発達② 発達を決めるものと調べ方|院試塾 基礎心理3限目②

院試塾 基礎心理3限目② 発達 発達を決めるものと調べ方
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院試塾 基礎心理3限目②。発達を決めるものと、発達の調べ方です。基礎心理3限目の2本目です。この動画では、遺伝と環境の4つの説(成熟優位説・環境優位説・輻輳説・相互作用説)、Gesell の階段登りの実験と双生児統制法、双生児法、刻印づけと臨界期、縦断的方法と横断的方法とコホート、生涯発達、青年期と老年期の語を、院試で問われる形に整理します。

目次

動画② 発達を決めるものと調べ方

基礎心理3限目②の頻出語マップ

この動画で覚える 10 語

語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。

動画② 発達を決めるものと調べ方(10語)

テキスト

この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。基礎心理3限目は、発達である。2本に分け、この回は2本目の、発達を決めるものと調べ方である。

直近の入試では、Gesell が双子の実験から唱えた説の名前を、穴埋めで答える問題が出ている。縦断的研究の説明を選ぶ問題や、研究の計画の中で、縦断か横断かを決める問題も出ている。

説の名前と、唱えた人、そして調べ方の名前を、組にして押さえる。

発達を決めるもの

最初は、発達を決めるものである。臨床編の3限目①で、性格は何で決まるか、として4つの説を扱った。ここでは、発達の側の名前を足す。

1つめは、成熟優位説である。発達は、生まれもった成熟の順に進み、成熟を待てば育つ、とする。唱えたのは、Gesellである。性格の話で出た生得説とは、名前を分けて覚える。

2つめは、環境優位説である。生まれたあとの経験と学習で、発達が決まる、とする。行動主義の立場である。

ワトソン(Watson)の肖像
ワトソン(Watson)

3つめは、輻輳説である。臨床編の3限目①でも扱った、Sternの説である。遺伝も環境も、どちらも関わる、とする。2つを足し合わせる考え方なので、静的だと批判された。

シュテルン(Stern)の肖像
シュテルン(Stern)

4つめは、相互作用説である。遺伝と環境が、互いに影響しあう、とする。いまの主流の考え方である。このほか、環境の条件がある程度そろうと、遺伝の素質が現れる、とする環境閾値説がある。Jensenの説である。

  • 成熟優位説 = 成熟を待てば育つ。Gesell
  • 環境優位説 = 経験と学習で決まる。行動主義の立場
  • 輻輳説 = 遺伝と環境の足し算。Stern
  • 相互作用説 = 互いに影響しあう。いまの主流

階段登りの実験

成熟優位説のもとになったのが、Gesell の階段登りの実験である。一卵性双生児の2人を、T と C と呼ぶ。

T には、生後46週から6週間、毎日、階段登りの訓練をした。

C には、53週から、2週間だけ訓練をした。訓練の期間は短いのに、C の2週間の訓練のほうが、効果が大きくなった。

79週の時点では、2人の差は見られなかった。

早すぎる訓練は役に立たず、成熟を待ってから訓練すると効く。Gesell は、こう考えた。双子の一方だけを訓練して、もう一方と比べるこのやり方を、双生児統制法と言う。訓練の方法には、のちに問題が指摘されている。

  • T = 46週から6週間、毎日訓練
  • C = 53週から2週間だけ訓練
  • 79週 = 2人の差はない
  • 双生児統制法 = 一方だけ訓練して比べる

双生児法

双子を使う調べ方は、もう1つある。双生児法である。

一卵性双生児と二卵性双生児で、ある特徴の似かたを比べる。一卵性のほうがよく似ていれば、遺伝の影響が大きい、と考える。

ただし、同じ家庭で育っても、2人の環境が同じとは限らない。Gesell の双生児統制法とは、名前の似た別のやり方である。一方だけを訓練するのが双生児統制法、似かたを比べるのが双生児法である。

  • 双生児統制法 = 一方だけ訓練して比べる(Gesell)
  • 双生児法 = 一卵性と二卵性の似かたを比べる。遺伝と環境の影響を調べる

刻印づけと臨界期

発達には、ある経験がとくに大きく効く時期がある、という考え方もある。3つの語を挙げる。

カモやアヒルなどのひなは、孵化した直後に出会った、動くものの後を追うようになる。これを、刻印づけと言う。刷り込み、インプリンティングとも呼ぶ。この名前を使ったのは、Lorenzである。

刻印づけは、孵化のあとの限られた時期にしか起こらない。このように、ある学習や経験が成り立つ、早い時期を、臨界期と言う。境目がはっきりせず、あとから取り戻せる余地もある時期は、敏感期と呼んで分ける。

Harlowは、子ザルに、2つの代理の母を用意した。針金でできていて、ミルクの出る母と、布でおおわれた母である。子ザルは、布の母を好んだ。親子の結びつき、愛着の理論は、臨床編の7限目①で扱った。

