精神分析 治療論|院試塾 10限目

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院試塾 10限目。精神分析の治療論です。転移と逆転移を中心に、院試で問われる形に整理します。10限目は1本です。この動画では、標準型の精神分析と精神分析的心理療法の枠組み、自由連想法と分析家の構え、転移(陽性転移・陰性転移)と逆転移、抵抗の現れ方、治療同盟、治療者の介入(直面化・明確化・解釈)を整理します。

目次

動画 精神分析 治療論

10限目の頻出語マップ

この動画で覚える 8 語

語を押すと、過去問での出題率・動画のその場面・テキストの該当箇所が開きます。青は、とくに出題の多い語。

動画 精神分析 治療論(8語)

テキスト

この動画の内容を、答案に書ける順に文章にまとめる。10限目は、精神分析の治療論である。1本で扱う。5限目で扱った精神分析の理論を、治療でどう使うのかを、整理する。

近年の入試では、自由連想法、転移、抵抗、そして逆転移が、用語説明の形で出ている。精神分析的心理療法について、記述させる問題も出ている。

旧過去問では、転移と逆転移を対にして説明させる問題が、くり返し出ている。この回の中心は、転移と逆転移である。

標準型と、精神分析的心理療法

もともとの精神分析を、標準型と呼ぶ。クライエントは寝椅子に横になり、分析家は、その背後に座る。少なくとも週に4回から5回の面接を、長く続ける。

これは、時間も費用も大きくなる。そこで、形を変えたものが、広く行われている。それが、精神分析的心理療法と呼ばれるものである。精神分析的精神療法とも呼ばれる。対面で、週1回から3回ほど行う。精神分析の理論と原則を、修正して応用したものである。

  • 精神分析(標準型) = 寝椅子・分析家は背後。週4〜5回
  • 精神分析的心理療法 = 対面・週1〜3回。理論と原則を、修正して応用

時間、場所、回数、座る位置など、治療の取り決めの全体を、治療構造と言う。治療構造は、治療の中で起きることに、影響する。

自由連想法と、分析家の構え

5限目のおさらいである。精神分析の基本の方法は、フロイト(Freud)が始めた、自由連想法である。

フロイト(Freud)の肖像
フロイト(Freud)

頭に浮かんだことを、批判や選択をせずに、そのまま話す。関係がない、恥ずかしい、と話す前に選ばないことが大事である。これが、精神分析の基本規則である。

分析家の側にも、構えがある。先入観で話を選び分けず、どの話にも同じように注意を向けて聴く。これを、平等に漂う注意と言う。

もう1つは、中立性である。自分の価値観や忠告を持ち込まず、クライエントのどの感情にも、かたよらずに接する。こうした構えの中で、次の転移が起こりやすくなる。

転移と逆転移

転移を考えるときは、3つの位置を置く。過去の重要な人物、クライエント、そして治療者である。過去の重要な人物とは、多くは親である。

転移とは、クライエントが、過去の重要な人物に向けていた感情や態度を、いまの治療者に向けることである。たとえば、厳しい父親に叱られるのを恐れていた人が、治療者にも、叱られるのではないかと、身構える。治療者は、その父親ではない。それでも、昔の関係が、目の前でくり返される。

はじめは治療の妨げと考えられたが、のちに、治療の中心に置かれるようになる。昔の関係を、いまの関係の中で、扱えるからである。

反対の向きもある。治療者の側に起こる、クライエントへの感情や反応を、逆転移と言う。転移は、クライエントから治療者へ。逆転移は、治療者からクライエントへ。向きを、取り違えない。

陽性転移と陰性転移

転移には、2つの向きの感情がある。陽性転移と、陰性転移である。

  • 陽性転移 = 治療者への、信頼や好意、理想化など、肯定的な感情の転移
  • 陰性転移 = 治療者への、怒りや不信、反発など、否定的な感情の転移

ただし、陽性が良くて、陰性が悪い、というわけではない。2つは表裏一体で、1人の中に、同時に起こることもある。どちらも、治療の中で扱う材料である。

逆転移の2つの見方

逆転移には、2つの見方がある。逆転移の理解と扱いを問う論述で、柱になるところである。

  • 以前の見方 = 治療の妨げ。治療者自身の、未解決の問題が、クライエントに向かってしまうからである。治療者は逆転移に気づき、乗り越えるべきだと考えられた。そのため、治療者自身も分析を受けることが、求められた
  • 現在の見方 = クライエントを理解する手がかりにもなる。治療者が面接の中で感じる、いらだちや、守ってあげたい気持ちは、クライエントの心の状態を映していることがある。ただし、それが自分自身の問題から来ていないかを、見分ける必要がある

答案用紙に書くときは、妨げと、手がかりの両方を書く。

抵抗の主な現れ方

次は、抵抗である。抵抗とは、治療の中で、無意識に近づくことを妨げる、クライエントのすべての言動である。

治療を受けると約束しているのに、その目的に反するような動きが出てくる。気づきたくない気持ちに近づくと、不安や不快が強まるからである。

  • 時間を短くする = 遅刻、キャンセル、急な終結の申し出
  • 話を狭める = 沈黙、同じ話題、話題を避ける
  • 行動化 = 言葉にせずに、行動に移す
  • 健康への逃避 = 自分はもう良くなった、と言う

反対に、よく話し、治療に協力的に見えて、実は大事なところに近づかない抵抗もある。今では、抵抗の現れ方そのものが、クライエントを理解する手がかりと考えられている。

治療同盟(作業同盟)

