【心理系大学レポート公開シリーズvol.3】心理学入門~心理学の歴史と現代社会への応用~(評価:A)
設題の確認
心理学の歴史と現代社会への応用について述べよ。
<ポイント>
心理学が学問として成立してきた歴史について述べるとともに、心理学的知見(知識)がどのように現代社会に応用されているかについて実例を含めて記述すること。ヴントの構成主義心理学以降、新行動主義までの心理学史について、それぞれの立場を簡潔に整理しながらまとめ、さらに、福祉・教育・医療・産業などの分野において、心理学で明らかになった事柄がどのように利用されているかを考察する。
レポート構成(序論)
本レポートでは、心理学の歴史と現代社会への応用について説明する。第一節では心理学が成立してきた歴史(ヴントの構成主義心理学まで)について、第二節では心理学が成立してきた歴史(行動主義から新行動主義まで)について、第三節では心理学の医療への応用について、第四節では心理学の福祉への応用について、第五節では心理学の教育への応用について、第六節では心理学の産業への応用について述べる。
第一節:心理学が成立してきた歴史(ヴントの構成主義心理学まで)本論①
心理学という学問は、もともと単一の学問として確立したのではなく、多くの学問と融合して発展しており、その背景に哲学・医学・生物学をはじめとする様々な分野の影響を受けてきた。また、現代の心理学という分野も、非常に多岐にわたって枝分かれしている。
心理学の起源は、古代ギリシアの哲学にさかのぼることができるが、科学的な考え方に基づいた心理学は、19世紀に自然科学が発達したことによる。そして、心理学はその影響を受け、自然科学的研究態度が採り入れられていくことによって、哲学の一部であったものが独立した学問になっていった。
科学的な考えに基づいた心理学の起源としては、ヴントだといわれている。ヴントは、1879年にライプツィヒ大学に初めての心理学研究室を創設したことで有名であり、彼の心理学は、後の構成主義心理学といわれる実験心理学を展開した。彼は、「意識」は人の経験を通して形作られるものであり、「経験」は感覚、連合、感情の組みあわせであると考え、それらの心的要素がどのように組み合わさって結合しているのかを、「内観」によって研究した。彼の「意識」についての研究は、構成主義と機能主義に分割されていき、それらはその後の行動主義の発展を導くものとなった。
構成主義心理学の中心人物はティチェナーであり、人の意識経験を基本的な構成要素として、「感覚、イメージ、感情状態」からなると結論づけている。つまり、構成主義は「心とは何か」を理解するものである。
一方、機能主義者と言われる代表人物はジェームズであり、彼は心的現象とは環境へ適応し生存するための機能(課題への適応、学習、問題解決)であり、習慣もまたその関連機能だと考えた。機能主義心理学は、「心は何のためにあるのか」「心とはどのように働くのか」を理解するものであり、ダーヴィンの進化論と強いつながりを持っており、人の意識的経験が人の環境への適応にどのように働き、環境内での人の繁栄へどう繋がるのかを理解することを目指していった。
第二節:心理学が成立してきた歴史(行動主義から新行動主義まで)本論②
その後、ワトソンはヴントの意識を自己観察で捉えるという実験心理学の非科学性を非難して、心理学が科学であるためには、客観的に観測可能な行動のみを心理学の対象とすべきであるとする行動主義を提唱した。これは、刺激(S)と反応(R)で全てを説明しようとするところからS-R理論とも呼ばれている。
そして、ワトソンの行動主義の流れは新行動主義といわれるいくつかの流れに分岐していく。
ハルは刺激(S)と反応(R)の間に、生物有機体(O)の内部に存在する内的過程(動機・期待・知識など)を媒介変数として仮定し、S-0-Rの関連を明らかにしようとした点で行動主義とは異なる。また、ハルは欲求が高まった時に、ある行動・反応をすることで欲求が低減する「動因低減説」が有名である。
同じく新行動主義者のトールマンもS-0-R理論について、より媒介変数を内的な予期、あるいは期待といった認知的要因を媒介変数(仲介変数)とした。そして、個人の持つ認知形態のことを「認知地図」と呼んだ。
一方、スキナーは、行動分析の創始者で、オペラント行動の研究から、行動主義をさらに徹底した徹底的行動主義を主張した。
その後、これらの行動主義の考えに基づいて、行動療法という心理療法が生まれている。
第三節:心理学の医療への応用(本論③)
心理学と一口にいっても、応用される場は様々である。ここでは、医療、福祉、教育、産業の分野で応用されている心理学について述べる。
臨床心理の仕事は医療と深い関係にあり、医療の現場では、心理学の知識が活かされている。例えば、医学部で医師を目指して学ぶ人々のカリキュラムの中には行動科学という科目が用意されていることが多く、そこで学ばれるのは主に心理学の知識である。医師以外をみても、看護師、理学療法士、歯科衛生士、言語聴覚士など、医療系の資格養成課程の多くにも心理学の授業があるため、医療関係の仕事につく人のほとんどがなんらかの形で心理学を学んでいることになる。