  • 刻印づけ(刷り込み・インプリンティング) = 孵化の直後に見た動くものを追う。Lorenz
  • 臨界期 = 学習や経験が成り立つ、早い時期。境目がゆるい時期は敏感期
  • 代理母の実験 = 子ザルは、ミルクの出る針金の母より、布の母を好んだ(Harlow)

縦断的方法と横断的方法

ここからは、発達の調べ方である。臨床編の4限目で研究法を扱った。発達の研究では、次の2つを、対にして覚える。

縦断的方法は、同じ人や集団を、長い期間追いかけて、変化を調べる。一人ひとりの変化の道すじを追える。縦断的研究、縦断法とも呼ぶ。

横断的方法は、ある1つの時点で、年齢の違う人たちを集めて比べる。短い期間で調べられる。

ただし、横断的方法では、違う人たちの差を、年齢による変化とみなすことになる。同じ時代に生まれ、同じ時代の経験を共有する集団を、コホートと言う。横断的方法では、年齢の差に、コホートの差が混ざる。縦断的方法は、時間と手間がかかり、1つのコホートの結果しか得られない。いくつかのコホートを並べて比べる方法を、コホート分析と言う。

  • 縦断的方法 = 同じ人を長く追う。変化の道すじが見える。時間と手間がかかる
  • 横断的方法 = 年齢の違う人を一度に比べる。短い期間で調べられる
  • コホート = 同じ時代に生まれた集団。横断的方法では、年齢の差にコホートの差が混ざる
  • コホート分析 = いくつかのコホートを並べて比べる

一生を通した発達

発達は、子どもの時期で終わらない。人の一生を通して、発達をとらえるのが、生涯発達心理学である。Baltesが、その考え方をまとめた。

どの時期の発達にも、伸びる面、つまり獲得と、衰える面、つまり喪失が、あわせて起こる。発達には、変わる余地があり、これを可塑性と言う。生まれた時代の出来事も、発達に影響する。

年をとってからの適応のしかたとして、Baltes 夫妻は、補償を伴う選択的最適化を挙げた。SOCとも呼ばれる。

段階ごとに果たす課題、発達課題は、Havighurst である。Erikson の心理社会的危機と並べて、臨床編の7限目②で扱った。

  • 生涯発達 = どの時期にも、獲得と喪失。変わる余地(可塑性)。生まれた時代の影響
  • 補償を伴う選択的最適化(SOC) = Baltes。年をとってからの適応のしかた
  • 発達課題 = Havighurst。臨床編の7限目②で扱った

青年期の語

青年期の語を、1つにまとめる。

Hallは、青年期を、疾風怒濤の時代と呼んだ。激しく揺れ動く時期、という意味である。Hall は、青年心理学の父とも呼ばれる。

ホール(Hall)の肖像
ホール(Hall)

親から、心の面で自立しようとすることを、心理的離乳と言う。この時期に、親や大人に反発することを、第二反抗期と呼ぶ。Hall の語は疾風怒濤で、心理的離乳ではない。取り違えないようにする。

Lewinは、子どもでも大人でもない青年を、境界人、マージナル・マンと呼んだ。周辺人とも言う。

アイデンティティの4つの地位は、Marcia である。臨床編の7限目②で扱った。

  • 疾風怒濤 = 激しく揺れ動く時期。Hall
  • 心理的離乳 = 親から心の面で自立しようとする
  • 第二反抗期 = 親や大人に反発する
  • 境界人 = 子どもでも大人でもない。Lewin

老年期の語

老年期の語も、1つにまとめる。

回想法は、高齢者が、自分の人生を振り返って語る方法である。人生の意味を見つけ直し、自分をまとめていくことを目指す。臨床ではない専攻の直近の入試で、説明を求める問題が出ている。

離脱理論は、高齢者が、社会から少しずつ離れていくことが、うまく年をとることにつながる、と考える理論である。反対に、それまでの活動を保つことが、うまく年をとることにつながる、とするのが活動理論である。

老年期の心理社会的危機、統合対絶望は、臨床編の7限目②で扱った。流動性知能と結晶性知能は、臨床編の9限目①で扱った。

  • 回想法 = 人生を振り返って語り、意味を見つけ直す
  • 離脱理論 = 社会から離れることが適応
  • 活動理論 = 活動を保つことが適応

答案でやりがちな間違い

答案用紙に書くときの、やりがちな間違いを3つ挙げる。

成熟優位説を、Binet の説だと書いてしまう。以前の入試の○×で、この誤りが置かれていた。成熟優位説は、Gesell である。Binet は、知能検査である。

輻輳説と、相互作用説を混ぜてしまう。遺伝と環境を足し合わせるのが、Stern の輻輳説である。互いに影響しあう、とするのが相互作用説である。

刻印づけを、Skinner の語だと書いてしまう。これも、以前の入試の○×に置かれていた誤りである。刻印づけは、Lorenz である。

  • 成熟優位説は Gesell。Binet は知能検査
  • 輻輳説は足し算(Stern)、相互作用説は互いに影響
  • 刻印づけは Lorenz。Skinner はオペラント条件づけ

