とある心理士の南ヨーロッパ旅行記
2016年9月18日
フランス、ニースの経由地フランクフルトに到着。チケットを取る時に英語で「フランスは本気でテロ対策してるから入国する気ならそれ相応の覚悟と時間を持ってこいよ」的な警告文が出て空港スタッフもはじめてみたとのこと。そんなわけで座席指定をサボったらまさかの4人シートの真ん中。隣のドイツ人は12時間のフライトで11時間寝ている。トイレ行きたいのに肩叩いても揺すっても起きない。本当に死んでるんじゃないかと心配したころにムクっと起き出し、スッチーを呼びつけると、そいつはオレンジとリンゴを「混ぜた」ジュースを要望。紳士口調のドイツ語だけどリンゴとオレンジだけ聞き取れたからそう言ったに違いない。スッチーも3回くらい聞き返してたけどそう言ったに違いない。半信半疑のスッチーがオレンジとリンゴを一杯ずつ別々のカップで持ってきたことにプロの繊細さと万一の聞き間違いでお客様に不快を感じさせない配慮を感じる。が!紳士は乱暴に2つのカップを両手に取ってスッチーの目の前で混ぜ出す。その姿とドヤ顔に逆に魅力されてしまった瞬間。3分後、放置された方のカップがお決まりのように倒れて僕にかかることも知らなかったからそのときにはただただ魅力された瞬間。今は寝息を止めたい。
9月19日
南仏 ニース初日。さすが世界のリゾート地、空港からストレスフリーでサービス満点のホテルにアクセス!シービュー最高!…というわけにはいかない。
ここは外国。飛行機で思いっきりリンゴオレンジをぶっかけられてもしれっとされる外国、いやフランス。しかしそんなのは、序盤にすぎなかった。
空港から満員のバスに乗る。定刻になっても発車しないし、行き先が不安になったので、暇そうにベンチでくつろぐおっさんに尋ねると、タバコに火をつけながら「コンプロンパ!(わからん)」と機嫌悪そうに一喝。20時までにホテルに着かないと追加料金がかかるのに!
5分後…ようやく動き出すバスの運転席の顔でも見てやろうと目をやると、さっきの現地人だと思ってたおっさんが運転手!!
しかし、フランス特有なのか忘れたけどニースのバスってアナウンスもないし、ストップボタンを押さないとバス停に止まらない。もうヒヤヒヤで次々通り過ぎるバス停の名前に目をやり、路線図に目をやり、指はバスのストップボタンに添えるこの様はグラデュウス以来のシューティングゲーム。ただし今回はホテル延着5千円をかけたグラデュウス。絶妙のタイミングでストップボタンを押す。一緒に降りてきた観光客になぜか会釈されたけど、きっと僕のストップボタンに奴らは救われたのだろう。時間もまだ8時まで30分もある。勝利を確信し、ホテルへ向かうと…閉まってる。何故だ!!!閉まってるというか入り口がない。説明難しいけど入り口がない。グラデュウスのラストは前方壁だけステージとか無理ゲーでしょ。まさかと思って建物を右回りして裏に行くも入り口がない。また現地人に地図を見ながら入り口を聞くと、「アゴーシュー、アゴーシュー(左、左)」と言われやはり左回りで戻って出発点が入り口らしい。一周したかったのと右回りの方が地図上で近かったので「アドワット、アドワット(右回り)」でいくと伝えるとスゴイオーバージェスチャーでなぜか左回りを勧められ結局合計二周させられる。電話も使えず困り果て、人の良さそうなおっさんに声をかけると、片言フランス語を一生懸命理解してくれてホテルに連絡までしてくれる。聞き取れたやり取りは「シノア(中国人)が困ってる」。
どうやらホテルは閉まってる?潰れたらしいと教えてくれて車で市内中央の安いホテルまで連れてってくれるという。こんな優しいフランス人みたことない!!感激しながら車内で話をしていると、その人はアルジェリア人とのこと。そして漁師であるとのこと。フロントに可愛い犬の写真があったので褒めると「中国では魚を食うように犬を食うって本当か?」とか言われる。先ほどの「今日はおまえを見つけて大漁だ!」というジョークが返答次第ではジョークじゃなくなりそうだったのでジャポネだというと、おっさんは車がヒュンダイ製だとアピールしてくる。うん、それ韓国。
宿に着いておっさんにお礼をし、部屋のWi-Fiからパリにいる日本語とフランス語が堪能で超イケメンなBon ami ダイクンヌ に経緯を連絡し助けを求める。今後もフランス滞在時は利用していこうと思うしこの記事を見てると思うので褒めておく。
どうやらホテルはスタッフに連絡して入れてくれるシステムらしい。そのスタッフとやらは英語が通じるらしいので電話番号を聞いて今電話をかけて戦うところ。「8時前には帰ってないからお前らの到着が遅かったんだろ」とか第一声からこちらが聞いてもいない予防線バリバリのスタッフと戦うところ。空港からストレスマックスで窓もない安宿の中で戦うところ…
9月20日
南仏二日目。1日目が嘘のように何もトラブルはない。ニースからアンチーブヘ。
