【心理系大学レポート公開シリーズvol.2】臨床心理学概論②~心理療法の代表的な理論~(評価:A)

目次

設題の確認

心理療法の代表的な理論について述べよ。

<ポイント>

代表的な3つの心理療法(精神分析・行動療法および認知行動療法・クライエント中心療法)をとりあげ、それぞれの背景となる理論、人間のこころに対する考え方、適応となる対象者援助技法などをまとめる。

レポート構成(序論)

 本レポートでは、心理療法の代表的な理論ついて説明する。
第一節では精神分析について、第二節ではクライエント中心療法について、第三節では行動療法について、第四節では認知療法について述べる。

第一節:精神分析(本論①)

 精神分析とは、フロイトによって創始された治療法であり、抑圧と呼ばれる機制によって無意識の中に無理に抑え込まれた欲動を明らかにすることによって、症状を改善しようとする治療である。

 人の心には、意識・前意識・無意識という3つの心的領域を仮定し、特に無意識の領域が人の言動に大きな影響を与えるとしている。そして、性欲動や攻撃衝動などの基本的な欲動(エス)、欲動をコントロールしていし現実に適応していく自我、両親のような形で理想的な指針を提示する超自我の精神構造を考えた仮定した。

 適応となる対象は、神経症など心因性精神疾患に分類される精神障害者である。

 援助技法としては、患者が頭の中に浮かんでくることをそのまま言葉にして分析する自由連想法を用いて、外からの刺激に対して、自分の心を守ろうとする防衛機制を明らかにするとともに、その背後に隠れている無意識の欲動や葛藤について患者が洞察していくのを手助けする。自由連想法では、治療者は患者の全ての言葉に等しく注意を向けて、自分の価値観を患者に押し付けることがないように中立性を維持しながらおこなうようにする。

第二節:クライエント中心療法(本論②)

 クライエント中心療法は、アメリカのロジャーズによって創始された精神療法であり、治療者が介入することを極力避けながら、クライエントの主体性と能力を尊重して、患者の話を傾聴することによって、内在している成長する力を開放する治療である。

 ロジャーズは、クライエントが自分自身にどのように見えてくるかを理解させることができるならば、あとはクライエントがひとりでやっていくことができる、という考え方を主張した。

 この療法は、治療だけでなく、教育場面や職場の人間関係にも応用されている。

 援助技法としては、指示・批判・説得といった技術を排除した非指示的カウンセリングと、傾聴が重要である。
クライエント中心療法における治療者の基本的態度である、無条件の肯定的関心・共感的理解・自己一致(真実性・真実性)も重要である。無条件の肯定的関心とは、クライエントを一人の人間として認め、無条件に肯定的な気持ちをもって接することである。共感的理解とは、クライエントの立場に立って、その気持ちをできるだけ正確に理解しようと努めることである。自己一致とは、クライエントに向かった時の自分自身の内面的感情を理解し、そのまま表現することである。治療者にこれら3つの条件が備わった上に、クライエントの感情に敏感に反応する、感情の反射という技法を用いることで、クライエントは自ら人間的な成長に向かっていくといわれている。

第三節:行動療法(本論③)

 行動療法ということで、臨床に応用しようとした初期の人物は、ドイツの心理学者アイゼンクであり、人間の行動は全て学習であるという学習理論でとらえ、行動分析の上、環境への反応の仕方を調整するレスポンダント条件付けと、環境に働きかける行動を調整するオペラント条件付けに分けて、前者は行動の消去、後者は行動の強化を目的とした治療的介入をおこなう治療である。対象となる行動はそれに先行、または後続する環境事象との関連で捉えた上で、その行動を制御するには、影響を及ぼしている諸条件を制御することという、人の心に対する考え方である。

