【心理系大学レポート公開シリーズvol.10】心理学研究法②~観察法と実験法~(評価:A)

目次

設題の確認

心理学の研究法のうち、観察法と実験法について述べよ。

<ポイント>

心理学をはじめとする人間科学の研究法として、観察法、実験法がある。それぞれの方法の特徴や問題点、準備・ 実施上の留意点などについてまとめること。

レポート構成(序論)

 本レポートでは、観察法と実験法について説明する。
第一節では観察法の特徴と種類について、第二節では観察法の長所・短所と留意点について、第三節では実験法の特徴と種類について、第四節では実験法の長所・短所と留意点について述べる。

第一節:観察法の特徴と種類(本論①)

観察法とは、対象の行動を自然な状況や実験的な状況のもとで観察、記録、分析し、行動の質的・量的特徴や行動の法則性を解明する方法であり、行動記述・行動測定・行動評定・印象評定のいずれかが行われる。

観察法は、観察事態の観点からは自然観察法と実験観察法の2つに大別される。
まず自然観察法とは、観察対象や環境に人為的な操作を加えず、自然に生起する行動をありのままに把握する方法である。
自然観察法はさらに、偶然的観察法と組織的観察法にわけられる。
偶然観察法は、偶然の機会に観察できた出来事が記録をもとに人間関係や社会構造を理解しようとするものである。
一方、組織的観察法は、事前に観察対象や一定の目標を定め、適切な場面を選択し、観察をするものである。

実験的観察法とは、観察者が意図的に条件を設定し、その中で生起する対象行動を短期間のうちに数多く観察することを目的とするものである。実験観察法では、目的の行動と条件の因果関係や、人間行動のメカニズムを知ることができる。

また、観察形態の観点から参加観察法と非参加観察法の2種類が存在する。
参加観察法とは、観察者自身が観察対象となっている集団の生活に参加し、その一員としての役割を演じながら、そこに生起する事象を多角的に、長期にわたり観察する方法である。
参加観察法には、対象者と何らかのやり取りをしながら観察を行う交流的観察と、対象者との接点を最小限に抑えて観察を行う非交流的観察と、その中間的なものとして面接を通して対象者の観察を行う面接観察がある。

参加観察法とは、観察者が第三者として対象者を観察する方法である。また非参加観察法には、観察者がその状況を直接観察するものと、ビデオなどを用いて状況を記録し、後から観察するものに分けられる。

第二節:観察法の長所・短所と留意点(本論②)

観察法の長所としては、以下の2点のとおりである。
一つ目は、観察法は対象者への拘束や制約が少なく、日常生活上の自然な行動を対象に出来るという点があげられる。
二つ目は、行動そのものを対象とするため、言語的理解力や言語的表出力の十分でない乳幼児や障害児、さらに動物をも対象に出来るという点である。

短所としては、以下の3点があげられる。
一つ目に、他の研究法とは異なり、自然の行動を対象とすることから、観察対象となる行動が生起するのを待たねばならないという点である。
二つ目は、自然な行動を対象にできるといってもプライベートな行動の観察は難しく、観察可能な行動に限界があるという点である。
三つ目は、他の調査法に比べ、観察の視点やその解釈が主観的になりやすい点である。

観察法における留意点として、信頼性と観察者の問題があげられる。
信頼性の問題とは、ある観察者による観察が、他の観察者が行った場合と同様の結果となるか、観察者の主観が多く混じった公共性のない観察結果なのかどうかである。信頼性を高めるため、観察者訓練や観察者間一致率の提示が行われる。前者は、複数の観察者が事前にお互いが持つバイアスや傾向を指摘することで、観察者同士の視点を揃える作業である。後者は、同一データに題する2 人の観察者の分類や評定の一致率を算出し、結果的に2者間でどれだけ一致するかを検討するものである。

観察者の問題とは、被観察者が観察されているという意識を持つため、自然な行動を観察できなくなる問題である。観察者は被観察者に気づかれない場所で観察するように工夫するか、被観察者が観察者によって見られていても気にならないレベルまで慣れさせるようにすることが求められる。

第三節:実験法の特徴と種類(本論③)

実験法とは、被験者に厳密に統制された環境に入ってもらい、自然な状況では統制困難な変数を作為的に操作し、その結果を厳密に観察しデータ収集をおこなう方法である。実験法では、物事の因果関係について検討していくことが目的であると考えられている。

