院試塾 13限目①。領域・制度と見立てです。13限目の1本目です。この動画では、生物・心理・社会モデル、ケース・フォーミュレーション、初回面接で聞くこと、脳の部位と失語の2つの型、失認・失行・半側空間無視・遂行機能、神経心理検査の名前を、院試で問われる形に整理します。
動画① 見立ての枠組み
この動画で覚える 10 語
語を押すと、動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。
動画① 領域・制度と見立て① 見立ての枠組み(10語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。13限目は、臨床の領域・制度と見立てである。2本に分け、この回は1本目の、見立ての枠組みである。2本目は、領域と制度である。
1限目では、見立てとは、問題の成り立ちを仮説にすること、と話した。この回は、その続きで、見立てを組み立てる枠組みを扱う。
直近の入試では、生物・心理・社会のモデルを、例に当てはめて論じる問題が、くり返し出ている。後半は、脳の損傷で起こる症状である。失語の2つの型が、穴埋めや選択肢で出ている。
生物・心理・社会モデル(BPSモデル)
最初は、BPSモデルである。生物心理社会モデル、バイオ・サイコ・ソーシャルモデルとも言う。試験によって書き方が違うので、どれでも答えられるようにする。
提唱したのは、Engel である。この名前を指定語として使い、説明させる問題が出ている。
人の問題を、3つの側面から見る。
- 生物 = 体の病気や、脳、睡眠などの、体の側面
- 心理 = 感情や考え方、ストレスへの対処
- 社会 = 家族や友人、学校や職場など、人間関係と環境
大事なのは、3つを別々に見ずに、互いに影響し合うものとして理解することである。体の不調が気分を下げ、気分の落ち込みが、人づきあいを減らす。こうしたつながりで見る。
もう1つ。BPSD とは、別の語である。BPSD は、認知症の、行動と心理の症状のことである。混ぜない。
3つの側面に分ける
例で練習する。大学1年生のBさんが、眠れない日が続き、授業を休みがちになった、と相談に来た。Bさんの話を、3つの側面に分ける。
- 眠れない。食欲が落ちた。 = 生物の側面。体の病気が隠れていないかも、確かめる
- 自分はだめだと思う。失敗を強く恐れる。 = 心理の側面
- 一人暮らしを始めた。相談相手がいない。 = 社会の側面
そして、3つをつなげる。一人で抱えこんで眠れなくなり、眠れないから授業に出られず、さらに自分を責める。このつながりの仮説が、次のケース・フォーミュレーションである。
ケース・フォーミュレーション
次は、ケース・フォーミュレーションである。問題がなぜ起こり、なぜ続いているのかを、その人に合わせて説明する仮説である。入試では、説明の文から、この語を答える形で出ている。
流れは3つである。
- 問題の明確化 = 何に、どう困っているのかを、具体的にする
- 仮説の探索 = その問題が、なぜ起こり、なぜ続いているのかを考える。認知行動療法では、機能分析が、その中心である
- 定式化 = 成り立ちを、1つの説明にまとめる。この説明は、クライエントと協働して作る
定式化をもとに介入し、確かめて、合わなければ修正する。見立ては、仮説だからである。一人ひとりに合わせた個別性と、仮説を作って確かめること。この2つが要である。
初回面接(インテーク面接)で聞くこと
見立ての材料を集める最初の場が、初回面接である。インテーク面接、受理面接とも言い、3つとも同じものである。問題をつかみ、どんな援助が合うかを判断する。
聞くことは、次の4つである。
- 主訴 = いちばん困っていること
- 経過 = いつから始まり、どう変わってきたか
- 家族歴 = 家族の構成と関係、病気の歴
- 説明と同意 = 秘密の扱いと、その限界を伝える。11限目の1本目で扱った、インフォームド・コンセントである
家族歴を聞く理由は、論述で問われている。クライエントの問題を、家族の中で理解するため。家族からの影響を見るため。そして、遺伝の要因を考えるためである。
脳の部位と症状(高次脳機能障害)
ここから後半である。脳梗塞や頭のけがで脳が傷つくと、部位に応じた症状が出る。日本では、これを高次脳機能障害と呼ぶ。国際的には、神経心理学的症状と呼ぶ。部位と症状の組が、選択肢で出ている。
- 前頭葉 = 遂行機能障害
- 側頭葉 = 感覚性失語
- 右の頭頂葉 = 左側の無視(半側空間無視)
- 海馬 = 記憶障害。新しいことを、覚えにくくなる
ブローカ失語(運動性失語)
失語とは、脳の損傷で、いったん身につけた言葉の働きが、損なわれることである。2つの型を、対で押さえる。1つめは、ブローカ失語である。医師の、ブローカの名前がつく。英字では、Broca である。

- 症状 = 言葉の理解は、比較的保たれる。けれど、話し方がたどたどしく、途切れ途切れになり、文法の誤りも出る。言われたことをくり返す、復唱も難しくなる
- 傷つく場所 = 左の前頭葉の、ブローカ野。運動性言語野とも言う
そのため、ブローカ失語は、運動性失語、表出性失語とも呼ばれる。
ウェルニッケ失語(感覚性失語)
反対の型である。話し方は流暢なのに、言っている内容の意味が通らない。人の話を理解することも、難しい。これは、どこの損傷か。
答えは、ウェルニッケ失語である。医師の、ウェルニッケの名前がつく。英字では、Wernicke である。

傷つく場所は、左の側頭葉の、ウェルニッケ野である。感覚性言語野とも言う。そのため、ウェルニッケ失語は、感覚性失語、受容性失語とも呼ばれる。
ブローカは運動性で、前頭葉。ウェルニッケは感覚性で、側頭葉。この組を取り違えた選択肢が、実際に出ている。
失認・失行・半側空間無視・遂行機能