 適応となる対象は、主に不安症や強迫症、恐怖症などがあげられる。また、近年では吃音、性的機能障害、非行、夫婦の不和、心身症状など多岐にわたって使われている。

 援助技法としては、系統的脱感作法、フラッディング法、シェイピング法などがある。
系統的脱感作法では、不安の強さの低いものから順に想像していき、リラクゼーション法によって訓練し、対応できることを認識させる。主に恐怖症に対しておこなわれる。
フラッディング法では、患者が不安や恐怖を感じる強度の強い状況にあえて身を置いてもらい、身の危険のないことを認識させる方法である。主に恐怖症や強迫症の治療に用いられる。
シェイピング法では、最終的な目標となる行動を身につけるために、小さな目標行動を段階的に決めてひとつずつ身につけていくことである。

第四節:認知療法(本論④)

 認知療法は、ベックによって創設された精神療法であり、問題や疾患のメカニズムを学習理論や認知理論などの視点から理論化し、歪曲された認知のあり方に働きかけることで心理的苦痛や不安、非適応的な行動パターンを修正しようとする治療である。

歪曲された認知とは、ある状況で自動的にわき起こってくる自動思考と、心の底に気づかれないまま深層に存在している個人的確信であるスキーマによってもたらされると考えられている。

 適応となる対象は、主にうつ病性障害をはじめとして、その他にはパニック障害、PTSD、身体表現性障害などが挙げられ、様々な精神障害に効果的であることが実証されていることから、もっとも標準的な精神療法の一つとなっている。

認知療法では、「①自動思考の根拠を探す、②自動思考の結果について冷静に考える、③代わりの考えを探す、といった一連の過程を踏み、継続的に認知のゆがみを修整する力を養うことによって、最終的にはスキーマの修正を目指す。」(1)という。

 援助技法としては、認知再構成法をあげることができる。
認知再構成法とは、不安などネガティブな感情に関連している不適応な認知を、客観的に捉えることで、適応的な認知へと再構成していくものである。
以下のようなプロセスが認知再構成法の手順である。
「1.強くストレスを感じた状況や場面を特定する」
「2.その時の感情と自動思考を見定め、強さや確信度を評価する」
「3.検討する自動思考を選択し、様々な角度から検討する」
「4.新たな思考をまとめ、確信度を評価する」
「5.元の感情や自動思考の強さや確信度を再評価する」

 また、認知再構成法の他には、近年では第三世代と呼ばれるマインドフルネスACTといった、問題や症状を受容しようとするクライエント中心療法の考え方と似た技法も提唱されている。

まとめ(結論)

 本レポートでは、心理療法の代表的な理論ついて述べてきた。第一節では精神分析について、第二節ではクライエント中心療法について、第三節では行動療法について、第四節では認知療法について説明した。

※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。

例えば…

△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。

□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。

このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。

…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。

レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。

引用文献

引用文献
(1)日本精神保健福祉士養成校協会『新・精神保健福祉士養成講座1(第2版)精神疾患とその治療』中央法規2016年 p233

参考文献
・伊藤良子『いちばんはじめに読む心理学の本1 臨床心理学 全体的存在としての人間理
解』ミネルヴァ書房2009年
・上島国利『やさしくわかる精神医学』ナツメ社2017年
・高塚雄介、他『臨床心理学~やさしく学ぶ~』医学出版社 2009年
・精神保健福祉士養成セミナー1(第6版)精神医学―精神疾患とその治療』へるす出版2017年
・日本精神保健福祉士養成校協会『新・精神保健福祉士養成講座1(第2版)精神疾患とその治療』中央法規2016年
・野島一彦『臨床心理学への招待(第2版)』ミネルヴァ書房 2020年

教員からの評価とコメント

評価:A

コメント:4つの代表的な理論についてよくまとめられている。

注意事項

 本資料をコピペやそのまま提出なさらないようにお願いします。
あくまでも、レポートの構成や書き方などの参考用としてご活用ください。

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この記事を書いた人

株式会社カノン・エージェンシーと株式会社ミライト・レンタリースの経営をしております。本業の傍ら、心理系大学院&fromU & 独学で心理学を勉強中です。みなさんに役立ちそうな心理学に関するテーマをアップします!!

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