院試塾 基礎心理1限目②。社会心理学です。基礎心理1限目の2本目です。この動画では、社会的促進と社会的手抜き、同調と服従、リーダーシップのPM理論、傍観者効果、ステレオタイプ・偏見・差別と社会的アイデンティティ理論、集団極性化と集団思考を、院試で問われる形に整理します。
動画② 他者と集団
この動画で覚える 10 語
語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。
動画② 他者と集団(10語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。基礎心理1限目は、社会心理学である。2本に分け、この回は2本目の、他者と集団である。
直近の入試では、社会的促進を理論を踏まえて説明する問題や、リーダーシップの主要な理論に触れながら、効果的なリーダーシップを論じる問題が出ている。どちらも論述である。
同調は、以前の入試でよく出ていた語である。服従と傍観者効果も、以前の入試で出ている。実験の手続きと、数を押さえる。主な用語には、日常の具体例を添える。
社会的促進
最初は、社会的促進である。他者がそばにいるだけで、作業の成績が上がることを言う。たとえば、1人で走るより、横に並んで走る人がいるほうが、速く走れる。
この現象を、動因の考え方でまとめたのが、Zajonc である。見ている人や、同じ作業をする人がいると、覚醒が高まり、動因が上がる。動因が上がると、その場で出やすい反応、優勢反応が、さらに出やすくなる。
- 単純な課題や、よく慣れた課題 = 正しい反応が優勢なので、成績が上がる
- 難しい課題や、まだ学習していない課題 = 誤った反応が優勢なので、成績が下がる。これを、社会的抑制と言う
自分が評価されている、という不安が要るとする、Cottrell の評価懸念説もある。理由の理論を、名前と組にして書けるようにする。
社会的促進と社会的手抜き
逆の向きの現象もある。集団で共同作業をすると、1人あたりの努力の量が、1人のときより下がる。これを、社会的手抜きと言う。社会的怠惰とも呼ばれる。たとえば、綱引きで、人数が増えるほど、1人が出す力が弱まる。
研究したのは、Latané らである。大きな声を出す、拍手をする、といった課題で、人数が増えるほど、1人あたりの音が小さくなった。
社会的促進と、社会的手抜きは、対で問われる。他者がいるだけの場面か、みんなで1つの作業をする場面か、で区別する。
- 社会的促進 = 他者がいるだけの場面。並んで走る
- 社会的手抜き = みんなで1つの作業をする場面。綱引き
同調 Asch の実験
次は、同調である。集団の多数の意見や行動に合わせて、自分の判断や行動を変えることである。実験をしたのは、Asch である。前の回で出た印象形成と、同じ人である。
- 課題は、左の線と同じ長さの線を、右の3本から選ぶ、という単純なもの
- 参加者のほかは、全員がサクラで、わざと同じ誤った答えを言う
- サクラに合わせた誤った答えは、全体の約37%。一度も合わせなかった人は、約4分の1
同調を生む力は、2つに分けられる。Deutsch と Gerard の分類である。
- 規範的影響 = 集団から受け入れられたい、嫌われたくない、という理由で合わせる
- 情報的影響 = 他者の判断を、正しい情報として取り入れる
この2つの違いを説明させる問題が、出ている。
服従
同調と対になるのが、服従である。権威をもつ人の命令に従うことである。同調は集団の多数からの圧力、服従は権威者の命令である。実験をしたのは、Milgram である。

- 参加者は、教師の役になり、学習者の役の人が答えを間違えるたびに、電気ショックを与えるよう、実験者から指示される
- 間違えるたびに、ショックを強くしていく
- 学習者は実はサクラで、電気は流れていない
最も強いショックまで命令に従った人は、65%であった。ただし、この65%は、基準となった条件での値である。その後、条件によって数字が大きく変わることや、再現性が議論されている。
実験のあとで、本当の目的を説明することを、デブリーフィングと言う。4限目の3本目で扱った、研究倫理の話である。
リーダーシップのPM理論
次は、リーダーシップである。Lewin らは、リーダーの型を、専制型、民主型、放任型の3つに分けて比べた。
日本の三隅は、リーダーシップの働きを、2つに分けた。PM理論である。
- P(パフォーマンス) = 目標達成の機能。計画を立て、指示を出す
- M(メンテナンス) = 集団維持の機能。メンバーの気持ちを理解し、集団のまとまりを保つ
たとえば、部活の部長が、練習の計画を立てて指示を出すのがP、部員の話を聞いて雰囲気を保つのがMである。
それぞれが強いか弱いかで、4つの型に分かれる。強いほうを大文字、弱いほうを小文字で書く。大文字のPMから、小文字のpmまでの、4つである。三隅らの研究では、集団の生産性やメンバーの満足度は、PM型で最も高く、pm型で最も低い結果であった。PとMの名前と、4つの型を、答案に書けるようにする。
傍観者効果
助けが必要な人がいる場面で、まわりに人が多いほど、誰も助けない、助けが遅れる。これを、傍観者効果と言う。研究したのは、Latané と Darley である。社会的手抜きと同じ、Latané である。
理由は、3つ挙げられる。
- 責任の分散 = ほかの人がいると、自分が助ける責任が薄まる。たとえば、駅で人が倒れていても、誰かが駅員に知らせるだろう、と思ってしまう
- 多元的無知 = 多数の無知とも言う。ほかの人が動かないのを見て、緊急ではない、と考えてしまう
- 評価懸念 = 助けに出て失敗したら、どう見られるかを気にする。社会的促進でも出た語である
偏見と社会的アイデンティティ
次は、集団どうしの関係である。3つの語を、並べて区別する。
- ステレオタイプ = ある集団の人について、一般化されたイメージ。たとえば、A型の人は几帳面だ、というイメージ
