精神分析 パーソナリティ論② 防衛機制|院試塾 5限目②

← 院試塾の時間割(入口)へ独学で目指せる臨床心理系大学院|いまは 5限目② です。はじめての方は、まず時間割のページからどうぞ。

院試塾 5限目②。精神分析のパーソナリティ論、2本目です。不安から自分を守る防衛機制を、対にして、日常の例つきで整理します。5限目の2本目です。この動画では、防衛機制とは何か、『自我と防衛機制』、抑圧と否認、投影と同一化、反動形成・知性化・合理化、置き換えと昇華、退行、防衛の4つの水準を扱います。

目次

動画② 防衛機制

5限目②の頻出語マップ

この動画で覚える 11 語

語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、直近の入試でも出題が続いている語。

動画② 精神分析 パーソナリティ論② 防衛機制(11語)

テキスト

この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。5限目の2本目は防衛機制である。院試では用語説明の定番で、防衛機制そのものを問う形と、抑圧や投影など1つずつを問う形がある。数が多いので、似たものを対にして、1つずつに日常の例をつけて整理する。定義と例の2つがそろえば、200字が書ける。

防衛機制とは何か

防衛機制(defense mechanism)の定義は、不安や葛藤から自分を守り、心の安定を保つために、自我が無意識のうちに用いる、さまざまな方法である。大事な点が3つある。

  1. 使っているのは自我である。1本目で扱った、調整する役である
  2. 無意識のうちに使われる。わざとごまかしているのではない
  3. 防衛機制そのものは、病的なものではない。誰もが毎日使っており、心の健康を保つために必要な働きである

問題になるのは、同じ防衛ばかりを、かたくなに使い続ける場合である。そのとき、症状や、生きづらさにつながる。

『自我と防衛機制』 防衛という考えの整理

防衛という考えを最初に示したのは、フロイトである。はじめは、防衛と抑圧を、ほとんど同じ意味で使っていた。その後、1926年の『制止、症状、不安』で整理しなおし、抑圧は、いくつもある防衛の1つだと位置づけた。

これを引き継いで、体系にまとめたのが、娘のアンナ・フロイトである。1936年の『自我と防衛機制』である(『自我と防衛』という訳もある)。アンナ・フロイトは、防衛を、健康な自我の働きとしてもとらえた。この見方は、のちの自我心理学につながっていく。

答案で防衛機制を論じるときは、フロイトの考えを、娘のアンナ・フロイトが体系にまとめた、という流れに触れると書きやすい。

防衛が症状になるとき

防衛機制が働くしくみを、順に見る。

  1. 受け入れがたい気持ちが生じる。怒り、ねたみ、性的な欲求などである。そのままでは不安になる
  2. 防衛が働く
  3. いったん楽になる
  4. けれども、気持ちそのものが消えたわけではない。意識から遠ざけられただけである
  5. だから、形を変えて戻ってくる。そして、また同じ防衛を使う

このくり返しが固定すると、症状や、性格のかたさになる。防衛は、気持ちを消すのではなく、意識から遠ざけるだけだからである。

フロイトは、症状を、妥協形成と考えた。満たされたい欲求と、それを押さえる防衛。この2つの折り合いとして、症状があらわれる、という見方である。精神分析的な心理療法は、このしくみに、本人が気づいていくことを助ける。

抑圧と否認

1つめの対は、抑圧と否認である。

抑圧は、防衛機制のなかで、もっとも基本となるものの1つである。受け入れがたい欲求や記憶を、意識から締め出して、無意識にとどめておく働きである。たとえば、とてもつらかった出来事を、どうしても思い出せない。これが抑圧である。

似た言葉に抑制がある。抑制は、分かったうえで、意識してがまんすることである。抑圧は、無意識に起こる。この区別が大切である。

否認は、外側のつらい現実を、現実として認めない働きである。たとえば、重い病気だと告げられても、聞かなかったかのようにふるまう。これが否認である。

抑圧は、自分の内側にあるものに向けられる。否認は、外側の現実に向けられる。これが2つの違いである。

投影(投射)と同一化(同一視)

