いい成績になるレポートの書き方を教員が教える




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レポートと勉強の違い

勉強

勉強は、知識を吸収することです。 「へぇ~そうなんだ~、そんな視点や考え方があるんだ。」 と『相手』から『自分』が思わされることです。

レポート

それに対して、レポートとは知識を「生産」することです。「へぇ~そうなんだ~、そんな視点や考え方があるんだ。」と自分から『自分』だけでなく、『相手』にも思ってもらうことです。

[sen]

というわけで、 「相手」は、提出先の大学教員がターゲットになるはずですので良いレポートとは 、いかに「大学教員」に「へぇ~そうなんだ~、そんな視点や考え方があるんだ。」 と思ってもらえるかなんですね。だから難しい。だって、大学教員はその分野のオタクなわけで、みなさんが調べることはだいたい知っているからです。では、どのような戦略をとれば『良いレポート』になるか・・・

おさえるべき良いレポートの3ポイント

ここでよいレポートの3側面をお教えます…前回の記事を読んでいる前提で話をすすめるので、見ていない人は下のリンクをまず先にお読みください。

[kanren id=”12600″]

☑今までの知識の流れを引き継いでいる(調べてある)

先人の知恵はやはり(学問的批判をするうえでも)意味があるので、調べておく必要があります

車の開発でたとえると、まったく新しい発想で開発するのは難しいですし、今まで開発されてきた車には意味があるはずなのでそれを踏まえて開発していく必要があるはずです。いきなりタイヤが10個の車とか、空飛ぶ車とか提案されても困りますよね。

[box class=”box29″ title=”ワンポイントアドバイス”]

調べなきゃいけないとなると、調査範囲をできるだけ狭めることをおすすめあします。車の開発より、タイヤ、いや、タイヤのデザインの開発の方が楽でしょ?

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☑ 情報的価値(意外性と確実性)があること

意外性

へぇ~と思ってもらうこと

確実性

そうなんだ~と思ってもらうこと

『客観性』:目に見えるもの(事実)を扱い、目に見える形で示されていること
『理論性』:その結論にいたるまでの手順や方法がしっかり示されていること
『再現性」:だれがどこでやってもその結論になること

たとえば、『自動車には10個の車輪がある方がいい!』という結論は「へぇ~」と意外性は高いですが、理由として「いいからいいの!」とレポートした場合・・・

「いい」は、その人の目に見えない感覚なので客観性は低い
その感覚がどうして生じたのかも語られないので理論性も低い
明日になっていれば気が変わっているかもしれないので再現性も低い

となります。

☑ 実用的価値がある

(基礎分野のレポートではここは必要ないかもしれません。)
臨床心理学など応用領域の分野では研究で得られた知見や理論を応用することによって、私たちの生活にどれだけの益をもたらすか。調べて何になるのか。意味があると良いレポートです。

Google Docs
Post-Traumatic Stress Disorder.pdf

へぇ~そうなんだ~と思わせる例

というわけで、以上をまとめて「自動車は車輪が10個あった方がいい」という旨のレポートを書くとします。

今までの知識の流れを調べて報告する

まず、車輪の個数の歴史について触れる。→最初は、簡単な農業用の一輪車からはじまり、チャリオットの2輪車に至る。そして、そして自動車の出現で3輪車や4輪車が主流になり、戦車や鉄道の出現で台車につき多くの車輪が付けられる例が出てきていること。時代の流れで台車に対して車輪が多く付けられる事例も増えてきているが、コスト面や制御面で4つが現在は主流であることを先行研究や本の情報から書く。そのうえで、意外性が高い【主張】をする。たとえば、「それでも自動車には10個の車輪があった方がいい。

【確実性】ある情報で【根拠、具体例】を展開する

レポートレベルでは自分で実験・調査が難しいので、確実性が高い論文や本のデータを引用していくことになる(簡単な調査をする学生もいる)。Aという研究では、Bという方法を使って調査したところ、Cという結果が得られている。また同様の結果は、Cという方法を使ったDという研究でも示されていた・・・

といった感じで、
・10個の車輪がある方が、実はアスファルト路面に優しくトータルで考えると経済効率が良い
・ブレーキをかけた際に制動距離が短くなるので安全性も高まること

など示す。また、その中で【別視点・課題】として、
10個の車輪自動車が普及するためには経済効率をもっと高めるために安価で品質の良いタイヤ素材が必要であることがわかったことなどを述べる。

【まとめ】で実用的価値があることにも触れる

今回の10個の車輪がついた自動車の可能性を示すレポートは、「経済効率と安全性を高めるものである【実用的価値】」と触れておく。

まとめ

もちろん上記の例は、イメージを掴んでいただく例なので詳細は全部嘘です。そして、こんなにうまくはいきません。理想は意外性と確実性の両方が高いレポートですが、どちらからが犠牲になることが多いでしょう。そして、ここであげたチェックポイントをすべて満たそうとすると必ず身動きが取れなくなります。そこで、最後に「レポート」としての優先順位を示しておきます。ただし、これは沢の個人的な印象です。

優先順位1位 提出期限

触れなかったですが、これが一番大事です。途中でもなんでもとにかく提出期限は守りましょう。バックアップも忘れずに。

優先順位2位 確実性

意外性よりも確実性です。なぜなら、文字通り、確実性があれば確実に1歩でも知識の生産がされているからです。意外性が高くても確実性がなければそれは学問上、何も生産されていないのと同じです。だからたまに、意外性が高くても確実性が低いとされる結果があるとめちゃくちゃ叩かれる事件が起こるのです(STAP細胞はあるのでしょうか。)研究は、確実性がある論文を引用することや、確実性ある方法で提示することが何よりも大事で、レポートはその練習といっていいほどかもしれません。私もそうですが、意外性を求めたくなる気持ちもわかりますが、確実性あることを大事にしましょう。そこに教員と学生の間に温度差があるような気もしました。

「いいことを書かなければいけない」は、意外性ではなく、確実性なのです。引用がきちんとされていることはもちろん、確実性ある情報を使って理論的に主張に対する根拠や具体例が構成されていることです。そういう意味でも、テーマはかなり絞って考えた方が書きやすいレポートになると思います。

Google Docs
Post-Traumatic Stress Disorder.pdf

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この記事を書いた人

沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師)のアバター 沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師) 医学博士/臨床心理士/公認心理師

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