では、抵抗や転移で関係が揺れても、治療が続くのは、なぜか。

治療者とクライエントの間には、治療という共通の目的のために、手を組んでいる部分があるからである。これを、治療同盟と言う。作業同盟とも呼ばれ、もともと、2つの語に本質的な違いはない。

転移で揺れる部分とは別の、一緒に作業を続けるという、現実の約束の部分である。この部分が保たれていると、抵抗や転移を、2人で見つめることができる。

治療者の3つの介入(直面化・明確化・解釈)

抵抗や転移は、治療者の言葉で扱われる。分析的な介入には、一般に、3つの技法がある。直面化、明確化、そして解釈である。

  • 直面化 = 本人が見ないようにしている事実を示して、そこに目を向けてもらう
  • 明確化 = 話の中のあいまいな所を、本人にもう一度説明してもらう。ばらばらだった事実どうしをつなげて、何が起きているのかを、はっきりさせることも含む
  • 解釈 = クライエントがそれまで意識していなかった、心の内容や在り方を、治療者が理解して、言葉にして示す

抵抗が、治療者への転移から生じていることもある。そのときは、その転移の意味も、解釈で扱う。

こうして、自分自身について気づき、理解しなおすことを、洞察と言う。一度では根づかないので、同じ抵抗を、くり返し扱っていく。これを、徹底操作と言う。

答案でやりがちな間違い

  • 転移と逆転移の向きを、逆にしてしまう。転移は、クライエントから治療者へ。逆転移は、治療者からクライエントへである
  • 逆転移を、治療の妨げとだけ書いてしまう。クライエントを理解する手がかりにもなる、という今の見方も書く
  • 抵抗を、治療を妨げる悪いものとだけ書いてしまう。抵抗の現れ方そのものが、理解の手がかりになる

10限目のまとめ

まとめる。精神分析の基本の方法は、自由連想法である。分析家は、平等に漂う注意と、中立性の構えで聴く。精神分析的心理療法は、その理論と原則を修正して応用し、対面で行う。

転移は、クライエントから治療者へ。逆転移は、治療者からクライエントへ。どちらも、治療の妨げにも、理解の手がかりにもなる。

抵抗は、無意識に近づくことを妨げる言動である。治療同盟を土台に、解釈で扱い、洞察につなげる。

次の回は、11限目の、臨床の倫理と予防である。

院試ではこう問われる(この動画のまとめ)

  1. 枠組みと自由連想法 ― 標準型の精神分析は、寝椅子・分析家は背後・週4〜5回。精神分析的心理療法は、理論と原則を修正して応用し、対面・週1〜3回。基本の方法は自由連想法。分析家は、平等に漂う注意と中立性の構えで聴く
  2. 転移と逆転移 ― 転移はクライエントから治療者へ(陽性転移・陰性転移は表裏一体)、逆転移は治療者からクライエントへ。逆転移は、以前は妨げ、現在は理解の手がかりにもなる。向きを取り違えない・妨げとだけ書かない
  3. 抵抗・治療同盟・解釈 ― 抵抗は無意識に近づくことを妨げる言動で、現れ方そのものが理解の手がかり。治療同盟(作業同盟)を土台に、直面化・明確化・解釈で扱い、洞察につなげる

10限目の課題:頻出語の200字と、論述800字

動画の終わりで出している課題と同じです。どちらも、院試の出題の形に合わせて、この塾で作った課題です。

課題1 用語説明(各200字)
この動画の終わりに出てくる頻出語(8語)を、1語ずつ200字で説明してください。「定義・何のため・似た語との違い」を入れると、200字になります。

課題2 論述(800字)
精神分析的心理療法とは何かを、標準型の精神分析との違いにふれて説明しなさい。転移・逆転移・抵抗の語を使うこと。

段落は3つで書けます。1つめは、標準型との違いと、自由連想法の考え方。2つめは、転移と逆転移。3つめは、抵抗と、解釈による扱いの順です。

10限目の1冊|PR
『精神分析的心理療法の実践』の表紙

精神分析的心理療法の実践

馬場禮子 著/岩崎学術出版社(1999年)

この回で整理した精神分析的心理療法の進め方を、1冊の中で順に読める実践書です。目次には、自由連想法と対面法の章、目標の設定と治療同盟の節、転移(陽性転移と陰性転移、逆転移)の2つの章、抵抗の意味と対応の章、介入と解釈(明確化と直面化、解釈の原則)の章、そして徹底操作の節が、この回と近い順に並びます。この回の課題2を書く前に読むと、転移・逆転移・抵抗のそれぞれを、面接の中でどう扱うかの流れをつかみやすくなります。なお、目次に「質問に答えて」の節があるように、臨床での扱い方を話し言葉に近い文章で述べた本です。用語の定義を短く確かめる使い方には向かないので、定義は、この動画とテキストで確かめてください。

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写真
フロイトの肖像:パブリックドメイン(Wikimedia Commons)
この授業について
大量の過去問を AI で分析し、大学院と院試専門の塾で教えていたスタッフが制作・監修しています。ナレーションは合成音声です。公開前に人が内容を確認しています。
知識は AI で広く。関係は人で深く。知識は無料で届けます。心のことは、人から、関係の中で学ぶものだと考えています。AI の時代に心理士を目指す人にこそ、対面で、人との関係の中で受けるスーパービジョンと師弟関係を大事にしてほしいと思っています。
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この記事を書いた人

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FromU 心理支援ラボの編集チームです。臨床心理系大学院で教えてきた教員と、心理面接に携わる公認心理師・臨床心理士が、院試塾のテキストと講義を作っています。知識は無料で広く。心のことは、人から、関係の中で。ラボでは、スーパービジョンと学びの場を開いています。

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