2つめの対は、投影と同一化である。向きが、逆になっている。

投影(投射とも訳される)は、自分の中にある認めがたい気持ちを、相手のものとみなす働きである。たとえば、自分が相手を嫌っている。けれども、それを認めるのはつらい。そこで、あの人が私を嫌っている、と感じる。内にあるものを、外へ押し出す働きである。なお、3限目の投影法の「投影」は、ここでの投影より広い意味で使われている。

同一化(同一視とも訳される)は、相手の特徴を、自分のものとして取り入れる働きである。たとえば、あこがれの先輩と、いつのまにか同じ話し方になっている。外にあるものを、内へ取り入れる働きである。

同一化は、子どもが親をモデルに育っていくときにも働く。発達にとって、欠かせない働きである。アンナ・フロイトは、攻撃者への同一化を挙げた。こわい相手と同じようにふるまうことで、不安を乗りこえようとする働きである。

気持ちと距離をとる5つの防衛

気持ちと距離をとる防衛を、5つまとめて整理する。

反動形成

反動形成は、本心と正反対の態度を、強く示す働きである。例は、苦手な相手に、ていねいすぎるほど親切にすること。見分ける手がかりは、不自然な強さである。やりすぎている、と感じるとき、その裏に反対の気持ちがある。

打ち消し

打ち消し(取り消しとも呼ばれる)は、罪悪感のある行為を、別の行為で帳消しにしようとする働きである。例は、きつく叱ったあとで、急にやさしくすること。

隔離

隔離は、出来事から、感情だけを切り離す働きである。つらい体験を、他人事のように淡々と話す。出来事は覚えているが、感情だけがない。

知性化

知性化は、感情を、知識や理屈に置きかえて扱う働きである。例は、病気の不安を、医学書を調べつくすことで扱うこと。

合理化

合理化は、もっともらしい理由をつけたり、責任をほかに押しつけたりして、自分を正当化する働きである。イソップ物語の、酸っぱいブドウが有名である。手の届かないブドウを、どうせ酸っぱい、と言ってあきらめる。

知性化と合理化は、混同しやすい対である。知性化は、感情から離れるために、知的に考える。合理化は、自分の行動を正当化するために、理由をつける。

置き換えと昇華 欲求の向け先を変える

欲求の向け先を変える防衛が、2つある。たとえば、上司に理不尽に叱られて、怒りを感じたとする。そのまま上司に怒鳴り返せば、立場が危うくなる。

置き換えは、受け入れがたい気持ちを、より安全な別の相手や、別のもので満たす働きである。代理満足とも言う。上司への怒りを、家で家族に向けてしまう。八つ当たりが、これに当たる。

昇華は、欲求を、社会的に価値のある形に変えて満たす働きである。悔しさを、仕事の成果に変える。攻撃的な衝動を、スポーツに向ける。これが昇華である。

昇華は、もっとも成熟した防衛の1つとされる。欲求を押さえこむのではなく、形を変えて満たしているので、無理がない。しかも、まわりからも認められる。

退行

退行は、いまの発達段階より前の、幼い段階に戻ることである。よく挙げられる例は、赤ちゃん返りである。弟や妹が生まれた子どもが、指しゃぶりを始めたり、おねしょをしたりする。おとなにも起こる。重い病気で入院すると、人に頼りたくなり、わがままになることがある。

退行は、悪いものとは限らない。眠ること、遊ぶこと、お酒の席ではめを外すこと。これらも、一時的な退行である。自我がコントロールしている退行は、心の回復に役立つ。これを、クリスは、自我のための退行と呼んだ。創造的な活動にも、この働きが関わっているとされる。

心理療法の中でも、退行は起こる。治療者との関係の中で、幼いころの気持ちが、よみがえってくるからである。

防衛の4つの水準(ヴァイラント)

防衛機制は、成熟の度合いで、いくつかの水準に分けて整理される。よく知られているのが、ヴァイラントの4つの水準である。

  • 精神病性の防衛(いちばん下)。外の現実そのものを認めない形の、否認などが入る
  • 未熟な防衛。投影などが入る
  • 神経症的な防衛。抑圧を中心に、反動形成、知性化、置き換えなどが入る
  • 成熟した防衛(いちばん上)。昇華や、ユーモアが入る