- 偏見 = その集団の人に対する、否定的な態度
- 差別 = 偏見にもとづく、行動
自分が属する集団を、内集団と言い、それ以外を外集団と言う。人は、所属する集団から、自分が何者かの一部を得ている。これを、社会的アイデンティティと言う。そのため、内集団を高く評価し、ひいきする。これを説明するのが、Tajfel と Turner の、社会的アイデンティティ理論である。直近の入試で、具体例を挙げて述べる形で出ている。
7限目で扱った、Erikson の自我同一性とは、別の語である。
集団で決めると
最後は、集団で何かを決めるときの現象である。名前と中身を組にする。
集団極性化は、討論のあとの集団の判断が、討論の前の平均より、同じ方向に、より極端になることである。集団分極化とも言う。たとえば、もともと賛成ぎみの人たちが話し合うと、もっと強い賛成にまとまる。Moscovici らが研究した。そのうち、より危険の大きい方向にずれることを、リスキー・シフトと言う。
集団思考は、Janis の語である。まとまりの強い集団が、全員一致を優先して、ほかの案の検討を怠ることである。たとえば、仲のよいサークルで、反対意見を言い出せないまま、計画が決まる。集団浅慮とも訳される。
答案でやりがちな間違い
- 社会的促進を、他者がいればいつも成績が上がる、と書いてしまう。難しい課題では下がる。優勢反応の考え方で、書き分ける
- 同調と服従を混ぜてしまう。同調は、集団の多数からの圧力。服従は、権威者の命令
- PM理論の、PとMを逆にしてしまう。Pは目標達成、Mは集団維持
基礎心理1限目②のまとめ
まとめる。社会的促進は、Zajonc の優勢反応で説明される。集団の共同作業で努力が下がるのが、社会的手抜きである。
同調は、Asch の線の長さの課題で、規範的影響と情報的影響に分ける。服従は、Milgram である。
リーダーシップは、三隅のPM理論。傍観者効果には3つの理由があり、集団どうしの関係は、社会的アイデンティティ理論で説明される。
次の回は、基礎心理2限目、動機づけ・感情・ストレスである。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 社会的促進と社会的手抜き ― 社会的促進は、他者がそばにいるだけで成績が上がること。Zajonc は動因と優勢反応で説明した(単純・慣れた課題で上がり、難しい課題で下がる=社会的抑制)。Cottrell の評価懸念説もある。社会的手抜き(社会的怠惰)は、共同作業で1人あたりの努力が下がること(Latané ら)
- 同調と服従 ― 同調は Asch の線の長さの課題。サクラに合わせた誤答は全体の約37%、一度も合わせなかった人は約4分の1。規範的影響と情報的影響(Deutsch と Gerard)。服従は Milgram。最も強いショックまで従った人は65%(基準となった条件の値。条件による違いや再現性が議論されている)
- リーダーシップのPM理論 ― Lewin らは専制型・民主型・放任型を比べた。三隅のPM理論は、P=目標達成、M=集団維持の2つの機能。強弱で4つの型に分かれ、生産性や満足度はPM型で最も高く、pm型で最も低い
- 傍観者効果 ― Latané と Darley。まわりに人が多いほど助けない・助けが遅れる。理由は、責任の分散・多元的無知(多数の無知)・評価懸念の3つ
- 偏見と集団の決め方 ― ステレオタイプ(一般化されたイメージ)・偏見(否定的な態度)・差別(行動)。社会的アイデンティティ理論(Tajfel と Turner)は内集団ひいきを説明する。集団極性化(集団分極化。Moscovici ら。危険の方向はリスキー・シフト)と、集団思考(集団浅慮。Janis)
基礎心理1限目②の課題:頻出語の200字と、論述600字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、何も見ずに、1語ずつ200字で説明できるか、確かめてください。書けなかった語は、そこだけもう一度聞き直してください。
課題2 論述(600字)
ある中学校のクラスが、文化祭の合唱の練習に取り組んでいます。集団で練習すると、一人ひとりの努力が下がる生徒と、他の人がいることで力を出す生徒がいます。この2つの現象を、それぞれ理論を踏まえて説明してください。そして、学級担任がリーダーとして取るとよい働きかけを、リーダーシップの理論に触れながら、述べてください。
よくわかる社会心理学
山田一成・北村英哉・結城雅樹 編著/ミネルヴァ書房(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)
社会心理学を、はじめて学ぶ人向けの入門書で確かめられる本です。同調の実験と規範的影響・情報的影響、服従の実験、傍観者と責任の分散、社会的促進、社会的手抜きの実験、リーダーシップ(PM理論にも触れています)、リスキー・シフトと集団極化(集団極性化)、社会的アイデンティティ理論、ステレオタイプの項目があり、この回の語を、1つずつ読み直せます。この回の課題を書く前に、社会的促進と社会的手抜き、リーダーシップの項目を読み直したいときに向いています。なお、集団思考は、この本には出てきません。この動画とテキストで確かめてください。また、社会心理学の入門書なので、1つの語を長い文章で論じる使い方には向きません。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。
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ミルグラムの肖像:パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
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