実験法の展開については、まず検証する仮説を決定し、次に独立変数(要因)と従属変数を設定する。
そして、独立変数を変化させていき、どういった結果(従属変数)がそこに生じるのかを調べていく。
さらに、独立変数の操作を受ける実験群と、操作を受けない統制群といった条件群が設定され、両群の従属変数の差などについて比較することにより、独立変数の効果について検討をする。
その結果から、対象とした事象についての因果関係を明確にすることができる。

実験法には、実験室実験とフィールド実験があり、内容や目的などから合う方を選択していかなければならない。
実験室実験とは、実験室で場面や環境を人工的に設定していく方法であり、操作の自由度が高く条件の統制が簡単で厳密な実験が可能であるが、人工的であるため得られた結果の一般化が難しいという点が課題となっている。
フィールド実験とは、現実の生活場面に実験を持ち込んで実施する。自然体であるが、状況を統制する事が難しく、余計な要因が入り込んでしまい因果関係が不明瞭になる可能性や、結果に無関係な要因の影響が出てしまうことがある。また日常の場面に実験操作を持ち込むため、内容によっては被験者に対する倫理的問題や道徳的問題を招きかねないため、そういった点も慎重に考慮する必要がある。

第四節:実験法の長所・短所と留意点(本論④)

実験法の長所は、実験条件を調整したり実験群・統制群の2つの群を比較したりすることで、検証したい特定の要因を調べることができるという点であり、特定の要因と結果との因果関係を検証するのに適している。

実験法の短所は、実験条件を調整することによって、普段とは違う状況で観察するため、日常生活の自然な行動や反応が観察しにくくなるという点である。

準備上での留意点として、独立変数と剰余変数の交絡がある。剰余変数とは、実験において従属変数に影響を及ぼす可能性のある独立変数以外のすべての変数を指し、交絡とは2つ以上の要因効果が混じり合って分離できない状態のことをいう。ある結果について2つ以上の要因が考えられるとき、それぞれの原因がどの程度結果に影響しているか区別できない場合にこれらの要因は交絡している。独立変数と剰余変数の交絡が起きると、独立変数には効果がないが、交絡している剰余変数の効果によって条件間に差が示されたり、独立変数に効果がある。しかし、剰余変数の効果が独立変数の効果を相殺し、条件間に差が示されなかったりするといったことが生じる。そのため、実験を実施する際には、剰余変数の統制が重要となる。主な統制法として、恒常化、無作為化、ブロック化、バランス化、独立変数化などがあり、状況によって適切なものを選択する必要がある。

実施上の留意点としては、実験者効果がある。これは、実験者の行動や属性が被験者の反応に影響を及ぼすことである。実験者効果を統制する方法としてブラインド法がある。これは、被験者や実験者に実験の目的を教えない、または偽る方法であり、特に後者をダブル・ブラインド法と呼ぶ。そのほか、実験が終了するまで被験者同士の接触を避けるなど配慮すべき点はいくつかあるが、いずれにおいても実験結果を歪める要因をできるだけ排除するように努めることが重要である。

まとめ(結論)

 本レポートでは、観察法と実験法について述べてきた。
第一節では観察法の特徴と種類について、第二節では観察法の長所・短所と留意点について、第三節では実験法の特徴と種類について、第四節では実験法の長所・短所と留意点について説明した。

※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。

例えば…

△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。

□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。

このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。

…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。

レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。

引用文献

参考文献

・大山正、他『新心理学ライブラリ8 実験心理学への招待』サイエンス社2012年
・後藤宗理、他『心理学マニュアル 要因計画法』北大路書房2000年
・サトウタツヤ、他『心理学・入門〔改訂版〕―心理学はこんなに面白い』有斐閣アルマ2019年
・高橋順一、他『人間科学研究法ハンドブック』ナカニシヤ出版2011年
・中澤潤、他『心理学マニュアル 観察法』北大路書房1997年
・森敏昭、吉田寿夫『心理学のためのデータ解析テクニカルブック』北大路書房1990年

教員からの評価とコメント

評価:A

コメント:両手法についてバランス良く述べていると考える。

注意事項

 本資料をコピペやそのまま提出なさらないようにお願いします。
あくまでも、レポートの構成や書き方などの参考用としてご活用ください。

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この記事を書いた人

株式会社カノン・エージェンシーと株式会社ミライト・レンタリースの経営をしております。本業の傍ら、心理系大学院&fromU & 独学で心理学を勉強中です。みなさんに役立ちそうな心理学に関するテーマをアップします!!

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