レジリエンス研究者のマル秘おすすめ本





レポート:FromU心理士 谷

レジリエンスとは?

皆さんレジリエンスという言葉をご存知でしょうか。簡単にいうと、精神的に落ち込んだ状態から回復する力です。
心理学界隈では、すでにメジャーな用語ですが、最近ではセンター試験最後の年の国語の問題に出た用語として話題になりました。
レジリエンスは楽観性や問題解決能力・社会性が高いといった個人の特性、あるいは安定した学校生活を送れること、友人や家族から受け取る情緒的なサポート(例:誰かに話を聞いてもらったりアドバイスをもらう)など、個人と環境との相互作用によって築かれるものであると主張している研究が多くなっている印象です(しかし、レジリエンスとは何かといった定義は未だに定まっていません)。

レジリエンス研究者がすすめる本は・・・

さて、この「レジリエンス」ですが、学生の皆さんから必ずと言っていいほど聞かれるのが「レジリエンスに関する本でおすすめはありますか?」という質問です。 結論から言うと、卒論に使える程度の内容がよくまとまっていて、わかりやすい本というのは、私の知る限りほとんど見当たらないといっていいかもしれません(論文や学術雑誌の特集号ならありますが)。また、自己啓発本で「レジリエンスを鍛えよう!」みたいな本もありますが、学術的な話ではない場合が多いので、論文に使用したりカウンセリングに役立てるという意味でちょっと違うかもしれません。以下の書籍は修論レベルで使うとよい本、あるいはカウンセリングに役立てたいと思っている臨床家の方々を対象とした、レジリエンスに関する本をご紹介したいと思います。ちょっと難しいかもしれませんが、読みこなすと大変面白いと思います!学部生の方もよかったらチャレンジしてみてください。

レジリアンス 現代精神医学の新しいパラダイム


レジリアンス 現代精神医学の新しいパラダイム

精神科医の立場から丁寧に論考されている書籍です。レジリエンスの研究の流れや新しい概念など一連のことが学べます。結構難しい本ですが心と体がどのように結びついていて、どのようにレジリエンスと関連しているかを学ぶのには最適な一冊だと思います。

リジリアンスを育てよう―危機にある若者たちとの対話を進める6つの戦略


リジリアンスを育てよう―危機にある若者たちとの対話を進める6つの戦略

 レジリエンス研究に一石を投じた画期的な本だといえます。今までのレジリエンスのイメージは「楽観的になろう!」「社会性を高めよう!」となんだか同じことばっかり言ってるな・・・という感じでしたが、この研究者(マイケルウンガー)は、非行少年を対象に、社会構成主義の立場からレジリエンスを捉えています。
どういうこと?と思うかもしれませんが、要するにどんな環境に置かれた人でもその人なりのレジリエンスがある、ということです。非行少年だって、似たような仲間を作って社会的にはあまり適さない行動をするわけですが、彼らにとっては同じ目的をもった者同士で支えあって、暮らしているわけです。それは、彼らが生き抜くために必要なレジリエンスとも捉えられます。そのようにレジリエンスを捉えていくと、クライエントを見立てる時により多面的な視点で理解できるのではないでしょうか。この本を読むとレジリエンスに対する考え方が柔軟になれると思います。また、これは補足ですがこの本を訳した松嶋秀明先生のレジリエンスの考え方もとっても素敵なので、論文やコラムを読むことも一緒におすすめします。

つらさを乗り越えて生きる: 伝記・文学作品から人生を読む


つらさを乗り越えて生きる: 伝記・文学作品から人生を読む

 この本の著者である山岸明子先生は、レジリエンスに関する論文を数多く執筆していらっしゃいます。私も修士論文の時に数多くの論文を引用させていただきました。その時は量的研究によってレジリエンスを測定する研究が多い印象でしたが、近年ではタイトルにあるように伝記・文学作品を通して、困難に陥った主人公がどのように立ち直ったのかを論考されているようです。
これがとても面白い。なぜならレジリエンスを考察する取り組み方がユニークだからです。現在においてもレジリエンスの量的研究は盛んに行われていますが、近年ではどのように回復したのか当事者にインタビューする質的研究も増えています。しかし、インタビューを受ける相手が傷ついてしまう可能性があったり、長期間におよぶ追跡調査や縦断的調査が難しいというデメリットも持ち合わせていました。しかし、このように伝記・文学作品を通して考察することで、誰も傷つくことなく、主人公の回復したプロセスを丁寧に分析することができるわけです。
中でも面白かったのが「思い出のマーニー」など6つの文学作品に出てくる「想像上の仲間」の重要性です。想像上の仲間(イマジナリーフレンド)をもつことは心の不適応につながりやすいという研究も過去にはありましたが、この本を読むと、想像上の仲間が本人の心の支えになったり、傷ついたこころを癒してくれる重要な存在であることが分かりました。このように、本人にとって何がレジリエンスなのかは本当に個人差があるし、研究ではあまり明らかにされてなくとも、本人にとっては支えになるものってたくさんあるんだよなぁ・・・と気づかされる素敵な本です。

漱石文学が物語るもの――神経衰弱者への畏敬と癒し


漱石文学が物語るもの――神経衰弱者への畏敬と癒し

 病跡学の分野で有名な高橋正雄先生が書いた名作です。夏目漱石の文学作品あるいは伝記などを用いて、漱石がどのように神経衰弱から回復していったのかについて書かれています。夏目漱石の本は「こころ」ぐらいしか読んだことがなかった私ですが、それでも非常に面白かったです。この本を読んだ後、夏目漱石全集を買ってしまったぐらい見事にはまってしまいました・・・(笑)。

夏目漱石のレジリエンスは、近年注目されている概念である「メンタライゼーション」と関連していると感じました。メンタライゼーションとは自分自身について考えたり、他者のこころについて考えたりする心の機能のことです。 母親に十分なケアを受けずに育った漱石は、特に女性あるいは母親的存在に対して葛藤があったようですが、それが徐々に作品を通して心の中で整理されていく過程がよくわかりました。漱石は晩年になるほど、作中の登場人物(女性)の描写が多面的になり、豊かな想像力で描かれているのです。また、自分自身のことも客観視できていきます。漱石のこころがどのように変化していったのか、ぜひ本の中で味わってみてください。

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