【心理系大学レポート公開シリーズvol.8】公認心理師の職責~心理師の業務と連携~(評価:A)
設題の確認
公認心理師法の業務と多職種連携および地域連携による支援について述べよ。
<ポイント>
心の健康の維持増進、心の健康に関する知識の普及、心理的アセスメント、相談、助言、指導、チームアプローチ
レポート構成(序論)
本レポートでは、公認心理師法の業務と多職種連携および地域連携による支援について述べる。第一節では公認心理師の業務について、第二節では多職種連携および地域連携の必要性について、第三節では各分野における連携について述べる。
第一節:公認心理師の業務(本論①)
公認心理師法の第2条(定義)によれば、公認心理師とは、「公認心理師登録簿への登録を受け、公認心理師の名称を用いて、保険医療、福祉、教育その他の分野において、心理学に関する専門的知識及び技術をもって、次に掲げる行為を行うことを業とする者」(1)と定められている。また、次に掲げる行為とは、「①心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析、②心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助、③心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助、④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供」(2)の4つである。
以下、①~④について、各概要を述べる。
「①心理に関する支援を要する者の心理状態の観察、その結果の分析」とは、面接や観察、各種の心理検査等を通して、要心理支援者の心理状態を幅広い方向から捉えることである。こういった心理アセスメントが、要心理支援者の支援や関係者への援助、多職種連携及び地域連携に大きく役立つことになるといわれている。
「②心理に関する支援を要する者に対する、その心理に関する相談及び助言、指導その他の援助」は、①の心理アセスメントを基に、様々な心理療法の中から適切な方法の選択、調整により、要支援者に合った心理支援を行うことである。
「③心理に関する支援を要する者の関係者に対する相談及び助言、指導その他の援助」は、①の心理アセスメントを基に、要支援者の家族や知人などの関係者への援助を行うことである。
「④心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供」は、公認心理師が地域の関係分野の多職種とともに、広く一般の国民に対して心の健康に関する教育や情報提供を行うことである。言い換れば、主に予防や心の健康のための啓発活動に該当する。
また、公認心理師法の第1条(目的)によると、公認心理師の目的は「国民の心の健康の保持増進に寄与すること」(3)としている。したがって、公認心理師の業務とは、国民の心の健康の維持増進に貢献するために、前述した①~④をおこなうことである。
第二節:多職種連携と地域連携の必要性(本論②)
公認心理師法の第42 条1項において、「公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない」(4)と定められており、連携を視野に入れることが法的に義務付けられている。
要心理支援者の様々な心理的な問題は、心理学的枠組みのみでは十分に理解できるものではなく、問題の要因は多次元にわたって生じている。そのため、単一の直線的な因果関係で捉えるのではなく、「生物―心理―社会モデル」という多元的な視点から情報を収集し、その問題の核心とのつながりや関係を見出し、理解しなければならない。
したがって、要心理支援者の治癒回復やこころの健康が保持増進されるためには、公認心理師と関係分野との連携が必要になってくる。
この連携には、「多職種連携」と「地域連携」がある。
多職種連携とは、様々な学問背景や経験を持つ専門家同士が目的と情報を共有し、互いに補完し合い有効な支援を提供することである。具体的には次節で述べる。
地域連携とは、地域における関連分野の機関や団体と協力して地域の援助支援を適切に提供することであり、具体的にはアウトリーチがあげられる。アウトリーチとは、支援者が対象者のもとへ出向いて支援することであり、訪問支援ともいう。これは、対象者が支援を必要としているにもかかわらず、自ら助けを求めることや、例えば、制度を申請することが難しい状況にある現実がある。そのため、予防的介入や早期介入を目的とし、受動的な姿勢ではなく、支援者側から積極的に支援していくことが求められている。
第三節:各分野における連携(本論③)
公認心理師法第2 条(定義)によると、活動の分野を「保健医療、福祉、教育その他」としているが、具体的には「保健医療、福祉、教育、司法・犯罪、産業・労働」が公認心理師の主な活躍の場となる。
保健医療分野における連携として、「チーム医療」がある。チーム医療とは、一人の患者に複数の医療専門職が連携して、治療やケアに当たることをいう。