フランスに慣れてきたのかもしれない。手際の悪い店員による長蛇のコンビニの列に並ぶこともチケット売り場で順番がきて指定された窓口いってもしらんおっさんが占拠していることも道端に犬のウンコがたくさん落ちて欠片を踏んだこともレストランのテーブルがパン屑だらけなのもそれで大量の鳩が入ってきても誰もきにとめないこともJCBカードってなんだよとレジに蔑まれても電車降りて無賃乗車で逃げた若者がサブマシンガン装備に警察にフルボッコにされてても、みんなフランスらしくて好き。
そう、フランスではサービスは買うもの。ただサービスを買っていないだけなんだ。サーヴィスはいただけないがフランスのいいところはご飯がおいしい。その辺の潰れそうなパン屋で買うフランスパンサンドイッチさえめちゃくちゃおいしい。レストランはいうまでもなく。何故、フランスではどのレストランでも食べれるスープデポワソンが日本では味わえないんだろう。しかし会計時にくれる口直しはどのレストランもまずい。異様に甘くて口直しじゃなくて今までの美味しい食事を台無しにする。なんなんだあれ。今日のレストランは珍しくレシートだけ持ってきて口直しがつかなかったからチップはずんだ
9月21日
4日目はモナコ公国に電車で入る。フランスに囲まれた世界で二番目に小さなこの国はみんなフランス語をしゃべっているけれどフランスではない。まず店員さんが優しいし英語が通じる。駅のキヨスク対応がニースのルイビトンに匹敵するくらい丁寧でびびる。水一本5ユーロだけど。まーここはお金もちの国。駅前の渋滞はベンツとアウディとポルシェ。ルノーだとかシエトロンだとかそんなものはあんまり走っていない。うーん、リッチ。さらに渋滞の理由が紳士!いちいち歩行者に道を譲っている。フランスならひき殺されるタイミングでもここではロールスロイスが歩行者に道をゆずっている。金持ちのゆとりは信号さえ必要としないらしい。と思いきややたら警官が多い。ここは人口人口55人に一人の割合で警官がいるらしい。大学で60人教室で教えたり二クラス60人の担任をやっている僕より監視する人数が少ないじゃないか!しかも向こうは鉄砲と棍棒を装備。あれいいな。しかし、いきなり小銭を要求してくるホームレスもいないし、いらん帽子を断ったらもっといらんサングラスを売りつけてくるおっさんもいないし、シノア!といきなり大声出す子供もいないし、本当にフランスと大違いで気も緩む。とても小さいがなんて素敵な国なんだろう。が、ホテルのフロントだけは何故か対応いじわる。ランドリーの場所やトイレの場所聞いてもフランス語でしか返事しないし指差す方向が決まってドアとドアの中間。どっちだよ!モナコでもホテルはボロ儲け産業だから対応悪いのかと思って地図みたらここは10メートルフランス側だった。
9月22日
モナコから電車でジェノバ入り。つくづくお国柄を感じる今回の旅。イタリアに入った瞬間、みんなフレンドリー&テキトー。電車の検札で車掌は「みんなモッテルカーイ!」のノリで、客はチケットを手に掲げて「オー!」。その間をただ車掌は歩く。ただ歩く。絶対チケット見てない。案の定、次の駅から乗車したイタリア人が自分の指定席が埋まってて困っている。いや困ってない。即、隣の席に座って姉ちゃんに絡み始めてる。姉ちゃんも悪い気はしないようで、今や本来男の席であったであろう間違えた場所に座ってるおばちゃんと3人で「もうここでいいよ!つかおばちゃん、何でそんなに大きいサボテン持ち込んでんの!俺の席トゲトゲじゃん!」とかなんといってみんなで大爆笑している。後ろからきたおっさんもそれで席がなくてまたズレて座っている。1つずつずれていくから完全指定席の特急でみんな「ここ空いてる?」と聞いて返答の前に座る&談笑の繰り返し!駅に停まるたびにそんな出会いと別れを繰り返す相席エクスプレスはやっとジェノヴァに到着。
ガイドブックによるとここから乗り換えチケットが必要。売り場の場所を聞いた駅員には英語もフランス語も日本語も通じず。ただジェスチャーとイタリア語で「お前の言ってることわけわからんから、一駅だしその特急券でいいからそこの電車乗れ」と、言われる。行き先も伝えてないのにテキトーに乗らされた電車で無事に市内に着く。駅員さん、グラッツィエ
9月24日 ♯海外でレンタカーする予定の人に捧げる♯
快適なドライブをサポート!「海外レンタカー」を検索するとどこのサイトでも出てくるうたい文句だけれど、快適であったことなんて一度もない。オートマ車を予約したのに慣れないマニュアル車を渡され道中三百回くらいエンストしたり、片田舎でパンクして帰りの飛行機乗り過ごしそになったり、海を越えてスピード違反の切符が何枚もエンドレスで届いたり…
それでもなお、レンタカーしたくなる魅力は、そこが外国の中で唯一の日本になるからでしょう。外国の電車の中では梅干しを食べようものなら、「そのモモ腐ってるわよ。」とおばあちゃんに勘違いされるし、ベビスターラーメン食べようものなら、物珍しさに子どもの視線が痛いし。たとえば車移動ならそんなことないし、後なんだかんだいって移動がやっぱり楽。海外のわけわからないダイヤに翻弄されて電車待ちしなくていいし、スーツケースとかゴロゴロしなくていいし、あ、やっぱり快適なんだ!
