発達① 認知と他者の心|院試塾 基礎心理3限目①

院試塾 基礎心理3限目① 発達 認知と他者の心
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院試塾 基礎心理3限目①。認知と他者の心です。基礎心理3限目の1本目です。この動画では、Piaget のシェマと同化・調節、認知発達の4つの段階、保存の課題と3つ山の課題、Vygotsky の外言と内言・最近接発達領域、心の理論と誤信念課題(サリーとアンの課題、一次と二次)、共同注意と社会的参照、乳児の研究者と語の組を、院試で問われる形に整理します。

目次

動画① 認知と他者の心

基礎心理3限目①の頻出語マップ

この動画で覚える 10 語

語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。

動画① 認知と他者の心(10語)

テキスト

この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。基礎心理3限目は、発達である。2本に分け、この回は1本目の、認知と他者の心である。

直近の入試では、Piaget の発達段階の名前や、他者の信念を推し量る働きの名前を答える問題が、穴埋めで出ている。研究者と語の組を選ぶ問題も出ている。段階の名前と順序、そして課題の手続きを、押さえる。

同化と調節

最初は、Piaget の認知発達の理論である。Piaget は、外の世界をとらえる枠組みを、シェマと呼んだ。

ピアジェ(Piaget)の肖像
ピアジェ(Piaget)

いまのシェマを使って、新しいものを取り込むのが、同化である。たとえば、回して開けるやり方で、初めて見る水筒のふたも、回して開けようとする。

取り込めないときに、シェマのほうを変えるのが、調節である。回しても開かないので、押して開けるやり方に変える。2つがつり合う方へ進むことを、均衡化と言う。

  • シェマ = 外の世界をとらえる枠組み
  • 同化 = いまのシェマで、新しいものを取り込む。例は、初めての水筒のふたも回す
  • 調節 = 取り込めないとき、シェマのほうを変える。例は、回らないので、押して開ける

Piaget の4つの段階

Piaget は、発達を4つの段階に分けた。順序は一定で、年齢はおおよその目安である。

  1. 感覚運動期 = 誕生から2歳ごろ。感覚と動作で外の世界をとらえる。物が隠れても、そこにあり続けると分かる、対象の永続性が育つ。終わりごろには、目の前にないものを思い浮かべる象徴機能が現れ、見た動作をあとで再現する、延滞模倣も見られる
  2. 前操作期 = 2歳から7歳ごろ。ことばやイメージで考えられるようになるが、考えはまだ、自分の見え方にしばられている。覚える語は、象徴機能と自己中心性
  3. 具体的操作期 = 7歳から11歳ごろ。具体的な物については、筋道を立てて考えられるようになる。覚える語は、保存と脱中心化
  4. 形式的操作期 = 11歳ごろから。具体的な物を離れて、仮説を立てて考える、仮説演繹的思考ができるようになる

直近の入試では、このうちの1つの名前を、穴埋めで答える問題が出ている。段階の名前と順序を、年齢の目安と組にして書けるようにする。

保存

前操作期と、具体的操作期を分ける課題が、保存の課題である。見た目が変わっても、量や数は変わらない、と分かることを、保存と言う。たとえば、折り紙の束を、扇の形に広げても、枚数は同じ。

液体の量の課題では、同じ形のコップ2つに、同じ量の水を入れて、子どもに同じだと確かめてもらう。そのあと、片方の水を、細長い容器に移す。

どちらが多いかを聞くと、前操作期の子どもは、水面の高いほうが多い、と答える。見た目の高さの1点に、注意が集まるためである。これを、中心化と言う。

具体的操作期の子どもは、量は変わらない、と答える。もとに戻せば同じ、高くなったが細くなった、といった理由を挙げる。

  • 前操作期 = 「水面の高いほうが多い」。高さの1点に注意が集まる(中心化)。保存はまだ
  • 具体的操作期 = 「量は同じ」。理由は、もとに戻せば同じ(逆操作)、高いが細い(相補性)。保存ができる

3つ山と自己中心性

前操作期の考え方の特徴を、自己中心性と言う。自分の見え方と、ほかの人の見え方を、区別しにくいことである。たとえば、絵本を自分のほうに向けたまま、向かいの友だちに、ほら見て、と見せる。

これを調べたのが、3つ山の課題である。台の上に3つの山の模型を置き、子どもとは別の位置に、人形を置く。人形からは山がどう見えるかを、何枚かの絵から選んでもらう。

前操作期の子どもの多くは、自分から見える絵を選ぶ。見え方の違いを考えられるようになることを、脱中心化と言う。

6限目で話した、認知行動療法の脱中心化とは、別の意味である。なお、課題の条件を変えると、前操作期の子どももある程度できる、という批判もある。

Piaget と Vygotsky

Piaget と並べて出てくるのが、Vygotskyである。Piaget は、幼児のひとりごとを、自己中心的な言語と呼び、発達の途中の姿と見た。

Vygotsky は、ことばは、まず人とのやりとりに使う外言として現れ、のちに頭の中で考えるための内言になる、と考えた。ひとりごとは、その途中の姿である。

ひとりでできることと、大人の助けがあればできることの、あいだの範囲を、最近接発達領域(発達の最近接領域)と呼んだ。たとえば、ひとりでは解けない繰り上がりの足し算が、まず一の位から、と声をかけられると解ける。この大人の助けを、足場かけと言う。

