院試塾 6限目②。行動療法・認知行動療法の、2本目です。認知行動療法の流れと技法を、似た語を対にして、日常の例つきで整理します。6限目の2本目です。この動画では、行動療法から認知行動療法への流れ、認知療法(ベック)、認知の歪みと認知再構成法、論理療法(エリス)、3つの療法の比べ方、認知行動療法の進め方、行動活性化、マインドフルネス、社会的スキル訓練を扱います。
動画② 認知行動療法
この動画で覚える 11 語
語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、直近の入試でも出題が続いている語。
動画② 行動療法・認知行動療法② 認知行動療法(11語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。6限目の2本目は、認知行動療法である。院試では用語説明の定番で、近年は、事例を読んで使う技法を選ばせたり、アジェンダやホームワークの意味を問う形が出ている。認知療法と行動療法の違いを、対にして説明させる形もある。定義と例の2つがそろえば、200字が書ける。
認知行動療法への流れ
認知行動療法は、1つの理論から生まれたのではない。行動療法と、認知療法の、2つの流れが合わさったものである。
まず、行動療法への批判があった。動物実験の知見を人間に当てはめている。クライエントの内側の動きを無視している。といったものである。
そこで、バンデューラの社会学習理論が、きっかけになる。刺激と反応のあいだに、認知、つまり考えや受け取り方が入る。この見方が広まった。
こうして、行動療法の技法に、認知の働きを取り入れた方法が育った。それが認知行動療法である。現在は、認知行動療法と呼ぶことが多くなっている。
認知療法(ベック)
認知療法は、ベックが作った。考え方の中心は、気持ちや行動は、出来事そのものでなく、その受け取り方で決まる、というものである。同じ出来事でも、受け取り方が違えば、気持ちが変わる。たとえば、友だちからの返信が遅いとき。嫌われた、と受け取る人は落ち込む。忙しいのだろう、と受け取る人は、落ち込まない。
ねらいとなるのは、その場で、ぱっと浮かぶ考えである。自動思考と呼ぶ。
その背景には、もっと深い、自分や世の中についての思い込みがある。スキーマと呼ぶ。
ベックは、うつ病の人に、自分と、いまの体験と、将来を、否定的に見る受け取り方が目立つ、とした。
認知の歪みと認知再構成法
受け取り方が偏ることを、認知の歪みと呼ぶ。例は次のとおりである。
- 全か無かで考える
- 小さな失敗を、もう終わりだと大きく考える
- べき、で自分を縛る
- 一度のことを、いつもそうだと決めつける
認知の歪みの種類は、本によって、数や名前が少し違う。名前の数にこだわらず、具体例を添えて説明する。
歪みを直す方法が、認知再構成法である。手順は3つある。
- 状況と、そのときの気分と、浮かんだ考えを、書き出す
- その考えの根拠と、反対の事実を探す
- もっと妥当な考えを作り、気分がどう変わったかを確かめる
たとえば、発表で言い間違えた。浮かんだ考えは、全部台なしだ。これを、言い間違えたが、伝えたいことは伝わった、に書き換える。
前向きに考えましょう、と励ますのではない。事実に合う考えに、書き換えるのである。
論理療法(エリス)
論理療法は、エリスが作った。論理情動療法とも呼ばれる。中心は、ABC理論である。
- A 出来事
- B その人の信念
- C 結果
結果を決めるのは、出来事ではなく、信念だ、と考える。たとえば、試験に落ちた。これがAである。自分は価値のない人間だ、と信じる。これがBである。すると、強く落ち込む。これがCである。
ここで、1本目の、応用行動分析のABCと、混ぜない。あちらは、先行刺激、行動、後続刺激だった。こちらは、出来事、信念、結果である。
エリスは、非理性的な信念を、論駁して、理性的な信念に変えることをめざした。論駁がDで、その効果がEである。
3つの療法の比べ方
3つの療法を、並べて比べる。
- 行動療法が変えるのは、行動である。行動は学習されたものと考え、条件づけの原理を使う。代表の技法は、系統的脱感作法や強化
- 認知療法が変えるのは、受け取り方である。自動思考や認知の歪みを見つけ、認知再構成法で書き換える
- 論理療法が変えるのは、信念である。非理性的な信念を、論駁する
違いは、何に働きかけるか、である。そして、認知行動療法は、これらを組み合わせる。行動の技法と、認知の技法の、両方を使う。
認知療法と行動療法の違いを問われたら、この、何に働きかけるか、を軸に書く。
認知行動療法の進め方
認知行動療法の進め方には、特徴が3つある。
- 協働。治療者とクライエントが、パートナーとして、一緒に考えを確かめる。ベックは、治療者が質問を重ねて、本人が自分で気づくように導くことを、大切にした
- 構造化。毎回、最初に、アジェンダを決める。アジェンダとは、そのセッションで扱う議題である。クライエントと共有して、同意を得てから始める
