院試塾 基礎心理1限目①。社会心理学です。基礎心理1限目の1本目で、基礎心理学編の最初の回です。この動画では、自己開示と自己呈示、説得の2つのルート(精緻化見込みモデル)、譲歩的要請法とフット・イン・ザ・ドア、認知的不協和、印象形成、原因帰属を、院試で問われる形に整理します。
動画① 人をどう見て、態度はどう変わるか
この動画で覚える 10 語
語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。
動画① 人をどう見て、態度はどう変わるか(10語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。ここから、基礎心理学編である。基礎心理1限目は、社会心理学である。2本に分け、この回は1本目の、人をどう見て、態度はどう変わるか、である。
直近の入試では、自己開示の働きを論じる問題や、説得のモデルを説明する問題が出ている。どちらも、説明させる形である。
印象形成や原因帰属、認知的不協和は、以前の入試でよく出ていた語である。名前と、手続きを押さえる。主な用語には、日常の具体例を添える。例は、この塾で作った架空の例である。
自己開示
最初は、自己開示である。自分自身についての情報を、言葉によって、他者に伝えることを言う。たとえば、初対面の相手に、自分の出身地や好きなことを話す。これも、自己開示である。
体系的に研究したのは、Jourard である。
自己開示には、返報性がある。相手から自己開示されると、こちらも同じくらい自己開示を返す、という傾向である。こうしたやりとりを通して、関係が深まっていく。関係が進むにつれて、自己開示の広さと深さが増していく、と考えるのが、社会的浸透理論である。
なお、カウンセラーが面接の中で自分のことを話す、カウンセラーの自己開示は、面接の技法の話として、別に問われる。
自己開示と自己呈示
よく似た語に、自己呈示がある。この2つの違いを、説明させる問題が出ている。
- 手段 = 自己開示は、言葉で伝える。自己呈示は、言葉に限らない。服装や、表情も含む
- 意図 = 自己呈示は、相手に与える印象を、自分の望む方向に向けようとする意図が前提である。自己開示は、意図を前提にしない。たとえば、自己紹介で趣味を話すのは、自己開示である。就職の面接に向けて、服装や話し方を整えるのは、自己呈示である
- 人の名前 = 自己開示は Jourard、自己呈示は Goffman。自己呈示は、印象操作とも呼ばれる
説得の2つのルート(精緻化見込みモデル)
次は、説得である。説得の研究は、Hovland らが、送り手、メッセージ、受け手などの要因に分けて調べたことから始まる。送り手の信憑性や、一面呈示と両面呈示などが、その要因である。説得が、かえって逆の方向に態度を変えてしまうことは、ブーメラン効果と呼ばれる。
いま入試で問われるのは、精緻化見込みモデルである。英語の頭文字で、ELM。精査可能性モデルとも訳される。提唱したのは、Petty と Cacioppo である。受け手に、メッセージの中身をよく考える動機と、考える能力があるかどうかで、態度の変わり方が2つに分かれる。
- 中心ルート = 動機と能力があるとき。議論の中身を考えて、態度が変わる。たとえば、選挙で、候補者の政策を読み比べてから、支持を決める。こうして変わった態度は、持続しやすいとされる
- 周辺ルート = 動機か能力がないとき。送り手の魅力や専門性、論拠の数といった手がかりで、態度が変わる。たとえば、候補者の見た目や知名度で、支持を決める。この変化は、一時的で変わりやすいとされる
中心ルートと周辺ルートの2つを、具体例と組にして書けるようにする。
譲歩的要請法
説得の技法を、架空の場面で見る。販売員が、まず、全12回で10万円の講座をすすめる。客は、高すぎると断る。すると販売員は、2回だけの体験コース、1万円を出す。
はじめに断られる大きな要求を出し、そのあとで、本来の要求を出す。これが、譲歩的要請法である。英語では、ドア・イン・ザ・フェイスと言い、選択肢で出ている。
逆の順番もある。まず小さな要求に応じてもらい、そのあとで大きな要求を出す方法である。段階的要請法、フット・イン・ザ・ドアと言う。大きな要求が先か、小さな要求が先か、で区別する。
- 譲歩的要請法(ドア・イン・ザ・フェイス) = 大きな要求が先
- フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法) = 小さな要求が先
認知的不協和 1ドルと20ドルの実験
次は、認知的不協和である。提唱したのは、Festinger である。自分の中の2つの認知が矛盾すると、不快な状態が生じる。この状態が、認知的不協和である。人は、この不協和を減らすように動機づけられる、とするのが、認知的不協和の理論である。
有名な実験を、手続きの順に見る。
- 参加者は、まず、1時間ほど、単調で退屈な作業をする
- そのあと、次の参加者に、この作業は面白かった、と伝えてもらう
- そのお礼が、1ドルの群と、20ドルの群に分けられた
- 最後に、作業が面白かったかを答えてもらう
結果は、1ドルの群のほうが、面白かったと評定した。少ない報酬で、うそをついた、という不協和を、作業は面白かった、と考えを変えることで減らした、と説明される。この結果には、その後、別の説明や、再現性をめぐる議論もある。
暖かいと冷たい(印象形成)
ここから、人をどう見るか、である。限られた情報から、その人の全体の印象を作ることを、印象形成と言う。研究を始めたのは、Asch である。
Asch は、ある人物の特徴を、7つの形容詞で順に読み上げた。知的な、器用な、勤勉な、暖かい、決断力のある、実際的な、用心ぶかい、の7つである。
もう一方の群では、暖かい、の1語だけを、冷たい、に入れ替えた。それだけで、形成される印象は、大きく違った。暖かいと冷たいのように、印象を大きく左右する特性を、中心的特性と呼ぶ。