医療の仕事につく人が心理学を学ぶ理由は、患者の心理や行動を心理学的に理解することが治療やリハビリをスムーズに進めるのに役立つことや、対人関係やコミュニケーションについての心理学の知識が患者との関係改善に役立つことなどが考えられる。
第四節:心理学の福祉への応用(本論④)
心理学の知識が求められるのは福祉系の仕事も同じであり、医療と同様に、心理学の知識は福祉の利用者の行動や心理の理解、利用者とのコミュニケーション改善に役立つため、社会福祉士などの資格を取得するのに心理学の学習が必須とされている。また、児童相談所など子どもや青少年の福祉に関わる仕事では、その年代の子どもたちの身体的・心理的発達についての発達心理学の知識が必要になる。介護福祉士など高齢者の福祉に携わる仕事では、加齢にともなう人の行動や心理の変化についての老年心理学が役立っている。また精神保健福祉士のように心の病気をもつ人と医療との関係をコーディネートする仕事では、心理学の知識は心の病気を理解することの基礎になっている。
第五節:心理学の教育への応用(本論⑤)
教育の分野でも心理学が活躍する代表的な現場である。大学で小中学校、高等学校の教員を養成する教職課程では教育心理学と教育相談が必修科目になっている。一般に教職課程の教育心理学の授業では、子どもや青少年の発達に関する知識、授業の設計と実施に関する心理学的な知識、そして教育評価や個性のアセスメントについて学ぶ。また教育相談の授業では、教師による生徒の教育相談を行うのに必要な心理学の知識や技術が教育される。教師を目指す大学生はそうした心理学の知識を学んでから教育現場に出て行き、心理学の知識を活かして教育を行っている。
第六節:心理学の産業への応用(本論⑥)
第三節から第五節で述べてきた分野のほかには、産業の分野でも心理学の知識や技術はさまざまな形で役立っている。例えば、企業や会社などの職員採用人事である。職員採用試験でよく用いられる職業適性検査は心理学的アセスメントの技術を用いてつくられており、それらの検査を実施することや、採点する仕事でも心理学が関わっている。そして、人事管理にも心理学の知識が活用されている。そのほかにも、広告やマーケティングの仕事、社会調査やデータ分析に関わる仕事でも、心理学の知識は幅広く活用されている。また、車や電気製品などの機械を使いやすいデザインにすることや、Al (人工知能)の研究や開発にも学習心理学の知識を中心に、心理学の研究成果が活かされている。
まとめ(結論)
本レポートでは、心理学の歴史と現代社会への応用について述べてきた。第一節では心理学が成立してきた歴史(ヴントの構成主義心理学まで)について、第二節では心理学が成立してきた歴史(行動主義から新行動主義まで)について、第三節では心理学の医療への応用について、第四節では心理学の福祉への応用について、第五節では心理学の教育への応用について、第六節では心理学の産業への応用について説明した。
※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。
例えば…
△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。
□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。
このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。
…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。
レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。
引用文献
・大山正『実験心理学~こころと行動の科学の基礎』サイエンス社2007年
・大山正、他『新心理学ライブラリ8 実験心理学への招待』サイエンス社2012年
・サトウタツヤ、他『心理学・入門〔改訂版〕―心理学はこんなに面白い』有斐閣アルマ
2019年
・社会福祉士養成講座編集委員会『心理学理論と心理的支援』中央法規2015年
・山田冨美雄『医療の行動科学Ⅰ:医療行動科学のためのミニマム・サイコロジー』北大路
書房2019年
教員からの評価とコメント
評価:A
コメント:前半は歴史、後半は応用について述べられており、全体的によくまとまっている。特に後半の医療系についてよく述べられている。また、その他の様々な心理学が満遍なく記述されている。
注意事項
本資料をコピペやそのまま提出なさらないようにお願いします。
あくまでも、レポートの構成や書き方などの参考用としてご活用ください。
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