院試塾 9限目②。知能と査定です。知能検査の歴史とIQを、院試で問われる形に整理します。9限目の2本目です。この動画では、ビネーとシモンの最初の知能検査、精神年齢と生活年齢、シュテルンとターマンと知能指数(IQ)、偏差知能指数(DIQ)の式、比IQと偏差IQの取り違えを整理します。
動画② 知能検査の歴史とIQ
この動画で覚える 10 語
語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。
動画② 知能と査定② 知能検査の歴史とIQ(10語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。9限目は、知能と査定である。3本に分け、この回は2本目の、知能検査の歴史とIQである。1本目では、知能の理論を、人名と学説の組で整理した。この回は、知能を、どうやって数で表すようになったのか、その流れを追う。
院試では、知能指数と、偏差知能指数の式が、選択肢や、計算の形で出ている。2つの式は、そのまま書けるようにする。人名では、ビネー、シュテルン、ターマンの3人を、取り違えないことが大事である。
最初の知能検査(ビネーとシモン)
知能を、どうやって測り、どう数で表すか。その工夫は、順に積み重なってきた。最初の知能検査を作ったのは、フランスのビネー(Binet)である。協力者のシモン(Simon)と一緒に作った。ビネーとシモンの名前は、穴埋めや、ビネー式とウェクスラー式を比べる論述の中で、くり返し出ている。


検査を作った目的は、学校の授業についていけない子どもを、見分けることであった。怠けているのではなく、特別な教育が必要な子どもを、客観的な手順で見分けるためである。
年齢尺度と精神年齢
ビネーの検査は、のちに、年齢尺度の形になる。ふつうの子どもが、何歳ぐらいで正答できるかを調べておき、問題を、年齢ごとに並べたものである。
そして、どの年齢の問題まで通過できたかで、成績を表す。これが、精神年齢である。たとえば、生活年齢が8歳の子が、9歳の問題まで通過できたなら、精神年齢は9歳である(例は、この塾で作った数値)。
ここで、2つの年齢を区別する。この2つが、次の、知能指数の式に入る。
- 精神年齢(MA)。知能年齢とも言う。どの年齢の問題まで通過できたかで表す
- 生活年齢(CA)。実際の年齢である。暦年齢とも言う
IQまでの3人(ビネー・シュテルン・ターマン)
知能指数、IQまでの流れには、3人が出てくる。院試では、IQを導入したのは誰か、という形で問われたことがある。答えは、ビネーではない。ここが、取り違えやすいところである。
- ビネー(Binet)。フランス。年齢尺度と、精神年齢までを作った。知能指数は、まだ使っていない
- シュテルン(Stern)。ドイツ。知能の程度を、精神年齢と、生活年齢の比で表そう、と提案した。これが、知能指数の考え方である
- ターマン(Terman)。アメリカ。ビネーの検査を、アメリカで改訂して、スタンフォード・ビネーを作った。そして、シュテルンの提案に従って、知能指数を採用し、広めた

提案したのはシュテルン、採用して広めたのはターマンである。
知能指数の式
知能指数(IQ)の式は、精神年齢を、生活年齢で割って、100をかける。英字で書けば、MA割るCA、かける100である。
IQ = 精神年齢(MA)÷ 生活年齢(CA)× 100
この式は、そのまま問われる。式の正しさを選ぶ形でも、数字を入れて計算させる形でも、出ている。数値の例で確かめる(例は、この塾で作った数値)。
- 精神年齢が10歳、生活年齢も10歳なら、10÷10×100で、100
- 精神年齢が12歳、生活年齢が10歳なら、12÷10×100で、120
- 精神年齢が6歳、生活年齢が5歳なら、6÷5×100で、これも120
年齢が違っても、比が同じなら、同じ値になる。これが、比で表す、ということである。そのため、この知能指数は、比IQとも呼ばれる。分母は生活年齢、分子は精神年齢である。逆にしない。
偏差知能指数(DIQ)
比IQには、弱点があった。生活年齢が上がると、分母は大きくなり続ける。ところが、精神年齢は、年齢とともに、まっすぐには伸びない。そのため、年齢が高くなると、比IQの値は、あてにならなくなる。
そこで使われるようになったのが、偏差知能指数である。偏差IQ、DIQとも言う。同じ年齢集団の平均から、どれだけずれているかで表す。
式は、個人の得点から、同じ年齢集団の平均を引き、標準偏差で割る。それに15をかけて、100を足す。ウェクスラー式では、平均が100、標準偏差が15になるように、そろえる式である。この式も、そのまま問われる。
DIQ = 15 ×(個人の得点 − 同じ年齢集団の平均)÷ 標準偏差 + 100
比IQと偏差IQ
ここで、取り違えの罠を、1つ確認する。比IQと、偏差IQである。近年の入試でも、2つの式を並べて、正しいかどうかを選ばせる形で出ている。
- 比IQ。式は、精神年齢÷生活年齢×100。スタンフォード・ビネーで採用された、ビネー式の知能指数である
- 偏差IQ(DIQ)。式は、個人の得点から平均を引き、標準偏差で割って、15をかけ、100を足す。ウェクスラー式の検査は、この偏差IQを使う。スタンフォード・ビネーも、のちの改訂で、比IQをやめて、偏差IQに切り替えた
比IQは、年齢の割り算。偏差IQは、同じ年齢集団の中での、平均からのずれ。答案用紙に書くときは、式と、どの検査で使われたかを、組で書く。
ビネー式からウェクスラー式へ
ビネーとシモンの検査は、すぐに各国で紹介された。そして、それぞれの国に合わせて、作り直された。流れを整理する。
- ビネーとシモン(フランス) = 最初の知能検査。年齢尺度・精神年齢
- ターマン(アメリカ) = スタンフォード・ビネー。IQを採用(比IQ)
- 田中寛一(日本) = 田中ビネー知能検査。日本版のビネー式
- ウェクスラー(アメリカ) = ウェクスラー式。偏差IQ(9限目③で扱う)

