院試塾 7限目②。精神分析 発達論です。青年期から老年期までの生涯の発達を、エリクソンの理論で整理します。7限目の2本目です。この動画では、エリクソンの漸成的発達理論と8つの段階、心理社会的危機、基本的信頼、アイデンティティ、同一性拡散とモラトリアム、アイデンティティの4つの地位、成人期と老年期、発達課題(ハヴィガースト)との違いを扱います。
動画② エリクソン
この動画で覚える 11 語
語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。
動画② 精神分析 発達論② エリクソン(11語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。7限目の2本目は、エリクソンである。1本目では、乳幼児期を、フロイト、マーラー、ボウルビィの3つの目で見た。この回は、その先、青年期から老年期までの、生涯の発達を見る。エリクソンは、論述、用語説明、穴埋めの、どれでも定番である。近年は、心理社会的危機と、語句を指定した論述が出ている。人名と学説を、組にして答えさせる形も、この回に出てくる。
エリクソンは、フロイトを広げた
エリクソンは、フロイトの発達論を、発展させた。
フロイトが見たのは、性的な欲動の移り変わりであった。エリクソンは、心理や社会の面を、強調した。そして、青年期までで終わらず、老年期まで、人生全体を見た。これを、ライフサイクル、人生周期と呼ぶ。
小さい子どもの段階は、フロイトの段階にもとづいて、書かれている。フロイトを土台にして、広げたのである。
漸成的発達理論と8つの段階
エリクソンの理論を、漸成的発達理論と呼ぶ。人生を、8つの段階に分ける。段階は順に進み、前の段階の上に、次の段階が築かれる。この積み重なりが、漸成である。各段階には、プラスの力と、マイナスの力が、対になっている。段階は、次のとおりである。
- 第1段階 乳児期。基本的信頼、対、不信。基本的信頼とは、養育者に、いつも同じように世話をしてもらう中で育つ、人は頼れる、という安心感である。不信は、その反対で、頼れない、という感覚である
- 第2段階 幼児前期。自律性、対、恥と疑惑。自律性とは、自分で自分をコントロールできる、という感覚である。トイレットトレーニングなど、外からのしつけを、自分の中に取り入れて、身につける。うまくいかないと、恥と疑惑の感情が残る。恥と疑惑とは、自分で自分をコントロールし、自分の意志で決める、その力について、恥ずかしさと、疑いを感じることである
- 第3段階 幼児後期。自発性、対、罪悪感。自発性とは、自分から進んで、何かを計画し、やってみようとする力である。うまくいかず、規範をはみ出た行動をすると、罪悪感が生じる
- 第4段階 学童期。勤勉性、対、劣等感。勤勉性とは、学校での活動を通して身につける、こつこつ取り組む力である。うまくいかないと、自分には能力がない、という劣等感が生まれる
- 第5段階 青年期。同一性、対、同一性拡散。同一性とは、自分は、時間がたっても連続した、独自の存在だ、という感覚である。アイデンティティとも呼ぶ。同一性拡散は、その確立に失敗した状態である。この段階は、あとで詳しく扱う
- 第6段階 成人前期。親密性、対、孤立。親密性とは、配偶者など、親しい人との関係の中で経験する、親密さである。それができないと、孤立に陥る
- 第7段階 成人期。生殖性、対、停滞。生殖性とは、次の世代を育てることである。うまくいかないと、関心が自分のことだけに向き、停滞する
- 第8段階 老年期。統合、対、絶望。統合とは、人生を振り返り、受け入れて、まとめあげることである。それができないと、絶望が残る
段階の順序と、第1が乳児期、第5が青年期、第8が老年期であることを、押さえる。
心理社会的危機
この、各段階の分かれ道を、心理社会的危機と呼ぶ。
危機といっても、悪い状態ではない。プラスの力が、マイナスの力を、相対的に上回ればよい。全か無か、ではない。エリクソンの理論を、一直線に進むだけの段階理論と書くのは、誤りである。
危機を解決すると、基本的な強さ、徳が得られる、とされる。青年期の徳は、忠誠である。
なお、ハヴィガーストの発達課題とは、別の概念である。あとで、並べる。
基本的信頼
乳児期の、基本的信頼を見る。フロイトの口唇期に、当たる時期である。
母親を中心とする養育者から、世話を受ける中で、基本的信頼が育つ。これは、健康な人格の、基礎になる。うまくいかないと、不信の感覚が残る。そして、この信頼が、同一性の感覚の、土台にもなる。
アイデンティティ
アイデンティティ、自我同一性は、エリクソンの理論の、中心である。青年期の、中心課題である。自分は、時間がたっても連続した、独自の存在だ、という感覚である。
辞典では、2つの面で説明される。自分に対する、一貫性。そして、他者と本質を共有している、斉一性である。まわりの人たちと、大事なところを分かち合っている、という感覚のことである。
確立だけでなく、拡散との対で、見る。また、同一性の確立は、青年期だけの課題ではない。生涯を通じた過程でもある。
同一性拡散とモラトリアム
青年期の危機を、2つの言葉で整理する。
- 同一性拡散は、同一性の確立の失敗である。自分が何者か分からなくなる、自己喪失の状態である。ただし、多くの青年が、一過性に経験する。病気とは限らない
- モラトリアムは、もとは、支払いの猶予期間を意味する言葉である。エリクソンは、これを、青年期の準備期間の意味で使った。大人としての責任を、一時的に猶予されている期間である。心理社会的猶予期間とも言う
この期間に、さまざまな役割を試しながら、同一性を探す。選択を避けたり、時間の見通しが持てなくなったりする形で、現れることもある。