失語のほかの症状も、名前と中身の組で押さえる。
- 失認 = 感覚の器官に障害がないのに、見たり聞いたりしているものが、何かを認識できない状態。穴埋めで出ている
- 失行 = 運動の障害はなく、することも分かっているのに、目的にかなった動作ができない状態
- 半側空間無視 = 片側の空間にあるものに、気づかない状態。多くは右の脳の損傷で、左側を無視する。線分二等分という、線の真ん中に印をつけてもらう課題が、使われる
- 遂行機能障害 = 計画を立てて、順序よく実行することが難しくなる状態。前頭葉の損傷で起こる
遂行機能は、実行機能とも言う。脳の損傷の話では遂行機能、発達の話では実行機能と呼ぶことが多いので、どちらの名前でも答えられるようにする。
神経心理検査の名前
脳の働きを調べる検査を、神経心理検査と言う。ここでは、名前だけを見ておく。
- MMSE = ミニメンタルステート検査
- HDS-R = 改訂長谷川式簡易知能評価スケール
- WMS-R = ウェクスラー記憶検査
- WCST = ウィスコンシン・カード分類検査
- BADS = 遂行機能障害症候群の行動評価
直近の入試では、心理検査を選ぶ問題の選択肢に、MMSE や WMS-R が並んでいる。名前を見て、神経心理検査だと分かるようにしておく。
答案でやりがちな間違い
- ブローカ失語を、感覚性と書いてしまう。ブローカは運動性で前頭葉、ウェルニッケは感覚性で側頭葉
- BPSモデルの論述で、生物、心理、社会を並べただけで終わる。3つのつながりを仮説にして、支援まで書く。体の症状があるときは、医療につなぐことも書く
- BPS と、BPSD を混ぜてしまう。BPSD は、認知症の、行動と心理の症状
13限目①のまとめ
まとめる。BPSモデルは、Engel が提唱した。3つの側面のつながりを仮説にまとめる作業が、ケース・フォーミュレーションである。
初回面接では、主訴、経過、家族歴を聞き、秘密の扱いを説明して、同意を得る。
失語は、ブローカが運動性で前頭葉、ウェルニッケが感覚性で側頭葉である。
次の回は、13限目の2本目、領域と制度である。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- BPSモデルとケース・フォーミュレーション ― BPSモデル(生物心理社会モデル)はEngelが提唱し、人の問題を生物・心理・社会の3つの側面から、互いに影響し合うものとして見る。3つを並べて終わらず、つながりを仮説にするのがケース・フォーミュレーション(問題の明確化・仮説の探索・定式化)。個別性と、仮説を作って確かめることが要。BPSDは認知症の行動・心理症状で、別の語
- 初回面接(インテーク面接・受理面接) ― 見立ての材料を集める最初の場。聞くことは、主訴・経過・家族歴と、説明と同意(秘密の扱いとその限界)。家族歴を聞く理由は、問題を家族の中で理解するため、家族からの影響を見るため、遺伝の要因を考えるため
- 脳の部位と症状・失語の2つの型 ― 日本では高次脳機能障害と呼ぶ。前頭葉=遂行機能障害、側頭葉=感覚性失語、右の頭頂葉=左側の無視、海馬=記憶障害。ブローカ失語は運動性(表出性)で左の前頭葉、ウェルニッケ失語は感覚性(受容性)で左の側頭葉。この組を取り違えない
- 失認・失行・半側空間無視・遂行機能 ― 失認は、感覚の器官に障害がないのに何かを認識できない状態。失行は、運動の障害はないのに目的にかなった動作ができない状態。半側空間無視は多くは右の脳の損傷で左側を無視する。遂行機能は実行機能とも言い、前頭葉の損傷で障害される。神経心理検査は名前(MMSE・HDS-R・WMS-R・WCST・BADS)だけ
13限目①の課題:頻出語の200字と、論述600字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、1語ずつ200字で説明してください。「定義・何のため・似た語との違い」を入れると、200字になります。
課題2 論述(600字)
中学2年生のAさんは、2か月前から朝になると腹痛を訴え、学校を休みがちになった。生物・心理・社会モデルを使って、Aさんをどう見立て、どんな支援を考えるか、具体的に述べなさい。
段落は3つで書けます。1つめは、生物・心理・社会の3つの側面からみた、Aさんの見立て。2つめは、3つをつなげた仮説。3つめは、その仮説をもとに考える支援です。
よくわかる臨床心理学[改訂新版]
下山晴彦 編/ミネルヴァ書房(改訂新版)
この回の前半、見立ての枠組みを、入門の水準で読み直せる本です。生物・心理・社会モデルの項目では、個人の健康に影響する要因を生物・心理・社会の3つの側面でまとめる枠組みであること、各側面にどんな要因が入るかが説明されています。ケース・フォーミュレーションの項目では、個別性と仮説の生成・検証が強調されることと、問題の明確化、仮説の探索、フォーミュレーションの3つの段階が表で示されています。初回面接の項目では、主訴や来談のきっかけを聞くことと、協働関係の形成が説明されています。この回の課題2を書く前に、生物・心理・社会モデルとケース・フォーミュレーションの基本を読み直したいときに向いています。なお、それぞれの項目は2ページほどです。この回の後半、脳の部位と失語の2つの型などは、この動画とテキストで確かめてください。答案の型も、この動画とテキストで確かめてください。
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ブローカ・ウェルニッケの肖像:パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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