【心理系大学レポート公開シリーズvol.5】心理学的支援法(基礎)~カウンセリング発展の歴史と技法~(評価:A)


設題の確認

カウンセリングが発展するに至った近代以降の歴史を簡潔に述べ、どういう人を対象としてどのように進めていくのか、その技法などに触れながら述べよ。
<ポイント>
まず、20世紀半ばに助言指導、職業指導から始まったカウンセリングの歴史を知る。次に、どのような人を対象に行われ、 どのように進めていくものかを学ぶ。カウンセリングは決して万能ではなく、その対象者も限られることを考慮すること。
レポート構成(序論)

本レポートでは、カウンセリングについて説明する。第一節ではカウンセリングの発展の歴史について、第二節ではカウンセリングの技法と対象について、第三節ではカウンセリングに必要な能力と態度について、第四節ではインテイク面接の流れについて述べる。
第一節:カウンセリングの発展の歴史(本論①)

現代のカウンセリングの起源は、20世紀初頭のアメリカである。当時のアメリカでは、18 世紀半ばから19 世紀にかけて起こった産業革命の影響により、急速な工業化により高度経済成長を遂げたと同時に、社会全体は望まずして価値観や生活様式の大きな変化に対応せざるをえなくなり、こうした変化に一番敏感な若者たちは生き方がつかめず精神的に苦しみ、悩むものが増大した。その結果、早期退職者が続出し、転職を繰り返す人が後を絶たず、また生活苦から犯罪に手を染める人も増え、社会問題となっていた。
それらの問題を打破するため、フランク・パーソンズは恵まれない若者たちを援助するために、1908年にボストンの市民厚生館で職業相談所を開設した。そこでは、科学的な職業選択モデルによるカウンセリングが行われ、相談員はカウンセラーと呼ばれた。
1930年代頃には、経済的大恐慌による社会的混乱と人々の精神的問題の増大により、精神科医が中心となり、直接的な指示や指導を与え、患者がそれを実践するという方法の精神療法がおこなわれた。
それに対比する形で1940年代にカール・ロジャーズが確立した来談者中心療法は、非指示的カウンセリングと呼ばれ、できるだけ指示や指導を与えず、共感や受容を繰り返すことで、自発的に判断や行動ができるように促すものと強調した。
そして、1950 年代にはロジャーズの影響を受け、職業指導からカウンセリング心理学への移行が起こった。
1960 年代になると、様々な心理学の理論に基づいたカウンセリング理論や技法が次々に発表され、1960 年代後半からはカウンセリングの役割と機能を明確化する動きが高まり、1970 年代になるとカウンセリング心理学の活動や存在は好意的に社会に受け入れられるようになっていった。1990 年からはカウンセリング心理学は、新たにアイデンティティが確立できて、さらに専門領域としての独立性が確立されたといわれている。
第二節:カウンセリングの技法と対象(本論②)

カウンセリングは比較的歴史が浅く、理論は数多く存在し、新技法などについては、いまもなお次々に開発されている。
ここでは具体的な技法とその対象についていくつか触れておきたい。
まず、精神分析の理論をもとにした技法としては、自由連想法があげられる。これは、患者が頭の中に浮かんでくることをそのまま言葉にして分析し、外からの刺激に対して、自分の心を守ろうとする防衛機制を明らかにするとともに、その背後に隠れている無意識の欲動や葛藤について患者が洞察していくのを手助けする。適応となる対象は、神経症など心因性精神疾患に分類される精神障害者であるといわれている。
次に、行動療法の理論をもとにした技法としては、系統的脱感作法があげられる。これは、人が不安とリラックスを同時に体験できないといった「逆制止の原理に」基づいて、不安場面を想像させ、生じた不安の逆のリラックス法によって、恐怖刺激と恐怖反応の結びつきを弱める技法のことである。主に恐怖症の治療に用いられる。
最後に、認知療法の理論をもとにした技法としては、認知再構成法があげられる。これは、不安などネガティブな感情に関連している不適応な認知を客観的に捉えることで、適応的な認知へと再構成していくものである。適応となる対象は、主にうつ病性障害をはじめとして、その他にはパニック障害、身体表現性障害などが様々な精神障害に効果的であることが実証されている。
第三節:カウンセリングに必要な能力と態度(本論③)