Asch は、特徴を示す順番も変えてみた。はじめのほうに示した情報が、印象に強く影響した。これを、初頭効果と言う。
印象のゆがみとしては、光背効果がある。ハロー効果とも言い、1つの目立つ特徴で、ほかの面の評価までつられることである。たとえば、字がきれいな人は、仕事もていねいだろうと思ってしまう。
原因帰属の人と語
最後は、原因帰属である。人の行動や出来事の原因を、何に求めるかを推論することである。人と語の組で押さえる。
- Heider = 原因を、その人の内にあるものと、外の状況にあるものに分けた。たとえば、友だちが待ち合わせに遅れたとき、だらしないからと考えるのが内、電車が遅れたからと考えるのが外
- Kelley = 原因を推論するときの3つの情報。一貫性、弁別性、合意性
- Weiner = 成功や失敗の原因を、原因の所在、安定性、統制可能性の3つの次元で整理した
- Ross = 基本的な帰属の誤りと名づけた
基本的な帰属の誤りは、他者の行動の原因を、状況よりも、その人の性格などの内的な要因に求めすぎる傾向である。遅れてきた友だちを、事情を聞く前に、だらしない人だと決めてしまうのが、その例である。根本的な帰属のエラーとも言う。広くみられる傾向だが、文化によって強さが違うことも報告されている。自分の行動は状況のせいに、他者の行動は性格のせいにしやすい傾向は、行為者と観察者の相違と呼ばれる。
答案でやりがちな間違い
- 自己開示と自己呈示を、同じものとして書いてしまう。自己呈示には、印象を方向づける意図があり、言葉に限らない
- 譲歩的要請法と、フット・イン・ザ・ドアを逆にしてしまう。譲歩的要請法は、大きな要求が先
- 説得の中心ルートと、印象形成の中心的特性を混ぜてしまう。同じ中心という字でも、別の理論の語
基礎心理1限目①のまとめ
まとめる。自己開示は Jourard、自己呈示は Goffman である。手段と意図で区別する。
説得の精緻化見込みモデルは、中心ルートと周辺ルート。譲歩的要請法は、大きな要求が先である。認知的不協和は、Festinger である。
印象形成は、Asch の中心的特性。原因帰属は、Kelley の3つの情報と、基本的な帰属の誤りである。
次の回は、基礎心理1限目の2本目、他者と集団である。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 自己開示と自己呈示 ― 自己開示は、自分自身についての情報を言葉で他者に伝えること(Jourard。返報性がある。関係が進むと広さと深さが増すと考えるのが社会的浸透理論)。自己呈示は、印象を望む方向に向ける意図が前提で、言葉に限らない(Goffman。印象操作とも)。手段と意図で区別する
- 説得と譲歩的要請法 ― 精緻化見込みモデル(ELM。精査可能性モデルとも。Petty と Cacioppo)。考える動機と能力があれば中心ルート、どちらかがなければ周辺ルート。譲歩的要請法(ドア・イン・ザ・フェイス)は大きな要求が先、フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法)は小さな要求が先
- 認知的不協和 ― Festinger。2つの認知の矛盾が不快な状態を生み、人はそれを減らすように動機づけられる。1ドルと20ドルの実験では、1ドルの群のほうが作業を面白かったと評定した。この結果には、別の説明や再現性をめぐる議論もある
- 印象形成 ― Asch。7つの形容詞のうち「暖かい」を「冷たい」に入れ替えると印象が大きく違った(中心的特性)。はじめに示した情報が強く影響する(初頭効果)。光背効果(ハロー効果)は、1つの目立つ特徴でほかの面の評価までつられること
- 原因帰属 ― Heider(内的な原因と外的な原因)、Kelley(一貫性・弁別性・合意性の3つの情報)、Weiner(原因の所在・安定性・統制可能性の3つの次元)、Ross(基本的な帰属の誤り=根本的な帰属のエラー)。文化によって強さが違うことも報告されている。自分の行動は状況のせい、他者の行動は性格のせいにしやすい傾向は、行為者と観察者の相違
基礎心理1限目①の課題:頻出語の200字と、用語説明200字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、何も見ずに、1語ずつ200字で説明できるか、確かめてください。書けなかった語は、そこだけもう一度聞き直してください。
課題2 用語説明(200字)
「自己開示」と「自己呈示」の違いが分かるように、それぞれの意味と、面接や対人関係の場面での意味を、あわせて200字程度で説明しなさい。
心理学 第3版
鹿取廣人・杉本敏夫・鳥居修晃 編/東京大学出版会(第3版)
この回の語のうち、印象形成・原因帰属・態度と説得・認知的不協和・自己開示と自己呈示を、心理学の入門書の中の1つの章(社会行動)で確かめられる本です。人物の印象形成、帰属過程(ケリーの共変動モデル)、態度と説得、認知的不協和、自己開示と自己呈示の項目があります。この回の参考文献の1冊です(ケリーの3つの情報と、認知的不協和の説明で引きました)。この回の課題2を書く前に、自己開示と自己呈示の項目を読み直したいときに向いています。なお、精緻化見込みモデル・譲歩的要請法・フット・イン・ザ・ドアの呼び名や、光背効果、Weiner の3つの次元は、この本には出てきません。この動画とテキストで確かめてください。また、心理学の全体を見渡す入門書なので、1つの語を長い文章で論じる使い方には向きません。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。
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