  • Piaget = ひとりごとは、自己中心的な言語。発達の途中の姿
  • Vygotsky = ひとりごとは、外言から内言への途中。最近接発達領域は、ひとりでできることと、助けがあればできることの間

心の理論

ここからは、他者の心である。他者が何を思い、何を信じ、何をしようとしているかを、推し量る働きを、心の理論(theory of mind、ToM)と言う。

Premack と Woodruff が、チンパンジーの研究から、この名前を使った。直近の入試では、2人の名前を示して、この働きの名前を答える穴埋めが出ている。

たとえば、母は、まだ私がお皿を割ったことを知らない、と考える。

  • 心の理論 = 他者の信念や意図など、目に見えない心の状態を推し量る働き
  • Premack と Woodruff = チンパンジーの研究から、この名前を使った

サリーとアン

心の理論を調べる代表的な課題が、誤信念課題である。他者が、事実と違うことを信じている、と分かるかを見る。よく使われるのが、サリーとアンの課題である。手続きは、次の順である。

  1. サリーが、ビー玉をカゴに入れる
  2. サリーが、部屋を出ていく
  3. サリーがいないあいだに、アンが、ビー玉をカゴから箱に移す
  4. サリーが、部屋に戻ってくる。子どもに聞く。サリーは、ビー玉を探すとき、どこを探すか

正しい答えは、カゴである。サリーは、ビー玉が移されたことを知らない。4歳前後から、正しく答えられるようになる、とされる。それより幼いと、いまビー玉がある、箱と答える。

  • 正答 = カゴ(サリーが思っている場所)
  • 誤答 = 箱(いまビー玉がある場所)

一次と二次の心の理論

サリーとアンの課題のように、ある人が何を思っているかを推し量るのが、一次の心の理論である。

ある人が、別の人の思っていることを、どう思っているかまで推し量るのが、二次の心の理論である。入れ子の形になる。たとえば、姉は、弟がケーキは冷蔵庫にあると思っている、と思っている。

二次の課題は、5歳から7歳ごろに通るとされる。直近の入試では、二次の心の理論を、一次との違いが分かるように説明する論述が出ている。

  • 一次の心の理論 = Aは〜と思っている。例は、弟はケーキが冷蔵庫にあると思っている。通る年齢は、4歳前後
  • 二次の心の理論 = Aは「Bは〜と思っている」と思っている。例は、姉は「弟はケーキが冷蔵庫にあると思っている」と思っている。通る年齢は、5〜7歳ごろ

共同注意と社会的参照

その前の乳児の時期に戻る。乳児が、大人や物と、それぞれ1対1でかかわる関係を、二項関係と言う。

乳児と大人が、同じ物に一緒に注意を向ける関係を、三項関係と言う。このように注意を共有することを、共同注意と言い、指さし、物を見せる、手渡すといった行動が見られる。たとえば、散歩の途中で犬を指さして、親の顔を振り返る。

初めて見るものに出会ったとき、大人の表情を手がかりに、近づくかどうかを決めることを、社会的参照と言う。9か月、10か月ごろから、1歳すぎにかけて見られる。床が深く見える視覚的断崖の装置で、調べられた。

乳児の社会性は、おおよそ、3か月ごろのほほえみ、8か月ごろの人見知り、そして社会的参照の順に現れる。生まれてすぐに見られる生理的微笑は、共同注意の行動ではない。

  • 共同注意の行動 = 指さし、物を見せる、手渡す
  • 社会的参照 = 大人の表情を手がかりに、近づくかを決める。視覚的断崖で調べられた
  • 順序 = 3か月ごろ ほほえみ、8か月ごろ 人見知り、そのあと 社会的参照。生理的微笑は共同注意ではない

研究者と語の組

乳児の研究で知られる研究者と、語の組を確かめる。直近の入試では、この組の中に誤りを1つ混ぜて、選ばせる問題が出ている。

  • Premack = 心の理論。チンパンジーの研究から名づけた
  • Fantz = 選好注視法。2つの図形を並べて、乳児がどちらを長く見るかを調べる
  • E. Gibson = 視覚的断崖。奥行きの知覚を調べる装置
  • Spitz = 8か月不安、つまり人見知り。7限目で扱ったホスピタリズムも、Spitz の研究である
  • Ribble = マザリング。母親による愛撫や世話を指す

ほかの回で扱う語

発達の章で出る語のうち、いくつかは、ほかの回で扱う。

Thomas と Chess は、乳児の気質を、扱いやすい子、扱いにくい子、順応に時間がかかる子の、3つの型に分けた。臨床編の3限目の1本目で扱った、体格と結びつけた気質とは、別の意味である。

