つめは、自己一致である。純粋性、真実性とも言う。カウンセラーが、自分の感情と、話す言葉と、態度とを、一致させていることである。防衛的に取りつくろったり、専門家の権威に隠れたりしない。

無条件の肯定的配慮

2つめは、無条件の肯定的配慮である。積極的関心、受容とも言う。クライエントを、成長する力をもった人間として尊重し、条件をつけずに、あるがままを受け入れる。たとえ、自分と価値観が違っていても、である。

共感的理解

3つめは、共感的理解である。感情移入的理解とも言う。クライエントの内側の世界を、あたかも自分のものであるかのように感じ取り、それを、正確に伝える。

この3つは、とくに出題の多い語である。名前と、日本語のゆれを、組にして押さえる。理由も、一言ずつ言えるようにする。クライエントが、脅威にさらされず、ありのままの自分を見つめられるようになるため、である。

共感と、同情・同一視

3条件のうち、共感的理解は、取り違えが多い語である。

共感的理解は、あたかも、という性質を保つ。あたかも、自分のことのように感じ取りながら、相手の気持ちとして、とどめる。そして、感じ取ったことを、相手に、正確に伝え返す。

この、あたかもという性質を失うと、2つに陥る。

  • 同一視。自分の体験と、相手の体験が、同じだと思い込んでしまう
  • 同情。気の毒に思い、相手の気持ちに、巻き込まれてしまう

共感と同情の、共通点と違いを問う形で、出ている。あたかも、という性質が、共感の境目である。

傾聴の技法

3条件を、聞き方に表したものが、傾聴である。傾聴の技法として、応答の型が整理されている。

  • 簡単な受容。うなずいたり、あいづちを打ったりする。「ええ」「そうですか」
  • 感情の反映。反射とも呼ばれる。相手の感情を、言葉にして返す。「それは、悔しかったのですね」
  • 繰り返し。相手の言葉を、そのまま返す。「眠れない日が続いているのですね」
  • 感情の明確化。ぼんやりと語られた感情を、はっきりさせる。「いやな感じ、というのは、腹立たしさに近いですか」

例は、この塾で作ったものである。傾聴の技法は、簡単に説明させる形で、近年の入試に出ている。名前と、中身を、1つずつ言えるようにする。

エンカウンター・グループ

のちにロジャーズは、個人療法から、グループに、力を移した。エンカウンター・グループである。

少人数で集まり、率直な交流を通して、お互いの成長をめざす、集中的なグループ体験である。ベーシック・エンカウンター・グループとも呼ぶ。ロジャーズは、これを、おそらく最も将来性のある発明であろうと評した。

用語説明の形で出ることがある。ロジャーズの理論と実践にもとづくグループ体験、と書けるようにしておく。

他の療法との比較

来談者中心療法を、精神分析や、行動療法と並べて論じさせる形は、旧過去問で、くり返し出ている定番である。比べる枠は、4つである。人間のとらえ方、問題のとらえ方、カウンセラーの役割、目標である。

  • 来談者中心療法 = 人間は、成長に向かう力をもつ。問題は、自己概念と経験の不一致。カウンセラーは、3条件で関係を築き、指示はしない。目標は、十分に機能する人間
  • 精神分析 = 人間は、無意識の葛藤に動かされる。問題は、無意識の葛藤と抑圧。カウンセラーは、解釈を通して、洞察を促す。目標は、洞察・人格の再構成
  • 行動療法 = 人間は、学習によって形づくられる。問題は、誤った学習と、不適応な行動。カウンセラーは、学習の原理にもとづく技法を使う。目標は、行動の変容

この4つの枠で書けば、比較の論述が、組み立てられる。

答案でやりがちな間違い

  • 無条件の肯定的配慮を、何でも同意することと、書いてしまう。同意ではない。あるがままを、条件をつけずに、尊重することである
  • 共感を、同情や、同一視と同じに書いてしまう。あたかも、という性質を保つのが、共感である
  • ロジャーズの実現傾向を、マズローの、自己実現の欲求と、混ぜてしまう。ロジャーズは、実現傾向。マズローは、自己実現の欲求である

8限目①のまとめ

まとめる。人間性心理学は、精神分析と、行動主義に続く、第三の勢力である。人間を、主体的に成長に向かう存在と見る。ロジャーズの来談者中心療法は、自己概念と経験で、パーソナリティを説明する。不一致が不適応を生み、実現傾向が、成長の力になる。そして、カウンセラーの3条件である。自己一致、無条件の肯定的配慮、共感的理解である。

次の回は、ロジャーズ以降の人間性心理学である。マズロー、フォーカシング、ゲシュタルト療法、実存分析、交流分析を、人名と療法の組で整理する。

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 3つの勢力と、名前の移り変わり ― 人間性心理学は、精神分析と行動主義に続く第三の勢力。人間を主体的に成長に向かう存在と見る。ロジャーズの考えは、非指示的療法 → 来談者中心療法(クライエント中心療法)→ パーソンセンタード・アプローチの順
  2. 自己理論 ― 自己概念と経験が重ならないと、経験は歪曲・否認され、自己不一致が強くなると不適応が起こる。成長の力は実現傾向(マズローの自己実現の欲求とは別の語)
  3. カウンセラーの3条件と比較 ― 自己一致(純粋性)・無条件の肯定的配慮(受容)・共感的理解(感情移入的理解)。共感は「あたかも」を保ち、同情・同一視と違う。他の療法とは、人間のとらえ方・問題のとらえ方・カウンセラーの役割・目標の4つの枠で比べる

8限目①の課題:頻出語の200字と、論述800字

動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義・しくみ・日常の例・似た語との違い」を入れると、200字になります。

課題2 論述(800字)
ロジャーズの来談者中心療法について、自己概念と経験の不一致、カウンセラーの3条件にふれて、精神分析または行動療法との違いも含めて論じなさい。日常の場面の例を1つ用いること。

段落は3つで書けます。1つめは、自己概念と経験の不一致。2つめは、カウンセラーの3条件。3つめは、精神分析または行動療法との違いの順です。

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『新・心理学の基礎知識』の表紙

新・心理学の基礎知識

中島義明・繁桝算男・箱田裕司 編/有斐閣ブックス(2005年)

この回のロジャーズを、院試の論述の形で引ける1冊です。心理学の全領域を、1つの問いと、その答えになる解説の小項目で整理した基礎知識集で、臨床の章に、ロジャーズのクライエント中心療法と、それ以降の人間性心理学の発展を述べる項目があります。そこでは、非指示療法からクライエント中心療法、パーソンセンタードへの移り変わり、実現傾向、治療的人格変化の6つの必要十分条件が、短くまとまっています。パーソナリティの章には、ロジャーズに代表される人間学的理論の位置づけも出てきます。院試の範囲をほぼ覆う本なので、ほかの限目の復習にも使えます。なお、1項目の解説は短く、傾聴の技法の4つの型は、この本では確認できていません。その部分は、この動画とテキストで補ってください。

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この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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この記事を書いた人

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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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