【心理系大学レポート公開シリーズvol.12】心理学実験②~社会問題に貢献する実験心理学~(評価:B+)

目次

設題の確認

日常生活や社会問題に貢献する実験心理学研究について考察せよ。

<ポイント>

身近な日常生活における諸問題や社会問題の解決に向けて、実験心理学が果たすべき役割を具体的に考察すること。特に、自分自身が興味・関心をもつ日常生活や社会関係における諸問題を取り上げて、その解決策の発見や効果測定をめざした実験的研究のあり方について考察すること。

レポート構成(序論)

 本レポートでは、超高齢社会に貢献する実験心理学について述べる。
第一節では超高齢社会の定義と将来推計について、第二節では高齢者の転倒と実験心理学の関わりについて、第三節では配偶者との死別と実験心理学の関わりについて考察する。

第一節:超高齢社会の定義と将来推計(本論①)

「高齢化社会」とは、人口に占める高齢者の割合が7%を超えている状態をいう。ここでいう「高齢者」とは65歳以上の人を指し、日本が高齢化社会に突入したのは1970年のことである。その年の総人口は約1億370万人であったが、これに対し65歳以上の人口は約730万人(約7.04%)であり、このうち65~74歳までの前期高齢者は約510万人、75歳以上の後期高齢者は約220万人であった。
当時は高度経済成長の真っただ中であり、医療や化学技術が飛躍的に進歩した時期であったため長生きする人が増え、人口に占める高齢者の割合が増えたと考えられている。

1970年に高齢化社会となって以降、高齢者の人口は増え続けた。
総務省統計局によると、1994年の人口推計は総人口約1億2,300万人に対し高齢者数は約1,760万人となり高齢化率は14%を超え、日本は「高齢社会」を迎えた。高齢社会とは、人口に占める高齢者の割合が14%を超えている状態をいう。
海外では高齢社会となるまでドイツは42年、フランスは114年の年数を経たのに対し、日本はわずか24年で高齢社会に突入している。急速に高齢化が進んだ背景には、少子化が影響しており、人口動態調査によると高齢化社会に突入した1970年の合計特殊出生率が2.13だったのに対し、1994年は1.50と大きく減少している。子供が減り続ける中で高齢者人口は増えていったことが、急速に高齢社会へと進んだ原因と考えられる。
高齢社会となって以降も少子高齢化に歯止めはかからず、2007年にはついに高齢化率が21%を超え、日本は「超高齢社会」を迎えた。超高齢社会とは人口に占める高齢者の割合が21%を超えている状態をいう。

内閣府の2021年版高齢社会白書によると、2020年10月1日時点では我が国の総人口は1億2,571万人であり、65歳以上人口は3,619万人、高齢化率は28.8%となっている。
また2008年には人口減少が始まっており、今後高齢化はますます加速していくことが予想されている。2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になり、高齢化率も38.4%との推計が出ており、日本の高齢化率は世界でも非常に高く、今後もハイスピードで進んでいく見込みである。

このような「長くなった老後」では、老いに伴う様々な問題と上手につき合っていく必要がある。

第二節:高齢者の転倒と実験心理学の関わり(本論②)

次に、超高齢社会の問題点やその解決策など実験心理学の関わりについて、具体的な心理学研究を例に挙げながら述べていく。

超高齢社会が引き起こす日常的な諸問題には「転倒」があげられる。

内閣府の2020年版高齢者白書によると、65歳以上の要介護者等にみた介護が必要となった主な原因のうち、「骨折・転倒」は12.5%となっている。

高齢化が急速に進行している現代では、高齢者が「健やかに老いる」にはどうすれば良いのかが社会的課題となり、様々な地域で高齢者に対する健康増進事業や介護予防事業が進められている。なかでも転倒予防対策は、転倒による外傷や骨折が高齢者の日常生活を著しく低下させるため、その重要性が認識されつつある。

高齢者が運動諸機能の低下によって住居内およびその周辺で遭遇し得る転倒といった事故を予防するため、人間工学や医学、建築など諸方面からの物理的対策が進められつつあるが、その一方でこういった物理的対策のみならず、高齢者の転倒を未然に防ぐためには、転倒発生要因の解明が重要であり、認知機能からみた実験心理学の果たす役割は大きいといえる。

高齢者の転倒に対して、村田・津田・稲谷・田中は「在宅障害高齢者の転倒に影響を及ぼす身体及び認知的要因」に関する研究をおこなっている。
この研究では、在宅障害高齢者110名(平均年齢 83歳、男性17名、女性93名)を対象に、転倒歴と注意力及び身体機能を評価し、転倒に影響を及ぼす要因を検討している。
研究の結果、身体機能の低下が転倒の危険因子であることのみならず、注意力の低下も転倒を引き起こす重大な要因であることを明らかにしている。したがって、在宅障害高齢者の転倒予防を含めた健康増進プログラムには、身体的トレーニングだけでなく、注意力を高めるための「認知トレーニング」が有用である可能性が示されている。