基礎心理3限目②のまとめ

まとめる。

発達を決めるものには、成熟優位説、環境優位説、輻輳説、相互作用説の4つがある。成熟優位説は Gesell、輻輳説は Stern である。

Gesell は、双子の一方だけを訓練する双生児統制法で、成熟を待つことを示した。刻印づけは Lorenz で、学習が成り立つ早い時期を、臨界期と言う。

発達の調べ方は、縦断的方法と横断的方法である。一生を通した発達は Baltes、青年期の疾風怒濤は Hall である。

次の回は、基礎心理4限目、記憶と認知である。

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 遺伝と環境の4つの説 ― 成熟優位説(成熟を待てば育つ・Gesell)、環境優位説(経験と学習で決まる・行動主義の立場)、輻輳説(遺伝と環境の足し算・Stern)、相互作用説(互いに影響しあう・いまの主流)。環境閾値説は Jensen。性格の話の生得説とは名前を分けて覚える
  2. 階段登りの実験と双生児統制法・双生児法 ― 一卵性双生児の T は46週から6週間、C は53週から2週間だけ訓練し、79週で差はない。早すぎる訓練は役に立たず、成熟を待つと効く(Gesell)。一方だけ訓練して比べるのが双生児統制法、一卵性と二卵性の似かたを比べるのが双生児法
  3. 刻印づけと臨界期 ― 孵化の直後に見た動くものを追うのが刻印づけ(刷り込み・インプリンティング。Lorenz)。起こる時期が限られ、学習や経験が成り立つ早い時期が臨界期。境目がゆるい時期は敏感期。Harlow は、子ザルが針金の母より布の母を好むことを示した(愛着は7限目①)
  4. 縦断的方法と横断的方法 ― 縦断は同じ人を長く追い(変化の道すじが見える・時間と手間)、横断は年齢の違う人を一度に比べる(短い期間)。コホートは同じ時代に生まれた集団で、横断的方法では年齢の差にコホートの差が混ざる。いくつかのコホートを比べるのがコホート分析
  5. 生涯発達・青年期・老年期 ― 生涯発達(Baltes)は、どの時期にも獲得と喪失があり、可塑性があり、時代の影響を受ける。青年期の疾風怒濤は Hall(心理的離乳ではない)、境界人は Lewin。老年期は回想法、離脱理論(対は活動理論)

基礎心理3限目②の課題:論述600字

動画の終わりで出している課題と同じです。院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

論述(600字)
発達における遺伝と環境の関係について、成熟優位説・環境優位説・輻輳説・相互作用説の違いにふれながら、双生児法がどのように用いられてきたかを、述べてください。はじめに4つの説の違いを、次に Gesell の双生児統制法と、一卵性と二卵性を比べる双生児法を、最後に双生児法の限界を書く、という順に組み立てます。

あわせて、この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、何も見ずに、1語ずつ200字で説明できるか、確かめてください。書けなかった語は、そこだけもう一度聞き直してください。

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この回の語のうち、成熟優位説と Gesell の階段登りの実験、刻印づけと臨界期を、入門書の本文で確かめられる本です。「発達:遺伝と環境」の章に、遺伝と環境が、相互に影響しあいながら発達の過程をつくる、という説明があります。Gesell が、Watson の行動主義の極端な経験主義に対して、成熟優位説を主張したこと、一卵性双生児を使った、双生児統制法と呼ばれる一連の研究を行ったことも書かれています。階段登りの実験は、生後46週目から6週続けて毎日10分訓練した T と、遅れて訓練を始めた C を比べる形で、トピックとして載っています。訓練を受けない間にも、C は動き回っていたはずだ、という点を考えておく必要がある、という指摘も、同じ箇所にあります。刷り込み(刻印づけ)は、Lorenz がこの名で呼んだこと、特定の期間(臨界期)があること、のちの研究で、敏感期と呼ぶほうが適切だと指摘されていることが書かれています。章の初めには、発達を、誕生から死までの一生の過程、生涯発達としてとらえる、という説明もあります。この回の課題を書く前に、成熟優位説と双生児統制法の説明を読み直したいときに向いています。なお、環境優位説、輻輳説、縦断的方法と横断的方法、コホートは、この本には出てきません。相互作用説という名前も出てきません。双生児法という名前も出てきませんが、知能の章のトピック『双生児・近親者の知能比較』に、一卵性と二卵性の双生児などの知能の似かたを比べた結果があり、課題の最後の段落(双生児法の限界)を考える材料になります。この動画とテキストで確かめてください。また、心理学の全体を見渡す入門書なので、1つの語を長い文章で論じる使い方には向きません。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。

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写真
ワトソン・ホールの肖像:パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
シュテルン:Psychoanalysts including Freud(1909年、Wellcome Collection)から切り抜き・円形に加工・CC BY 4.0(Wikimedia Commons)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Psychoanalysts_including_Freud._Photograph._Wellcome_V0027600.jpg
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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この記事を書いた人

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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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