ここで、2限目で扱ったカーンバーグの病態水準を思い出す。カーンバーグは、分裂を中心とする原始的な防衛と、抑圧を中心とする神経症的な防衛を、分けた。分裂は、相手や自分を、すべて良いか、すべて悪いかに分けてしまう働きである。神経症水準の人は、抑圧を中心とした防衛を使う。境界水準の人は、分裂などの原始的な防衛を、主に使う。否認も、カーンバーグの分け方では、分裂と同じ原始的な防衛の側に入る。

つまり、その人が、どの水準の防衛を主に使っているかが、見立ての大事な手がかりになる。防衛機制は、暗記する一覧ではない。人を理解するための、道具である。

答案でやりがちな間違い

  • 防衛機制を、病的なもの、悪いものと書いてしまう。誰もが使う、心の安定のための働きである。かたくなな使い方が問題になる
  • 抑圧と抑制を、同じものとして書いてしまう。抑圧は無意識に起こる。抑制は、意識してがまんすることである
  • 投影と同一化の向きを、逆に書いてしまう。投影は内から外へ。同一化は外から内へ、である

5限目②のまとめ

まとめる。防衛機制は、不安から自分を守るために、自我が無意識に使う方法である。人物は、アンナ・フロイトで、著作は『自我と防衛機制』である。1つずつは、対にして、例と一緒に整理する。抑圧と否認、投影と同一化、知性化と合理化である。そして、どの水準の防衛を主に使っているかが、その人の見立ての手がかりになる。これで、精神分析のパーソナリティ論の2本が終わった。

出典について

図は自作。例はすべて日常の場面の自作である。図は、前田重治『図説 精神分析を学ぶ』『図説 臨床精神分析学』(誠信書房)に着想を得ている。

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 防衛機制 ― 不安や葛藤から自分を守るために、自我が無意識に使う方法。病的なものではなく、誰もが使う。アンナ・フロイト『自我と防衛機制』
  2. 対にして整理する ― 抑圧(内側)と否認(外側の現実)/投影(内から外へ)と同一化(外から内へ)/知性化(感情から離れる)と合理化(行動を正当化する)
  3. 防衛の水準 ― ヴァイラントの4水準(精神病性・未熟・神経症的・成熟)。どの水準の防衛を主に使うかが、見立ての手がかりになる

5限目②の課題:頻出語の200字と、論述800字

動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(11語)を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義・働き・日常の例・似た防衛との違い」を入れると、200字になります。

課題2 論述(800字)
抑圧と否認、投影と同一化のうち1組を選び、両者の違いを論じなさい。それぞれの働きを説明し、日常の場面の例を用いること。

段落は3つで書けます。1つめの働き、2つめの働き、そして2つの違いの順です。

5限目の1冊|PR
『改訂 精神分析的人格理論の基礎』の表紙

改訂 精神分析的人格理論の基礎

馬場禮子 著/岩崎学術出版社(改訂版 2016年)

前の回(局所論と構造論)と、この回の防衛機制の土台になる1冊です。自我・エス・超自我と意識・前意識・無意識の関係から、防衛・適応機制の章まで、大学院の講義をもとにした話し言葉で順に読めます。精神分析の用語が「バラバラの断片」にならないよう、つながりを重ねて説明する作りです。なお、著者は自我心理学の立場で書いており、精神分析の学派を広く紹介する本ではありません。技法や治療の進め方を解説する本でもなく、扱うのは人格の理論です。

※ このリンクは広告(アフィリエイト)です。ここから購入されると、代金の一部が FromU の運営(この塾を無料で続ける費用)に充てられます。

できた!を押して、学生証へ

できたら、押してください。この端末に記録され、時間割に反映されます。

5限目②クリア、おめでとうございます。net.fromu.jp に無料登録すると、この課題の模範解答と章末クイズが開き、進み具合がアカウントに残ります。
学生証を作る(無料登録)
この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
▶ 院試塾 時間割▶ 学生証(無料登録) ※ 過去問の問題文そのものは各大学の著作物のため、扱っていません。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Lab.FromUのアバター Lab.FromU FromU 心理支援ラボ

FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

コメント

コメントする

目次