愛着とエリクソンの発達段階は、7限目で扱った。遺伝と環境、そして発達の調べ方は、次の回で扱う。

答案でやりがちな間違い

  • 誤信念課題の正答を、「いまある場所」と書いてしまう。正答は、サリーが思っている場所、つまりカゴ
  • 保存ができる段階を、取り違えてしまう。前操作期の子どもは、まだ保存ができない。保存ができるのは、具体的操作期
  • 脱中心化という語を、混ぜてしまう。Piaget の脱中心化は発達の語、6限目の脱中心化は認知行動療法の語

基礎心理3限目①のまとめ

まとめる。Piaget は、感覚運動期、前操作期、具体的操作期、形式的操作期の、4つの段階を示した。保存と3つ山の課題で、前操作期の特徴が調べられた。

心の理論は、他者の心の状態を推し量る働きである。サリーとアンの誤信念課題で調べ、一次は4歳前後、二次は5歳から7歳ごろに通るとされる。

それより前に、乳児は、共同注意と社会的参照を示すようになる。

次の回は、基礎心理3限目の2本目、発達を決めるものと、発達の調べ方である。

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 同化と調節 ― シェマは外の世界をとらえる枠組み(Piaget)。同化はいまのシェマで新しいものを取り込むこと、調節は取り込めないときにシェマのほうを変えること。2つがつり合う方へ進むことを均衡化と言う
  2. Piaget の4つの段階 ― 感覚運動期(対象の永続性・延滞模倣)→前操作期(象徴機能・自己中心性)→具体的操作期(保存・脱中心化)→形式的操作期(仮説演繹的思考)。年齢は目安。保存ができるのは具体的操作期で、前操作期はまだ。Piaget の脱中心化は、6限目の認知行動療法の脱中心化とは別の意味
  3. 保存と3つ山の課題 ― 液体の量の課題で、前操作期は水面の高いほうが多いと答える(中心化)。3つ山の課題は、人形からの見え方を絵から選ばせる。自分から見える絵を選ぶのが、自己中心性
  4. 心の理論と誤信念課題 ― 心の理論は、他者の信念や意図など、目に見えない心の状態を推し量る働き(Premack と Woodruff がチンパンジーの研究から命名)。サリーとアンの課題の正答はカゴ(サリーが思っている場所)。一次は4歳前後、二次は5〜7歳ごろ
  5. Vygotsky・共同注意・社会的参照 ― Vygotsky は外言から内言、最近接発達領域(ひとりでできることと、助けがあればできることの間)。三項関係の共同注意は、指さし・物を見せる・手渡す。社会的参照は大人の表情を手がかりにする。研究者と語の組は Premack=心の理論、Fantz=選好注視法、E. Gibson=視覚的断崖、Spitz=8か月不安、Ribble=マザリング

基礎心理3限目①の課題:用語説明(200字)

動画の終わりで出している課題と同じです。院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、何も見ずに、1語ずつ200字で説明できるか、確かめてください。書けなかった語は、そこだけもう一度聞き直してください。

課題 用語説明(200字)
「心の理論」について、誤信念課題の手続きに触れながら、200字程度で説明してください。はじめに心の理論とは何かを、次に誤信念課題の手続きを、最後に正しく答えられるようになる年齢の目安を書く、という順に組み立てます。

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新・心理学の基礎知識

中島義明・繁桝算男・箱田裕司 編/有斐閣(有斐閣ブックス)

この回の語を、設問に答える形の解説で、1つずつ確かめられる本です。Piaget の項目に、シェマ、同化・調節・均衡化の説明があり、前操作期の保存課題(水を広口のコップから口の狭いコップに移す課題)も出てきます。4つの段階の名前と年齢の目安も、同じ Piaget の項目にあります。対象の永続性は「物体の永続性」の項目に、延滞模倣は「象徴機能」の項目の中に出てきます。3つ山の課題は、他の人の見え方を考える力(他視点取得)の項目に出てきます。心の理論と誤信念課題の項目には、標準的な誤信念課題は4歳後半から5、6歳で理解する、という説明と、ゲームの形にすると4歳ごろから質問に正答できる、という説明があります。共同注意と三項関係、社会的参照(視覚的断崖の実験)、Vygotsky の発達の最近接領域の項目もあります。この回の参考文献の1冊です(社会的参照が見られる時期〔9、10か月から1歳すぎ〕を、この本で確かめました)。この回の課題を書く前に、心の理論と誤信念課題の項目を読み直したいときに向いています。なお、二次の心の理論という名前と、サリーとアンの課題は、この本には出てきません。この動画とテキストで確かめてください。また、心理学の全体を見渡す本なので、1つの語を長い文章で論じる使い方には向きません。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。

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写真
ピアジェ:Anefo 撮影(Nationaal Archief 所蔵)から顔まわりを切り出し・縮小・円形に加工・CC0(Wikimedia Commons)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Professor_Piaget_en_koningin_Juliana_tijdens_de_bijeenkomst,_Bestanddeelnr_925-6521.jpg
https://creativecommons.org/publicdomain/zero/1.0/
この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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この記事を書いた人

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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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