院試塾 5限目②。精神分析のパーソナリティ論、2本目です。不安から自分を守る防衛機制を、対にして、日常の例つきで整理します。5限目の2本目です。この動画では、防衛機制とは何か、『自我と防衛機制』、抑圧と否認、投影と同一化、反動形成・知性化・合理化、置き換えと昇華、退行、防衛の4つの水準を扱います。
動画② 防衛機制
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動画② 精神分析 パーソナリティ論② 防衛機制(11語)
テキスト
この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。5限目の2本目は防衛機制である。院試では用語説明の定番で、防衛機制そのものを問う形と、抑圧や投影など1つずつを問う形がある。数が多いので、似たものを対にして、1つずつに日常の例をつけて整理する。定義と例の2つがそろえば、200字が書ける。
防衛機制とは何か
防衛機制(defense mechanism)の定義は、不安や葛藤から自分を守り、心の安定を保つために、自我が無意識のうちに用いる、さまざまな方法である。大事な点が3つある。
- 使っているのは自我である。1本目で扱った、調整する役である
- 無意識のうちに使われる。わざとごまかしているのではない
- 防衛機制そのものは、病的なものではない。誰もが毎日使っており、心の健康を保つために必要な働きである
問題になるのは、同じ防衛ばかりを、かたくなに使い続ける場合である。そのとき、症状や、生きづらさにつながる。
『自我と防衛機制』 防衛という考えの整理
防衛という考えを最初に示したのは、フロイトである。はじめは、防衛と抑圧を、ほとんど同じ意味で使っていた。その後、1926年の『制止、症状、不安』で整理しなおし、抑圧は、いくつもある防衛の1つだと位置づけた。
これを引き継いで、体系にまとめたのが、娘のアンナ・フロイトである。1936年の『自我と防衛機制』である(『自我と防衛』という訳もある)。アンナ・フロイトは、防衛を、健康な自我の働きとしてもとらえた。この見方は、のちの自我心理学につながっていく。
答案で防衛機制を論じるときは、フロイトの考えを、娘のアンナ・フロイトが体系にまとめた、という流れに触れると書きやすい。
防衛が症状になるとき
防衛機制が働くしくみを、順に見る。
- 受け入れがたい気持ちが生じる。怒り、ねたみ、性的な欲求などである。そのままでは不安になる
- 防衛が働く
- いったん楽になる
- けれども、気持ちそのものが消えたわけではない。意識から遠ざけられただけである
- だから、形を変えて戻ってくる。そして、また同じ防衛を使う
このくり返しが固定すると、症状や、性格のかたさになる。防衛は、気持ちを消すのではなく、意識から遠ざけるだけだからである。
フロイトは、症状を、妥協形成と考えた。満たされたい欲求と、それを押さえる防衛。この2つの折り合いとして、症状があらわれる、という見方である。精神分析的な心理療法は、このしくみに、本人が気づいていくことを助ける。
抑圧と否認
1つめの対は、抑圧と否認である。
抑圧は、防衛機制のなかで、もっとも基本となるものの1つである。受け入れがたい欲求や記憶を、意識から締め出して、無意識にとどめておく働きである。たとえば、とてもつらかった出来事を、どうしても思い出せない。これが抑圧である。
似た言葉に抑制がある。抑制は、分かったうえで、意識してがまんすることである。抑圧は、無意識に起こる。この区別が大切である。
否認は、外側のつらい現実を、現実として認めない働きである。たとえば、重い病気だと告げられても、聞かなかったかのようにふるまう。これが否認である。
抑圧は、自分の内側にあるものに向けられる。否認は、外側の現実に向けられる。これが2つの違いである。
投影(投射)と同一化(同一視)
2つめの対は、投影と同一化である。向きが、逆になっている。
投影(投射とも訳される)は、自分の中にある認めがたい気持ちを、相手のものとみなす働きである。たとえば、自分が相手を嫌っている。けれども、それを認めるのはつらい。そこで、あの人が私を嫌っている、と感じる。内にあるものを、外へ押し出す働きである。なお、3限目の投影法の「投影」は、ここでの投影より広い意味で使われている。
同一化(同一視とも訳される)は、相手の特徴を、自分のものとして取り入れる働きである。たとえば、あこがれの先輩と、いつのまにか同じ話し方になっている。外にあるものを、内へ取り入れる働きである。
同一化は、子どもが親をモデルに育っていくときにも働く。発達にとって、欠かせない働きである。アンナ・フロイトは、攻撃者への同一化を挙げた。こわい相手と同じようにふるまうことで、不安を乗りこえようとする働きである。
気持ちと距離をとる5つの防衛
気持ちと距離をとる防衛を、5つまとめて整理する。
反動形成
反動形成は、本心と正反対の態度を、強く示す働きである。例は、苦手な相手に、ていねいすぎるほど親切にすること。見分ける手がかりは、不自然な強さである。やりすぎている、と感じるとき、その裏に反対の気持ちがある。
打ち消し
打ち消し(取り消しとも呼ばれる)は、罪悪感のある行為を、別の行為で帳消しにしようとする働きである。例は、きつく叱ったあとで、急にやさしくすること。
隔離
隔離は、出来事から、感情だけを切り離す働きである。つらい体験を、他人事のように淡々と話す。出来事は覚えているが、感情だけがない。
知性化
知性化は、感情を、知識や理屈に置きかえて扱う働きである。例は、病気の不安を、医学書を調べつくすことで扱うこと。
合理化
