【心理系大学レポート公開シリーズvol.11】心理学実験①~概要と身近な自身の関心に沿った実験~(評価:A)

目次

設題の確認

心理学実験法についてまとめ、自分の問題意識に沿った実験のテーマや方法について考察せよ。

<ポイント>

実験法の特徴や目的、実験の仮説設定から結果の分析に至るまで実験の展開について、具体例を交えながらまとめること。加えて、あなた自身の身近な問題背景や関心のある人間行動・意識現象などを取り上げ、実験法を用いてどのような問題をどのような手続きで研究することが可能であると予測されるか、自分なりの考えを述べること。

レポート構成(序論)

本レポートでは、心理学実験法について説明する。
第一節では実験法の概要について、第二節では身近な人間行動に関する実験法の予測について考察する。

第一節:実験法の概要(本論①)

 心の働きや特性は目に見えず、それを可視化するために、さまざまな方法が考え出されてきた。心理学研究において、目的や対象に応じて実験法・調査法・観察法・面接法などの方法が用いられる。その中でも実験法は、心理学に関する諸現象を追及する上で、最も重要な方法であるとされている。

実験法とは、被験者に厳密に統制された環境に入ってもらい、自然な状況では統制困難な変数を作為的に操作し、その結果を厳密に観察しデータ収集をおこなう方法である。
実験法では、物事の因果関係について検討していくことが目的であると考えられている。

実験法の展開については、まず検証する仮説を決定し、次に独立変数(要因)と従属変数を設定する。そして、独立変数を変化させていき、どういった結果(従属変数)がそこに生じるのかを調べていく。さらに、独立変数の操作を受ける実験群と、操作を受けない統制群といった条件群が設定され、両群の従属変数の差などについて比較することにより、独立変数の効果について検討をする。その結果から、対象とした事象についての因果関係を明確にすることができる。

実験法の長所は、実験条件を調整したり実験群・統制群の2つの群を比較したりすることで、検証したい特定の要因を調べることができるという点であり、特定の要因と結果との因果関係を検証するのに適している。
実験法の短所は、実験条件を調整することによって、普段とは違う状況で観察するため、日常生活の自然な行動や反応が観察しにくくなるという点である。

実験法の種類には、実験室実験とフィールド実験があり、内容や目的などから合う方を選択していかなければならない。
実験室実験とは、人工的に実験室で場面や環境を設定していく方法であり、操作の自由度が高く条件の統制が簡単で厳密な実験が可能であるが、人工的であるため得られた結果の一般化が難しいという点が課題となっている。
フィールド実験とは、現実の生活場面に実験を持ち込んで実施する。自然体であるが、状況を統制する事が難しく、余計な要因が入り込んでしまい因果関係が不明瞭になる可能性や、結果に無関係な要因の影響が出てしまうことがある。また、日常の場面に実験操作を持ち込むため、内容によっては、被験者に対する倫理的問題や道徳的問題を招きかねないため、そういった点も慎重に考慮する必要がある。

第二節:身近な人間行動に関する実験法の予測(本論②)

 つぎに実験法を用いて身近な問題をどのような手続きで研究していくことが可能であるか考察する。
仕事や勉強をおこなう上で、「締め切り」を設けることは有効だといわれている。現職では、私はいわゆる管理職にあたり、部下に書類の提出を催促することがよくある。その際に緊急性の高い書類は、提出率が高いように感じている。
そのため、例えば「締め切り期限の設定が書類の提出率に与える影響」について、実験法を用いることを想定できる。
ここでは、「締め切り期限がある方が書類の提出率は高い」という仮説を設定する。
方法については、従業員(実験協力者)100人「業務改善提案書を提出してもらったものの中から、改善案が採用された場合には、インセンティブとして5万円を支払う」とあらかじめ伝える。そして、被験者100人を50人ずつ、A群とB群に無作為に分けて、A群の被験者には「締め切りは5日後」と伝え、B群の被験者には「締め切りはない」と伝える。この例では、独立変数は「締め切り期限」とし、従属変数は「業務改善提案書の提出率」とする。また実験群(A群)は締め切りを設定し、統制群(B群)は締め切りなしとした。一定期間後がA群の被験者とB群の被験者とで、業務改善提案書の提出率を統計的に比較する。結果については、仮説が正しければ、A群の方が業務改善提案書の提出率が高いと予測される。
つまり、「締め切り期限を設定した方が書類の提出率は高くなる」と結論付けることができる。

考察については、締め切り期間が5日だけであったが、他に日数の設定などを段階的に検討する余地がある。またこの場合、両群のどちらにも「採用されたらインセンティブ5万円」という条件は共通して提示しているが、インセンティブがない場合についても検討する余地がある。そのほかにも、上記の例ではA群とB群の分け方については無作為であったが、実際には性別や業績、部署なども考慮する必要もある可能性もあり、独立変数以外の条件を統制することに注意しなければならない。
 その他には、実験当時にそれぞれの抱えていた仕事量や繁忙期などの実験環境や、業務改善提案書ではなくルーティンワークに属する業務日報などのケースなど、その他の要因について因果関係が不明瞭になっている可能性を考慮する必要があると考える。

まとめ(結論)

 本レポートでは、心理学実験法について述べた。
第一節では実験法の概要について、第二節では身近な人間行動に関する実験法の予測について考察した。

※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。

例えば…

△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。

□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。

このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。

…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。

レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。

引用文献

参考文献

・浅井邦二『心理学実験計画入門』学芸社1999年
・市川伸一『新心理学ライブラリ13 心理測定法への招待』サイエンス社1991年
・大山正『実験心理学~こころと行動の科学の基礎』サイエンス社2007年
・大山正、他『新心理学ライブラリ8 実験心理学への招待』サイエンス社2012年
・後藤宗理、他『心理学マニュアル 要因計画法』北大路書房2000年
・サトウタツヤ、他『心理学・入門〔改訂版〕―心理学はこんなに面白い』有斐閣アルマ2019年
・高橋順一、他『人間科学研究法ハンドブック』ナカニシヤ出版2011年
・森敏昭、吉田寿夫『心理学のためのデータ解析テクニカルブック』北大路書房1990年

教員からの評価とコメント

評価:A

コメント:設題について適切にまとめられており、ポイントをおさえたものになっている。「締め切り期限の設定と書類の提出率」に関する実験計画は、ご自身の経験も踏まえたものとなっており、よく考えられている。

注意事項

 本資料をコピペやそのまま提出なさらないようにお願いします。
あくまでも、レポートの構成や書き方などの参考用としてご活用ください。

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この記事を書いた人

株式会社カノン・エージェンシーと株式会社ミライト・レンタリースの経営をしております。本業の傍ら、心理系大学院&fromU & 独学で心理学を勉強中です。みなさんに役立ちそうな心理学に関するテーマをアップします!!

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