院試塾 4限目②。1本目で扱った研究法の土台の上に立つ、推測統計と仮説検定です。研究法と統計の2本目です。この動画では、母集団と標本、標本分布、点推定と区間推定、標準誤差、不偏性、統計的仮説検定の5つの手順、p値の注意点、第1種と第2種の誤り、検定力を規定する要因、効果量、ベイズファクターを扱います。
動画② 推測統計と仮説検定
この動画で覚える 12 語
語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、直近の入試でも出題が続いている語。
動画② 研究法と統計② 推測統計と仮説検定(12語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。1本目で話した、研究法の土台の上に立つ話である。心理学の研究で手に入るのは、母集団から出てくる無数のサンプルのうち、たった1つである。そこから母集団の値を推し量るのが、推測統計である。検定力は、実際の大学院の過去問でも、繰り返し問われている。何が検定力を決めるのか、答えられるようにする。
母集団とサンプル
まず、母集団と、標本(サンプル)を確認する。母集団とは、リサーチクエスチョンが暗黙のうちに想定している、対象者の全体である。標本(サンプル)とは、実際にデータを取る集団である。
標本分布
次に、標本分布である。サンプルを取るたびに、標本平均などの統計量は変わる。その統計量そのものの分布が、標本分布である。データの分布と、統計量の分布を、混同してはならない。
点推定と区間推定
次に、点推定と区間推定である。点推定とは、母数を1つの値で推定することである。区間推定とは、母数が入るであろう幅を、示すことである。点推定には誤差が伴い、母数と一致する保証はない。だから、幅でも示す。
標準誤差
次に、標準誤差である。標準偏差がデータのばらつきであるのに対して、標準誤差は推定値のばらつきである。サンプルサイズが大きいほど、小さくなる。
不偏性
最後に、不偏性である。標本分散をそのまま使うと、母分散を過小推定する。nで割ると、その期待値が母分散より小さくなるからである。n−1で割ると、期待値が母分散と一致する。これが不偏性である。覚え方としては、平均からの偏差の和は0になるので、自由に動ける値が1つ減る、と押さえておくと、n−1を思い出せる。
統計的仮説検定の5手順
統計的仮説検定は、5つの手順で進む。
- 帰無仮説と対立仮説を立てる。帰無仮説とは、差がない、関連がない、という仮説である。対立仮説とは、差がある、関連がある、という、研究者が主張したい仮説である
- 検定統計量を選ぶ
- 有意水準(α)を決める。慣行として5パーセントである
- データから、検定統計量の実現値を求める
- 棄却域に入るかで、帰無仮説を棄却するか判断する
ここで、大事な注意がある。帰無仮説を棄却しなかった、は、差がないことが証明された、ではない。言えるのは、差があるとは言えなかった、までである。ここを取り違えた答案は、評価されない。
p値の3つの注意点
p値である。実際の大学院の過去問でも、詳しく論じさせる出題がある。定義はこうである。帰無仮説が正しいと仮定したときに、観測されたデータ以上に極端な結果が得られる確率である。書くときに落としてはいけない注意点が、3つある。
- p値は、帰無仮説が正しい確率ではない
- p値は、効果の大きさを表さない。標本が大きければ、実質的に無意味な差でも、pは小さくなる
- pが0.05より小さいかどうか、だけで判断する運用が、近年強く批判されている。p値の役割は、有意水準αと比べて、帰無仮説を棄却するかどうかを判断する材料になることである
第1種と第2種の誤り
実際の大学院の過去問でも、定番の出題である。タイプ1エラーとタイプ2エラーが、それぞれ何か、何で決まるかを、1つの問いで出しているものがある。検定力も、別の設問で問われている。
| H₀は正しい | H₀は間違い | |
|---|---|---|
| H₀を棄却 | 第1種の誤り(確率α) | 正しい判断(検定力) |
| H₀を棄却しない | 正しい判断 | 第2種の誤り(確率β) |
帰無仮説が、本当は正しいのに棄却してしまう。これが第1種の誤りである。ありもしない差を見誤る。その確率は、有意水準αと一致する。
帰無仮説が、本当は間違っているのに棄却しない。これが第2種の誤りである。あるはずの差を見抜けない。その確率はβである。
帰無仮説が間違っているときに、正しく棄却できる確率、1−βが検定力である。
検定力を規定する要因
実際の大学院の過去問でも、検定力の定義と、それを規定する要因、そして意義が問われている。規定する主な要因は、本体が2つ、研究者が決める線を入れて3つである。
