【心理系大学レポート公開シリーズvol.1】臨床心理学概論①~心理療法の成り立ち~(評価:A)
設題の確認
心理療法の成り立ちについて述べよ。
<ポイント>
心理療法誕生の歴史的背景についてまとめる。
また、心理療法の代表的な3つの潮流(精神分析・行動主義・人間性心理)それぞれの誕生の経緯についてまとめる。
レポート構成(序論)
本レポートでは、心理療法の成り立ちについて説明する。
第一節では臨床心理学の歴史的背景について、第二節では精神分析の誕生の経緯について、第三節では行動主義の誕生の経緯について、第四節では人間性心理学の誕生の経緯について述べる。
第一節:臨床心理学の歴史的背景(本論①)
古代では、人間の行動異常や逸脱行為は、悪霊や悪魔、動物などがとりついた者と考えられており、祈りや悪魔祓いの儀式によって、病気が治ると信じられていた。
こうした呪術的な概念を脱却し、初めて科学的に解釈したのが、古代ギリシャのヒポクラテスである。
ヒポクラテスは、すべての病気は4種類の体液のバランスが崩れることで生じるという体液病理説を提唱した。
また、当時は神の啓示によって起こる神聖病と考えられていた、てんかんも脳内の体液の異常によるものとした。
中世に入ると、ヨーロッパではキリスト教会の権威が非常に強くなり、精神障害者は悪魔にとりつかれたもの、という考えが広がり、差別的な扱いを受けるようになった。
特に15世紀頃にはヨーロッパ各地で魔女狩りが盛んにおこなわれ、多くの精神障害者が処刑されたといわれている。
魔女狩りが終息すると、ヨーロッパでは、のちの精神病院につながる施設が生まれ、1660年代から精神障害者の受け入れを始めたが、鎖や拘束衣で自由を奪われたりして、一生監禁された状態だったという。
1789年のフランス革命では、精神障害者に対する考え方にも影響を与え、フランスの精神科医ピネルは、監禁されている人々の鎖をはずし、精神障害者を人間として扱うことを提唱した。
19世紀になると、精神障害を自然科学的に解明しようとする動きが盛んになり、心理学の発生の起源はヨーロッパ文明、特に哲学的文脈から生まれたといわれている。
中でも、近代哲学のデカルトは、物質には精神が存在せず、心とは科学的に解明することができないとした心身二元論が、心理学の発展経過に影響を与えたという。
18 世紀後半から19世紀にかけて、フランスやオーストリアでは、精神病や異常行動は心が原因で身体症状が発生するという心因論が盛んになった。
一方、ドイツのグリージンガーは、ヒポクラテスによって説かれた精神病の身体論を取り上げた。
そして、彼の後継者であるクレペリンは、先人の業績や自身の臨床経験などを集大成し、精神医学提要をまとめた。
その後、19世紀末から臨床心理学が発展していき、アメリカ心理学者ジェームスが臨床心理学を育む原点を作ったといわれている。
また、1896 年に心理学者ウィットマーは、ペンシルベニア大学に世界最初の心理クリニックを開設した。
その後、臨床心理学の発展に貢献した一つが、精神分析学であったといわれている。
第二節:精神分析の誕生の経緯(本論②)
ウィーンの神経内科医フロイトは、1885年にフランスの神経学者シャルコーのもとに留学したことによって、ヒステリーの催眠療法に関心を持った。
フロイトは、患者に催眠下で過去の辛い出来事について語らせ症状の改善を試みる、カタルシス法について実践と研究を重ね、意識世界の背後に無意識世界があり、それがノイローゼ症状に大きく影響を及ぼしているとみなした。
そして、無意識を意識化する方法として、催眠浄化法(カタルシス)を提唱した。
その後、頭の中に浮かんでくることをそのまま言葉にして分析する自由連想法や、寝ている間にどんな夢をみたか内容を分析する夢分析という方法で、ノイローゼ症状の発生理由を探ろうとした。
そして、抑圧等の防衛機制の概念を提唱して、無意識の科学をうちたて、臨床心理学における心、人格についての画期的な体系を構築したといわれている。
第三節:行動主義の誕生の経緯(本論③)
一方、アメリカでは心理現象を内容分析の主眼におかず、心の働きを機能として理解しようとする機能心理学を背景に、ワトソンは1912年に行動主義を提唱した。
ワトソンは、ある行動が刺激の対呈示によって受動的に学習される、パブロフの古典的条件付けを行動異常に適応させて、行動療法をスタートした。
そして、スキナーのオペラント条件づけや、不安・恐怖を直接治療標的とするウォルピーの系統的脱感作法などによって発展した。
その後、認知心理学の発展にともない、認知的側面にも行動療法的にアプローチをしようする、認知行動療法が生まれた。
その主なものは、不合理な信念が心理的問題の原因とするエリスの論理情動行動療法や、認知の歪みを修正していくことが精神疾患の治療につながるベックの認知療法、他者の行動の観察学習および模倣に関するバンデューラの社会的学習理論ならびにモデリング療法がある。
第四節:人間性心理学の誕生の経緯(本論④)
1942年にアメリカの心理学者ロジャーズは、患者が思っていることを言葉に出し頭の中を整理し自ら解決の道を見出すという非指示的カウンセリングを提唱した。
1943年には、アメリカの心理学者マズローは、自分に価値がある事柄を実現により、人間的に成長し、自分の人生を意味あるものにしようとする自己実現論を提唱した。
そして、主体性・創造性・自己実現といった人間の肯定的側面を強調した人間性心理学を打ち立てた。
ヨーロッパでも第二次世界大戦の後、アメリカとはまた違った実存的人間性心理学の流れが形作られた。
そして、フロイトの弟子でスイス人のビンスワンガーとボスは、哲学者ハイデッガーの思想に深い影響を受け、精神医学の中で人間学的理念を強調する学派である現存在分析という流れを生んだ。
また、ユダヤ人精神科医のフランクルは、アドラーとフロイトの心理学をもとに、人が自らの生の意味を見出すことを援助し、心の病を癒す心理療法であるロゴセラピーを発展させた。
まとめ(結論)
本レポートでは、心理療法の成り立ちについて述べた。
第一節では臨床心理学の歴史的背景について、第二節では精神分析の誕生の経緯について、第三節では行動主義の誕生の経緯について、第四節では人間性心理の誕生の経緯について説明した。
※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。
例えば…
△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。
□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。
このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。
…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。
レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。
引用文献
・伊藤良子『いちばんはじめに読む心理学の本1 臨床心理学 全体的存在としての人間理解』ミネルヴァ書房2009年
・上島国利『やさしくわかる精神医学』ナツメ社2017年
・高塚雄介、他『臨床心理学~やさしく学ぶ~』医学出版社 2009年
・日本精神保健福祉士養成校協会『新・精神保健福祉士養成講座1(第2版)精神疾患とその治療』中央法規2016年
・野島一彦『臨床心理学への招待(第2版)』ミネルヴァ書房 2020年
教員からの評価とコメント
評価:A
コメント:古代から人間性心理までよく説明されている。
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