例えば、統合失調症のケースの場合、医師は疾患の治療や投薬に関する医学的な観点から、看護師は体調管理や環境整備という観点から、作業療法士はリハビリテーションの観点から、精神保健福祉士は就労支援という観点から、そして、公認心理師は心理サポートの観点から援助アプローチをおこなっていく。
また、精神障害者の継続した地域生活を可能にするために考えられたACTという活動プログラムもあげることができる。これは、24時間対応を前提に、精神科医・精神科看護師・精神保健福祉士・ケアマネジャー・公認心理師などの多職種による協働チームが、退院をしてきた精神障害者のケアを行うものである。治療とリハビリテーションの両面を併せ持ち、生活の困難の発生や症状の再発、悪化を防ぐという主に三次予防的な意味を持つものである。
福祉分野における支援の対象では、児童、障害者、高齢者、生活困窮者、ひきこもり状態にある者、自立支援が必要な若者、DV 被害者等と幅広く、連携も多岐に渡る。
例えば、児童相談所の場合、児童心理司、児童福祉司、精神科医、保健師等と連携しながら、虐待などの養育相談や非行相談、養育相談、心身障害相談といった様々な相談業務を行い、時には児童精神科受診に同行したり、児童福祉施設職員との情報交換を行ったり、警察や学校などとの連携も行うなど外部組織と協力することも多い。
教育分野では、公認心理師がスクールカウンセラーとして、教職員や児童生徒の保護者・家族、スクールソーシャルワーカー、そして児童相談所や警察、医療機関等と連携して不登校やいじめ、非行といった課題の解決を図る必要がある。また、近年ではスクールカウンセラーはチーム学校の一員として教員の負担を減らし、教員が教科指導や生徒指導といった業務に集中して取り組めるようにする援助を行うことも期待されている。
司法・犯罪分野において公認心理師は、非行や罪を犯した者が司法手続きを受ける過程で受けるアセスメントや介入に携わり、問題発生のメカニズムを分析し、再発防止に役立てることが期待されている。一つの事例に対して同時並行的あるいは継続的に警察、裁判所、法務省、厚生労働省等の関係者や弁護士などの複数の機関と関わることが多いため、関係機関全体の動きを把握したうえで心理職として求められることを確実に実行することが必要である。
産業・労働分野において公認心理師は、事業者や職場の管理監督者、産業保健スタッフ等と連携して、ストレスケアの研修等を実施したり、環境改善や心理相談に取り組んだり、メンタルヘルスケアの企画立案を行ったりして、健康増進の活動や不調を抱えた社員の心理支援を行なっていく。また、地域産業保健センターや医療機関、EAP、心理相談機関などの事業外資源と連携し、職場復帰支援サービスを提供する場合もある
まとめ(結論)
本レポートでは、公認心理師法の業務と多職種連携および地域連携による支援について説明した。第一節では公認心理師の業務について、第二節では多職種連携および地域連携の必要性について、第三節では各分野における連携について述べた。
※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。
例えば…
△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。
□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。
このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。
…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。
レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。
引用文献
引用文献
(1)野島一彦・繁枡算男監修『公認心理師の職責』遠見書房 2018年 p173
(2)同 p173
(3)同 p172
(4)同 p177
参考文献
・一般財団法人日本心理研修センター監修「公認心理師現任者講習会テキスト改訂版」
金剛出版 2019年
・子安増生、他『公認心理師エッセンシャルズ』有斐閣 2018年
・下山晴彦、他『公認心理士のための【心理査定】講義』北大路書房 2021年
・野島一彦『公認心理士入門-知識と技術』日本評論社 2017年
・野島一彦『臨床心理学への招待(第2版)』ミネルヴァ書房 2020年
・野島一彦・繁枡算男監修『公認心理師の職責』遠見書房 2018年
教員からの評価とコメント
評価:A
コメント:設題に対してよくまとめられており、概ね適切に答えられている。一部設題の答えとして不十分な箇所があったので、気を付けるようにすると良い。
注意事項
本資料をコピペやそのまま提出なさらないようにお願いします。
あくまでも、レポートの構成や書き方などの参考用としてご活用ください。
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