- 効果量である。母集団での効果が大きいほど、検出しやすくなる
- サンプルサイズである。nを大きくするほど、検定力は上がる
- 有意水準である。αを緩めれば検定力は上がるが、第1種の誤りが増える
サンプルサイズと有意水準は研究者が決められるが、効果量は母集団の性質なので、研究者が直接は決められない。片側検定か両側検定かなど、検定の種類も影響する。答案では、効果量とサンプルサイズを核に据え、有意水準は添える形にする。
検定力の考え方
南風原朝和は、次のように述べている。「2群の平均値差の検定の検定力、すなわち有意差が得られる確率は、基本的に、母集団における効果量とサンプルサイズによって規定されます」(南風原朝和『心理統計学の基礎』有斐閣、2002年、164頁)。原文では、効果量とサンプルサイズの間に数式が入るが、ここでは省く。
検定力が低い研究は、本当は存在する効果を見逃す。だから、研究計画の段階で、必要なサンプルサイズを見積もる、検定力分析が本筋になる。
効果量
効果量である。実際の大学院の過去問では、英語の問題として出されたこともある。効果の大きさを、標本サイズに依存しない形で表した指標である。平均差ならCohen’s d、関連ならr、分散分析ならη²である。
p値は標本サイズに引きずられる。だから、有意かどうかと、実質的に意味のある大きさかは別問題である。近年は、効果量と信頼区間の併記が推奨されている。
ベイズファクター
最後に、ベイズファクターである。実際の大学院の過去問でも、頻度論的な有意性検定と比較しながら説明させる出題がある。頻度論の検定は、帰無仮説を棄却するか否かの二択である。帰無仮説を、積極的に支持することができない。
ベイズファクターは、2つの仮説それぞれのもとでの、データの得られやすさの比を取る。だから、差がないことの証拠の強さも、数値で言える。この非対称性の解消が、比べて書くときの核になる。ただし、結果が、対立仮説側にどんな事前分布を置くかに左右される、という限界もある。
答案でやりがちな間違い
- 帰無仮説を棄却しないことを、差がないことの証明と書いてしまう → 言えるのは、差があるとは言えなかった、まで
- p値を、帰無仮説が正しい確率と書いてしまう → 正しくは、データ以上に極端な結果が得られる確率
- 検定力を上げる要因に、有意水準だけを挙げてしまう → 核になるのは、効果量とサンプルサイズ。有意水準は、添える形にする
4限目②のまとめ
まとめる。母集団は1つに決まっている。サンプルは取るたびに変わる。だから、標本分布、点推定、区間推定、標準誤差という考え方が要る。仮説検定は5つの手順である。棄却しない、は証明ではない。検定力の核は、効果量とサンプルサイズである。有意水準は、研究者が決める線である。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 推測統計 ― 母集団は1つ、サンプルは取るたびに変わる。だから標本分布・点推定と区間推定・標準誤差・不偏性という考え方が要る
- 仮説検定 ― 5つの手順で進む。棄却しない、は「差がないと証明された」ではなく「差があるとは言えなかった」まで
- 検定力 ― 核になるのは効果量とサンプルサイズ。有意水準は研究者が決める線として添える
4限目②の課題:頻出語の200字と、論述800字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(12語)を、1語ずつ200字で説明してください。「定義 → 誤解しやすい点、または規定する要因 → 似た語との違い」の順で書くと、200字になります。
課題2 論述(800字)
p値とは何かを説明し、統計的仮説検定における2種類の誤りと、検定力を規定する要因について論じなさい。
段落は3つで書けます。p値の定義と注意点、2種類の誤り、そして検定力を規定する要因の順です。
書いたら「できた!」を押す。頻出語の200字と、論述の模範解答は、学生証(無料登録)で読めます。
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できたら、押してください。この端末に記録され、時間割に反映されます。
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大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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