傷つく偏見の解消、『泥棒洞窟実験』を知ってる?


2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsの広まりと共に多様性の尊重が求められるよ
うになった現代。ですが、「女の子はピンク色」、「男の子は強くあれ」といった昔ながらの
考え方がついつい口をついてしまうことってありませんか。

目次

偏見:スキーマとストレオタイプ


人は、外界を捉えるヒントにするために「スキーマ」を活用しています。スキーマとは、過
去の経験に基づいて体制化された知識構造のことで、人はこのスキーマに関連付けることで情
報を処理しています。赤ちゃんで例えると、「可愛い・夜泣き・ミルク・柔らかい」といった
「赤ちゃんスキーマ」を利用しているといった感じです。


 このスキーマが「ステレオタイプ」に繋がる場合があります。ステレオタイプとは、「A型は
几帳面」、「先生は真面目」、「保育士は優しい」といった性別や人種、職業などのイメージ
から相手がどのような人物か判断することです。このような固定化されたイメージのことをス
テレオタイプとよびます。ステレオタイプを持つ理由は幾つかあるのですが、その1つは情報
処理にかかる負担をできるだけ軽減するためと考えられています。

実は、知らぬ間に誰かを傷つけている?


ステレオタイプそのものは悪いものというわけではないのですが、ステレオタイプの認知は
先入観や思い込みも含まれているため、全てが正しいとは限りません。実は、こうしたステレ
オタイプに基づいたネガティブな感情は、さらに「偏見」に繋がってしまう危険性をはらんで
いるのです。
 しかし、日常の中で、以上のようなことを考えながらわざとステレオタイプをしている人は
少ないですよね。よって、自分でも気が付かないうちにネガティブなステレオタイプによる偏
見で誰かを傷つけているかも知れないのです。
相手の勝手な思い込みや、誰かの心無いデマによって自分という人間を決めつけられてしま
うことは悲しいことです。自分の一方的なステレオタイプで、知らぬ間に誰かを傷つけていな
いかちょっとだけ自分の言動を見つめてみませんか。
では、ステレオタイプによる偏見を変えるにはどうしたら良いのでしょう。
こんな理論がありますので、興味のある方はぜひ。

偏見の解消につながる、『泥棒洞窟実験』


心理学者シェリフ(Sherif et al.,)は、社会的な偏見を理解するための「泥棒洞窟実験」を行いま
した。ほぼ属性を持たない普通の少年22人を2チームに分けて、チーム間に敵対心を高めさせ
、それを解消させる実験です。この少年たちに野球や綱引きなどの競争をさせるとチーム内の
結束は高まる一方で、相手チームへの攻撃性は強くなりました。次に、競争のない楽しい時間
を過ごしましたが対立は助長されてしまいました。最後に、両チームが協力しなければ達成で
きない目標を与えたところ、敵意が軽減し初めて友好的な関係に変わったのです。この結果か
ら、偏見の解消にはただ同じ時間を過ごすだけでは効果がないということが分かりました。つ
まり、偏見の解消には、「共通の目標の追求が重要」といえるのですね。

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師)のアバター 沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師) 医学博士/臨床心理士/公認心理師

コメントをどうぞ

コメントする

目次
閉じる