第二節で述べたように、カウンセリングの技法と対象は、その対象者がそれぞれ限られるため、カウンセリングに万能なものはないといわれている。しかし、成功したカウンセリングと不成功に終わったカウンセリングとの分析によると、成功の要因として共通したカウンセラーの能力と態度がわかってきている。

1990 年代にアイビイは、カウンセリングや心理療法を分析し、どのアプローチにも共通するカウンセラーの技能(マイクロ技法)を階層表にまとめている。スキルの階層について、最も基礎的なものを「基本的かかわり技法」と呼んでおり、特にその中でも「基本的傾聴技法」は、カウンセラーが身につけなければならないものとしている。
これについては、ロジャーズが提唱した来談者中心療法においても、「傾聴」は重視されている。
また、来談者中心療法では、「傾聴」をおこなう際には、基本的態度である「無条件の肯定的関心・共感的理解・真実性(一致性)」も重要だといわれている。
無条件の肯定的関心とは、クライエントを一人の人間として認め、無条件に肯定的な気持ちをもって接することである。
共感的理解とは、クライエントの立場に立って、その気持ちをできるだけ正確に理解しようと努めることである。
真実性(一致性)とは、クライエントに向かった時の自分自身の内面的感情を理解し、そのまま表現することである。
カウンセラーにこれら3つの条件が備わることで、クライエントは自ら人間的な成長に向かっていくといわれている。
第四節:インテイク面接の流れ(本論④)

最初の出会いの場は、問題解決に向けて問題を理解し合い、その後の援助・治療関係の準備に配慮する。具体的には、双方が話し合いに十分に集中できるように、生理的条件や慣習から1時間くらいの時間が確保する必要がある。また、くつろげて安心でき、話し合いが妨害されないようにするため、静かであり、プライベートな会話が外部にもれないことほどよい物理的条件が備わっていなければならない。
そして、カウンセラーは、クライエントが自由に問題を表現できるように問いかけ、電話や申し込み表の自己記載などあらかじめ情報が伝わっている場合でも、改めて主訴や問題を尋ねる。
問題およびその悩みについての理解がひとまずなされると、解決の手がかりを得るために問題をいろいろな角度からアセスメントする必要がある。
仮に、問題解決という目的のために、解決の手がかりを得る共同作業が理想的に進めば、何をどうしたらいいかなど、クライエント自身が感じる。そして、それらをいっそう明確にするために、カウンセラーは、短期的・長期的に何をどうしたらいいかについて、専門家としての方針を提示し、クライエントと合意の成立を図る必要がある。
まとめ(結論)
本レポートでは、カウンセリングついて述べてきた。第一節ではカウンセリングの発展の歴史について、第二節ではカウンセリングの技法と対象について、第三節ではカウンセリングに必要な能力と態度について、第四節ではインテイク面接の流れについて説明した。
※ここからは、本論で分かったことを各々書いていくと読みやすい結論になるかと思います。
例えば…
△△△から○○という事実が分かり、○○ということが推測される。
□□□からは○○であったため、○○などが存在していた。
このことから○○が△△において大きな役割を担うであろう。
…ような感じで、各々まとめてみると良いかと思います。
レポートのテーマによりますが、まずはテーマと本論の要約をざっくり説明し、次に本論で分かったことを書くと読みやすい結論がおすすめです。
引用文献

参考文献
・上島国利『やさしくわかる精神医学』ナツメ社2017年
・河合隼雄『カウンセリングの実際問題』誠信書房 1970年
・高塚雄介、他『臨床心理学~やさしく学ぶ~』医学出版社 2009年
・国分康孝『カウンセリングの理論』誠信書房 1980年
・佐治守夫・岡村達也・保坂亨『カウンセリングを学ぶ』東京大学出版 2007年
・精神保健福祉士養成セミナー1(第6版)精神医学―精神疾患とその治療』へるす出版2017年
・日本精神保健福祉士養成校協会『新・精神保健福祉士養成講座1(第2版)精神疾患とその治療』中央法規2016年
・野島一彦『臨床心理学への招待(第2版)』ミネルヴァ書房 2020年
・渡辺三枝子『新版カウンセリング心理学』ナカニシヤ出版 2002年
教員からの評価とコメント
評価:A
コメント:丁寧に調べてまとめられており、構成も適切である。
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