このように高齢者の転倒に対して、実験心理学の果たすべき役割は十分にある。

第三節:配偶者との死別と実験心理学の関わり(本論③)

老年期は健康喪失、人間関係の喪失、役割立場の喪失など他の年代に比して喪失体験が多い。また、高齢者を取り巻く家族構成は変化しており、「夫婦のみの高齢者世帯」が多くなっているため、配偶者を喪失後単独世帯となる可能性は高い。

例えば、内閣府の2020年版高齢社会白書によると、2018年時点では、「65歳以上の者のいる世帯」について、世帯数は 2,492万 7千世帯と、全世帯の48.9%を占めている。そのうち、「夫婦のみ世帯」は、804万5千世帯であり、全世帯の32.3%を占めている。また、2000年時点では、「夫婦のみ世帯」は、423万4千世帯であったことから、20年間で倍増していることがわかる。そのため、今後夫婦のみの高齢者世帯の数はますます増加していくことが考えられる。
こうした背景を考えると、配偶者を喪失後単独世帯となる可能性は高く、生活の変化に対する適応が求められる。また悲哀という精神的な面だけでなく、生活を直撃するため高齢者における配偶者の死後の生活への適応には、精神的なサポートのみならず生活面を含めたサポートの必要性がある。

高齢者の配偶者との死別に対して、福武・島村・難波・荻野は「配偶者との死別後の生活への適応」に関する研究をおこなっている。
この研究では、老人クラブに所属する会員600名を対象に、年齢、性別、家族構成、配偶者との関係、自身の健康状態、日常生活における役割状況、配偶者への精神的頼り状況、人間関係、配偶者が亡くなったことを想定しての生活への自信などの調査している。
研究の結果、生活への自信がある人は男女ともに「健康状態がよい人、精神面で頼っていない人、友人との付き合いがある人」であった。男性では、生活への自信があったのは、「近所との付き合いがある人」であった。また、女性では、「印鑑・通帳管理で頼っていない人」であった。
したがって、配偶者との死別後の生活への適応について重要な点は、健康状態を維持し、夫婦でお互いに普段の役割状況を認識し、生前からお互いが担っている事柄を実践しておくことや人間関係を構築していくことが必要であるとの示唆を得ている。

以上のように、超高齢社会に対して、高齢者に向けた実験心理学の貢献すべき点は十分にあると考えることができる。

まとめ(結論)

 本レポートでは、超高齢社会に貢献する実験心理学について述べた。
第一節では超高齢社会の定義と将来推計について、第二節では高齢者の転倒と実験心理学の関わりについて、第三節では配偶者との死別と実験心理学の関わりについて考察した。

※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。

例えば…

△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。

□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。

このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。

…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。

レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。

引用文献

参考文献

・浅井邦二『心理学実験計画入門』学芸社1999年
・市川伸一『新心理学ライブラリ13 心理測定法への招待』サイエンス社1991年
・大山正『実験心理学~こころと行動の科学の基礎』サイエンス社2007年
・大山正、他『新心理学ライブラリ8 実験心理学への招待』サイエンス社2012年
・総務省統計局 2020年『統計からみた我が国の高齢者』(2021年6月29取得、https://www.stat.go.jp/data/topics/pdf/topics126.pdf)
・内閣府 2020年『高齢社会白書』(2021年6月29取得、https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/index-w.html)
・内閣府 2020年『人口動態調査』(2021年6月29取得、https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/81-1a.html)
・西口利文、他『心理学実験法・レポートの書き方』ナカニシヤ出版2008年
・福武まゆみ、他 2018年『配偶者との死別後の生活への適応』岡山県立大学学術情報リポジトリ(2021年6月30取得、https://ci.nii.ac.jp/naid/120006408777)
・福屋武人『老年心理学』学術図書出版社 2004年
・村田伸、他 2005年『在宅障害高齢者の転倒に影響を及ぼす身体及び認知的要因』J-STAGE(2021年6月29取得、https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/32/2/32_KJ00003946835/_article/-char/ja/)

教員からの評価とコメント

評価:B+

コメント:高齢者問題について事例や先行研究をよく調べて記述されている。しかし、本レポートの設題にある「身近な日常生活における諸問題」の解決に向けた実験心理学が果たすべき役割を具体的に考察することに関する記述が少々不足している。設題の意図に沿った記述をこころがける必要がある。

アオジュンの補足

レポートを提出してから気づいたが、上記の教員からのコメント以外にも、文中で引用した研究がそもそも「実験心理学」ではなかったことが反省点でした。ご自身のレポートを作成する際にはご注意ください。

注意事項

 本資料をコピペやそのまま提出なさらないようにお願いします。
あくまでも、レポートの構成や書き方などの参考用としてご活用ください。

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この記事を書いた人

株式会社カノン・エージェンシーと株式会社ミライト・レンタリースの経営をしております。本業の傍ら、心理系大学院&fromU & 独学で心理学を勉強中です。みなさんに役立ちそうな心理学に関するテーマをアップします!!

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