- ホームワーク。面接で体験した技法を、宿題として、日常生活で試す
ホームワークの意義は、面接の外でも、自分で使えるようになることである。自分で自分を助ける力、セルフコントロールを高める。
院試では、アジェンダやホームワークの意義を問う形も出ている。
行動活性化
うつ状態の人は、活動が減る。すると、楽しいことや、達成感を得る機会も減る。そして、ますます動けなくなる。この悪循環に、行動の面から働きかけるのが、行動活性化である。活動を記録して、予定を立て、できることから、段階的に増やしていく。
たとえば、授業に出なくなり、部屋にこもりがちな学生の場合である。まず、行動活性化で、外に出る活動を少しずつ増やす。動けるようになると、考えが見えてくる。どうせ自分はだめだ、という考えである。ここで、認知再構成法を使う。
事例を読んだら、いまどの段階の問題かを見て、技法を選ぶ。
マインドフルネス
最近の認知行動療法には、マインドフルネスも入っている。
マインドフルネス(mindfulness)とは、いまここでの体験に、良い悪いの評価を入れずに、気づいていることである。
考えを、正しいか間違いかと検討して、書き換えるのが、認知再構成法だった。マインドフルネスは、考えを書き換えない。考えを、ただ眺める。考えは、浮かんでは消える心の動きであって、現実そのものではない、と気づく。この気づきを、脱中心化と呼ぶ。
ここで注意がある。脱中心化は、ピアジェの発達の用語にもある。そちらは、自分の視点から離れて、物事を多面的にとらえられるようになることである。意味が違う。
マインドフルネスのほか、アクセプタンス&コミットメント・セラピーや、弁証法的行動療法を、第三世代と呼ぶことがある。行動療法を第一世代、認知療法と認知行動療法を第二世代とする言い方である。
社会的スキル訓練
最後に、社会的スキル訓練を挙げておく。SSTとも呼ばれる。社会生活に必要な技能を、身につけるための支援である。ロールプレイなどを使って、練習する。
行動療法と、認知行動療法の、技法の1つである。決まったやり方があるわけではなく、支援をひとまとまりにしたものである。統合失調症の人の支援で広まり、発達障害や、うつ、不安の支援にも使われる。
答案でやりがちな間違い
- ベックとエリスを、取り違えてしまう。ベックは認知療法、エリスは論理療法である
- エリスのABCを、応用行動分析のABCと、混ぜてしまう。エリスは、出来事、信念、結果である
- 脱中心化を、ピアジェの意味で書いてしまう。認知行動療法の文脈では、考えは現実そのものではない、という気づきのことである
6限目②のまとめ
まとめる。認知行動療法は、行動療法と、認知療法の、2つの流れが合わさったものである。認知療法は、受け取り方を、論理療法は、信念を、変える。技法は、認知再構成法と、論駁である。進め方は、協働と、アジェンダと、ホームワークである。技法は、事例とセットで覚える。いまどの段階の問題かを見て、選ぶ。これで、行動療法・認知行動療法の2本が終わった。
出典について
図は自作。例はすべて日常の場面の自作である。図は、坂野雄二『認知行動療法』(日本評論社)、下山晴彦編『よくわかる臨床心理学』(ミネルヴァ書房)に着想を得ている。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 認知行動療法 ― 行動療法と認知療法の、2つの流れの合流。行動の技法と、認知の技法の、両方を使う
- 認知療法と論理療法 ― 認知療法(ベック)は受け取り方を、論理療法(エリス)は信念を変える。技法は認知再構成法と論駁。エリスのABCは、応用行動分析のABCと混ぜない
- 進め方と技法 ― 協働・アジェンダ(構造化)・ホームワーク。事例では、いまどの段階の問題かを見て、行動活性化や認知再構成法を選ぶ
6限目②の課題:頻出語の200字と、論述800字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(11語)を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義・しくみ・日常の例・似た語との違い」を入れると、200字になります。
課題2 論述(800字)
認知療法と行動療法の違いを、技法の例を挙げて説明し、両者が統合されて認知行動療法になった経緯を論じなさい。日常の場面の例を1つ用いること。
段落は3つで書けます。1つめは、行動療法。2つめは、認知療法。3つめは、2つの違いと、統合の経緯の順です。
できた!を押して、学生証へ
できたら、押してください。この端末に記録され、時間割に反映されます。
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大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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