合理化は、もっともらしい理由をつけたり、責任をほかに押しつけたりして、自分を正当化する働きである。イソップ物語の、酸っぱいブドウが有名である。手の届かないブドウを、どうせ酸っぱい、と言ってあきらめる。
知性化と合理化は、混同しやすい対である。知性化は、感情から離れるために、知的に考える。合理化は、自分の行動を正当化するために、理由をつける。
置き換えと昇華 欲求の向け先を変える
欲求の向け先を変える防衛が、2つある。たとえば、上司に理不尽に叱られて、怒りを感じたとする。そのまま上司に怒鳴り返せば、立場が危うくなる。
置き換えは、受け入れがたい気持ちを、より安全な別の相手や、別のもので満たす働きである。代理満足とも言う。上司への怒りを、家で家族に向けてしまう。八つ当たりが、これに当たる。
昇華は、欲求を、社会的に価値のある形に変えて満たす働きである。悔しさを、仕事の成果に変える。攻撃的な衝動を、スポーツに向ける。これが昇華である。
昇華は、もっとも成熟した防衛の1つとされる。欲求を押さえこむのではなく、形を変えて満たしているので、無理がない。しかも、まわりからも認められる。
退行
退行は、いまの発達段階より前の、幼い段階に戻ることである。よく挙げられる例は、赤ちゃん返りである。弟や妹が生まれた子どもが、指しゃぶりを始めたり、おねしょをしたりする。おとなにも起こる。重い病気で入院すると、人に頼りたくなり、わがままになることがある。
退行は、悪いものとは限らない。眠ること、遊ぶこと、お酒の席ではめを外すこと。これらも、一時的な退行である。自我がコントロールしている退行は、心の回復に役立つ。これを、クリスは、自我のための退行と呼んだ。創造的な活動にも、この働きが関わっているとされる。
心理療法の中でも、退行は起こる。治療者との関係の中で、幼いころの気持ちが、よみがえってくるからである。
防衛の4つの水準(ヴァイラント)
防衛機制は、成熟の度合いで、いくつかの水準に分けて整理される。よく知られているのが、ヴァイラントの4つの水準である。
- 精神病性の防衛(いちばん下)。外の現実そのものを認めない形の、否認などが入る
- 未熟な防衛。投影などが入る
- 神経症的な防衛。抑圧を中心に、反動形成、知性化、置き換えなどが入る
- 成熟した防衛(いちばん上)。昇華や、ユーモアが入る
ここで、2限目で扱ったカーンバーグの病態水準を思い出す。カーンバーグは、分裂を中心とする原始的な防衛と、抑圧を中心とする神経症的な防衛を、分けた。分裂は、相手や自分を、すべて良いか、すべて悪いかに分けてしまう働きである。神経症水準の人は、抑圧を中心とした防衛を使う。境界水準の人は、分裂などの原始的な防衛を、主に使う。否認も、カーンバーグの分け方では、分裂と同じ原始的な防衛の側に入る。
つまり、その人が、どの水準の防衛を主に使っているかが、見立ての大事な手がかりになる。防衛機制は、暗記する一覧ではない。人を理解するための、道具である。
答案でやりがちな間違い
- 防衛機制を、病的なもの、悪いものと書いてしまう。誰もが使う、心の安定のための働きである。かたくなな使い方が問題になる
- 抑圧と抑制を、同じものとして書いてしまう。抑圧は無意識に起こる。抑制は、意識してがまんすることである
- 投影と同一化の向きを、逆に書いてしまう。投影は内から外へ。同一化は外から内へ、である
5限目②のまとめ
まとめる。防衛機制は、不安から自分を守るために、自我が無意識に使う方法である。人物は、アンナ・フロイトで、著作は『自我と防衛機制』である。1つずつは、対にして、例と一緒に整理する。抑圧と否認、投影と同一化、知性化と合理化である。そして、どの水準の防衛を主に使っているかが、その人の見立ての手がかりになる。これで、精神分析のパーソナリティ論の2本が終わった。
出典について
図は自作。例はすべて日常の場面の自作である。図は、前田重治『図説 精神分析を学ぶ』『図説 臨床精神分析学』(誠信書房)に着想を得ている。
院試ではこう問われる(この動画のまとめ)
- 防衛機制 ― 不安や葛藤から自分を守るために、自我が無意識に使う方法。病的なものではなく、誰もが使う。アンナ・フロイト『自我と防衛機制』
- 対にして整理する ― 抑圧(内側)と否認(外側の現実)/投影(内から外へ)と同一化(外から内へ)/知性化(感情から離れる)と合理化(行動を正当化する)
- 防衛の水準 ― ヴァイラントの4水準(精神病性・未熟・神経症的・成熟)。どの水準の防衛を主に使うかが、見立ての手がかりになる
5限目②の課題:頻出語の200字と、論述800字
動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。
課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(11語)を、1語ずつ200字で説明してください。「ひとことの定義・働き・日常の例・似た防衛との違い」を入れると、200字になります。
課題2 論述(800字)
抑圧と否認、投影と同一化のうち1組を選び、両者の違いを論じなさい。それぞれの働きを説明し、日常の場面の例を用いること。
段落は3つで書けます。1つめの働き、2つめの働き、そして2つの違いの順です。
できた!を押して、学生証へ
できたら、押してください。この端末に記録され、時間割に反映されます。
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大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
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