アイデンティティの4つの地位(アイデンティティ・ステイタス)
アイデンティティの状態を、分類した研究者がいる。マーシャである。マーシャは、2つの観点から、同一性の状態を見た。1つは、危機を経験したかどうか。もう1つは、社会や職業への関与、つまり傾倒の度合いである。この組み合わせで、同一性地位、アイデンティティ・ステイタスを、4つに分ける。
- 同一性達成。危機を経験し、いま、自分の選んだ生き方に傾倒している状態
- モラトリアム。マーシャの地位の1つとしても使われる。いま、危機のさなかで、傾倒するものを模索している状態
- 早期完了。危機を経験しないまま、親の価値観などに傾倒している状態
- 同一性拡散。傾倒するものを持たず、自分の生き方が分からない状態。危機を経験したあとの場合も、未経験の場合もある
アイデンティティの論述の型
語句を指定する論述の問題が、出ている。
ありがちな答案は、アイデンティティは、自分らしさのこと、青年期に大事、で終わる。点が取れる答案は、次の順で書く。
- 定義。自分が、連続した、独自の存在だという感覚
- 確立と、拡散の対
- モラトリアム。大人の責任を猶予された期間に、役割を試す
- 生涯を通じた過程でもある、と書き添える
成人期の生殖性(世代性)と老年期の統合対絶望
成人期の、生殖性は、世代性とも言う。ここで身につく力は、世話である。老年期は、ライフサイクルの、最後の段階である。
近年の出題では、生殖性、対、停滞に当たる時期を、穴埋めで答えさせている。老年期の危機は、統合対絶望である。
段階と危機の対応
段階と危機の対応を、穴埋めの形で、確かめる。
- 乳児期 = 基本的信頼、対、不信
- 青年期 = 同一性、対、同一性拡散
- 成人期 = 生殖性、対、停滞
- 老年期 = 統合、対、絶望
人名と学説の対応(ハヴィガースト・エリクソン・フロイト)
人名と学説の組を、確認する。近年の入試では、3人の名前を、概念に結びつける、穴埋めが出ている。
- ハヴィガースト = 発達課題。段階ごとに、達成すべき課題を考えた
- エリクソン = 心理社会的危機。プラスとマイナスの、力の釣り合いで考えた
- フロイト = リビドーの焦点の移行。性的なエネルギーが向かう場所が、移っていく
声に出して、組で覚える。
答案でやりがちな間違い
- 心理社会的危機を、ハヴィガーストの言葉として書いてしまう。心理社会的危機はエリクソン、発達課題はハヴィガーストである
- 同一性拡散を、病気だと書いてしまう。多くの青年が、一過性に経験する状態である
- エリクソンを、取り違えてしまう。この回のエリクソンは、発達論の、エリク・エリクソンである。催眠療法の、ミルトン・エリクソンとは、別人である
7限目②のまとめ
まとめる。エリクソンは、フロイトを広げて、人生を8つの段階で、描いた。各段階の分かれ道が、心理社会的危機である。青年期の中心は、アイデンティティである。確立と拡散の対で見て、モラトリアムにも触れる。成人期は、生殖性、対、停滞。老年期は、統合、対、絶望である。
これで、精神分析の発達論は、終わりである。次の回は、8限目で、人間性心理学に進む。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 漸成的発達理論と心理社会的危機 ― 人生を8つの段階に分け、前の段階の上に次の段階が築かれる。各段階の分かれ道が心理社会的危機。プラスがマイナスを相対的に上回ればよく、一直線に進むだけの段階理論と書かない
- 青年期はアイデンティティ ― 連続した独自の存在だという感覚。確立と拡散の対で書き、モラトリアム(大人の責任を猶予された期間で役割を試す)に触れ、生涯を通じた過程でもあると書き添える
- 段階と危機・人名の対応 ― 乳児期=基本的信頼対不信、青年期=同一性対同一性拡散、成人期=生殖性対停滞、老年期=統合対絶望。心理社会的危機はエリクソン、発達課題はハヴィガースト、フロイトはリビドーの焦点の移行
7限目②の課題:頻出語の200字と、論述800字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(11語)を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義・しくみ・日常の例・似た語との違い」を入れると、200字になります。
課題2 論述(800字)
エリクソンの漸成的発達理論について、8つの段階と心理社会的危機のうち少なくとも3つを挙げて説明し、青年期のアイデンティティの確立と拡散、モラトリアムにも触れて論じなさい。日常の場面の例を1つ用いること。
段落は3つで書けます。1つめは、漸成と、段階と危機。2つめは、青年期の、アイデンティティとモラトリアム。3つめは、老年期までの、生涯の過程の順です。
よくわかる臨床心理学[改訂新版]
下山晴彦 編/ミネルヴァ書房(改訂新版 2009年)
この回で扱ったエリクソンの発達図式を、同じ1冊の中で引ける入門書です。生涯発達の項目に、8つの発達段階、プラスの力とマイナスの力、各段階が次の段階の上に築かれるという漸成の考え方が図つきで出てきます。青年期の項目にはモラトリアムとアイデンティティの確立と拡散、老年期の項目には統合対絶望も載っています。見開き2ページで1つの項目なので、気になった語だけを、辞書のように読めます。なお、臨床心理学の全体を1冊で見渡す入門書なので、エリクソンだけを深く掘り下げる本ではありません。マーシャの4つの地位は、本文では確認できていません。その部分は、この動画とテキストで補ってください。
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