運動が健康に良いのは分かってもできない人へ

レポート:FromU心理師 谷 里子





運動がこころに与える影響について

皆さんご存知のように、「運動」は心と体の健康を保つために大切なことです。近年では身体だけでなくこころにも大きな良い影響を与えることが研究で分かってきています。例えば、うつ病の患者さんに運動を積極的に取り入れると、症状が改善されるとして、運動療法が注目されています。



「座りすぎ」はこころに良くない?

一方、「座りすぎ」の悪影響についても研究されています。石井(2017)によると、テレビ視聴時間やゲームなどに伴う「座りすぎ」が、生活の質の低さや問題行動、うつなどと関連しているそうです。このように、子どもから大人まで、身体を動かすことがこころの健康を保つ上で重要なのは様々な研究で指摘されており、一般の感覚でも「そりゃそうだ!」と納得できるのではないでしょうか。ただ、そう分かっていても、お仕事が忙しかったり、運動が苦手でやる気が起きない・・・など、身体を動かすことに高いハードルがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんなハードルを低くするヒントや取り組みをご紹介したいと思います。

そもそも「座りすぎ」ってどういうこと?

本題に入る前に、「座りすぎ」の定義や用語について説明します。

いわゆる、「運動」というのは体力の維持・向上を目的とした計画的な活動であって、「身体活動」という概念の中に含まれます。例えば、「運動しなさい!」と言われた時は、「身体活動量を増やせ!」という意味になります。

一方、「座位行動」というのは身体活動量が低い状態を示します。例えば、「座りすぎ」「座りっぱなし」というのは、「座位行動」の時間が長いことを指します。

  • 身体活動とは:安静にしている状態より多くのエネルギーを消費する全ての動作のこと。
  • 運動とは:身体活動のうち、体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施し、継続性のある活動。例:筋トレやスポーツ活動など。
  • 座位行動とは・・・座位および臥位におけるエネルギー消費量が1.5メッツ以下のすべての覚醒行動。つまり、‟座っている”の状態のこと。例:パソコンやテレビ、スマホを長時間見る

この中でも、一般的に中強度の運動・身体活動が心身の健康に良いとされていますが、なかなか継続的に実施するのは難しいのが現状ではないでしょうか。そこで「座位行動」に注目した研究が増えているのです。じゃあ実際に、何をしたらよいのでしょうか?

「身体活動を増やす」よりも「座位行動を減らす」へ

健康にいいと分かっていても、周囲の人間から「運動しなさい」「部活・ジムに入りなさい」「筋トレいいぞ」などと言われてもやる気がでない人も多いのでは・・・。なぜかといえば、これは「身体活動を”増やそう”」という強制的なメッセージだからです。しかし、例えば「テレビ番組がCM中の時は、立ってストレッチしましょう」「夜にテレビを見る時間を制限しましょう」と、今行っている行動(座位行動)を”減らす”ことにシフトしてみると、どうでしょうか?なんとなくできそうな気がしませんか?このように「身体活動の増加」よりも「座位行動の減少」に考え方を変えるだけで、やる気スイッチが変わってくるのです。

こんな工夫ができる!(具体例)

  • 「なるべくベットにいる時間を減らそう」と座位行動時間を減らすように考えてみましょう。「1日1万歩ウォーキングしよう」と目標を立ててもなかなか続かない場合もありますが、先ほどの目標であればこまめにスーパーに出かけたり、洗濯や掃除をこまめにしたり、家でラジオ体操をしてみたり、整体に行ってみたり、行動のレパートリーが増えて続けやすいかもしれません。
  • iphoneなどスマホ・タブレットのスクリーンタイムで、どの程度画面を見ているのかをこまめに把握するのもよいでしょう。意外とLINEやSNSの使用時間が多いかもしれません。こりゃあいかん、と外出するモチベ―ションにつながります。このようなちょっとした意識を持つことで、こころの健康を保つことができるのではないでしょうか。

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最後に

上記の例は、個人が行える座位行動時間を減らす試みのご紹介でした。最近では周りの環境そのものを変えていくアプローチも増えているようです。
例えば、学校の休み時間を長くして校庭を芝生化したり、職場でも立位で仕事をするよう取り組んでいる企業もあります。このように、「座りすぎ」の研究(座位行動に関する研究)は近年になって注目されてるようになりましたが、なぜ「座りすぎ」が心身に影響を及ぼすのかメカニズムは解明されておらず、まだまだ謎が多いテーマでもあります。また、座位行動の時間をどの程度減らすのがベストなのかもよく分かっていません。でも、この「座りすぎ」の研究が進めば、健康になれるヒントが発見されるかもしれませんね。

参考URL

「座り過ぎ」は子どもにとっても危険
日常生活から意識することで、体力や学力の向上に期待 石井 香織   2017.12.25 https://yab.yomiuri.co.jp/adv/wol/opinion/sports_171225.html

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