日本では、田中寛一が、田中ビネー知能検査を作った。日本で標準化された、ビネー式の検査である。短く、田中ビネーと呼ばれる。
そして、成人にも使える検査として、アメリカのウェクスラーが、偏差IQを使う、ウェクスラー式の検査を作る。ウェクスラー式は、次の回で、くわしく扱う。
答案でやりがちな間違い
- 知能指数を考えたのは、ビネーだと書いてしまう。提案したのは、シュテルンである。採用して広めたのは、ターマンである
- 精神年齢と、生活年齢を、式の上で逆にしてしまう。精神年齢÷生活年齢×100である
- 比IQと、偏差IQの式を、入れ替えてしまう。比IQは、年齢の比である。偏差IQは、同じ年齢集団の平均からの、ずれである
9限目②のまとめ
まとめる。ビネーとシモンが、最初の知能検査を作った。年齢尺度の形で、成績を、精神年齢で表す。知能指数は、シュテルンが提案し、ターマンが、スタンフォード・ビネーで採用した。式は、精神年齢÷生活年齢×100である。偏差知能指数は、同じ年齢集団の平均からの、ずれで表す。式は、個人の得点から平均を引き、標準偏差で割って、15をかけ、100を足す。
次の回は、9限目の3本目、ウェクスラー式と、その他の検査である。ビネー式とウェクスラー式の違いを、比べて整理する。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 人名の組 ― 最初の知能検査はビネー(Binet)とシモン(Simon)。年齢尺度と精神年齢。知能指数を提案したのはシュテルン(Stern)、スタンフォード・ビネーで採用して広めたのはターマン(Terman)。「IQを考えたのはビネー」と書かない
- 2つの式 ― IQ=精神年齢(MA)÷生活年齢(CA)×100(比IQ)。DIQ=15×(個人の得点−同じ年齢集団の平均)÷標準偏差+100(偏差IQ)。式の正誤を選ぶ形と、数字を入れて計算する形で出る。分母と分子を逆にしない
- 取り違えやすいもの ― 比IQは年齢の比で、スタンフォード・ビネーで採用された。偏差IQは同じ年齢集団の平均からのずれで、ウェクスラー式で使う(スタンフォード・ビネーも、のちに切り替えた)。日本版のビネー式は田中ビネー
9限目②の課題:頻出語の200字と、論述800字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(10語)を、1語ずつ200字で説明してください。「定義・作った人・式・似た語との違い」を入れると、200字になります。
課題2 論述(800字)
知能指数(IQ)と偏差知能指数(DIQ)の違いを、ビネー式とウェクスラー式の知能検査の成り立ちにふれて論じなさい。それぞれの式と、数値の例を1つ示すこと。
段落は3つで書けます。1つめは、ビネー式の成り立ちと、知能指数の式。2つめは、知能指数の弱点と、偏差知能指数の式。3つめは、ウェクスラー式と、2つの指数の違いの順です。
新・心理学の基礎知識
中島義明・繁桝算男・箱田裕司 編/有斐閣ブックス(2005年)
この回の、知能を数で表す方法の移り変わりを、論述の形で確かめられる1冊です。心理学の全領域を、1つの問いと、その答えになる解説の小項目で整理した基礎知識集です。知能検査の歴史を扱う項目があり、ビネーとシモンの最初の知能検査、精神年齢、シュテルンによる知能指数の提案と式、ターマンのスタンフォード・ビネーでの採用、そして同じ年齢集団の中での位置で表す偏差IQへの流れが、まとまっています。知能検査の結果の表し方を、歴史をふまえて述べる問いと、その答えの形になっているので、この回の課題2の論述を書く前に読むと、段落の流れをつかみやすくなります。院試の範囲をほぼ覆う本なので、ほかの限目の復習にも使えます。
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ビネー・シモン・田中寛一の肖像:パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
シュテルン:Psychoanalysts including Freud(1909年、Wellcome Collection)から切り抜き・円形に加工・CC BY 4.0(Wikimedia Commons)
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Psychoanalysts_including_Freud._Photograph._Wellcome_V0027600.jpg
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
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