というわけでジェノヴァからベネチアまではレンタカーで移動することにして日本で予約もしていった。なんの抜かりもない。現地についてまずは熊みたいな店員と日本流のきめ細やかな指差し確認。オートマ車チェック、スペアタイヤチェック、交通事情のチェック。イタリアではスピード違反より道の凸凹に気をつけろとのこと。
パーフェクト、史上初の「快適なドライブ」が始まる!後は熊の書類整理待ち。熊は上司らしき人に「エンボス!」とか言われては書類を何度もチェックしてる。そしてクレジットカードを保障用にもう一枚出せとか言われたので出すとまた上司に「エンボス!」とか言われている。すると熊は整理してた書類をこっちに出して「エンボス!」。なんだエンボス!って。「快適なドライブを!」的な挨拶か。
が、熊が悲しそうな顔をして何やら書いている。トラブルの予感。やめてくれ。恐る恐る見たメモ用紙には凸凹マークが書いてある。あーさっき言ってたBumpy road のことか。しかしそれとも違うらしい。ん?カードの数字に凸凹が必要?なんだそれ。そんなもんネーヨ触れば分かるだろ?と言ったら熊は車を貸せないとか言い出す。
突然ぶった切られる快適なドライブの旅。なんじゃそりゃ!そんなもんバウチャーに書いてないじゃん!とか、フランスでも日本でも全然使えるし!むしろカードに凸凹あったらSuicaとか改札でチャージできないじゃん!とか言っても無駄。逆にスイカの説明に時間を食われる始末。なんか数字に凸凹ないと数字を書き写せないらしい。なら俺が綺麗な字で書き写してやる!とか今時そんなの写メれ!ボスに送れ!ボス呼べ!つーかフルで保険入ってるのになんで保障用に凸凹カード必要なんだよイラねーだろとかいっても、絶対「 We have no solution」と返してくる。「 We have no solution」とかMicrosoft word 2003で 書いてた卒論全部消えた時にあの邪魔なイルカに言われて以来だし。
30分やり取りした結果のソリューションは、レンタカー解約、むしろエンボスカードしか持ってないけど免許持ってない嫁ちゃんのカードで再契約、そこから免許持ってる僕に特殊契約という形で又貸しするというよくわからない方法。ちなみにこの方法はレンタカー側から出した提案じゃなくグーグル駆使して自分で考えた方法。100ユーロ以上高くつくけど。レンタカー側も「それならいけます!」とか。それなら初めから言えし。サービスでつけてくれたカーナビは出発5分後からずっと方向不明になってるし道は平らだし。
次回からチェック項目に「エンボス!」も加えよう。
9月26日 ♯現地では名物料理じゃなきゃイヤっ!って人に捧げる♯
『Mottenai(爆)?』友人が一連の記事を見てLINEで送ってきた一文である。
いや、すべて本当…大袈裟に盛ってるんじゃなくてむしろそういう運命を持ってるだけなのかもしれない。今回は証拠写真も入れておくよ…。
そういえば、トラブル続きなのも盛り塩?清め塩?用に持ってきた塩を初日からあれこれ料理にふりかけている報いなのかもしれない。最終的に封が甘くてリュックの中で散乱している塩。この塩たちが一斉に怒ったとしたら….それは困る。塩を清めるのも塩でいいのかしらと迷っているうちに、なんとか無事にベネチア・マルコポーロ空港に到着。冒険家マルコポーロも東方見聞録なるものを書いたら皆から、は?黄金の国ジパング?Mottenai?木から匂いのする国?Mottenai?フビライハン?Mottenai?とか言われて可哀想だったなーと思いを寄せ中心地のレストランへ向かう。
前置き長くなってしまったが、「ベネチアにきて名物料理のクモガニ食べたい!」ここから今回のお話がはじまる。わたくし食に関しては、盛り塩を駆使するくらいだから現地人に聞き回ってでも美味しいものを食べたいタイプ。物価の安いイタリアでいえば、モナコのクレープ一枚の値段で激うまピザが食べられる店を当ててきた。フランスでは5ユーロくれれば5分で絶対感動するサンドイッチを用意できる自信がある。
しかし、ベネチアって歩いても歩いてもグルグル同じところにたどり着くし、ポルシェだとかフェラーリに煽れて運転疲れたし、最終的に店の前で呼び込みしてた兄ちゃんに導かれるままレストランに入る。さしずめこの兄ちゃんを小熊としよう。英語メニューを渡されるが、クモガニなんて単語はわからない。迷っていると「 なんだお前、日本人か」と英語メニューをさっさと取り上げられて写真メニューが置かれる。この小熊!仕事ができる!分かりやすいじゃないか!おかげでイカスミパスタは頼めた。しかし肝心のクモガニは写真に無い。だが、この小熊、crabどーのこーのと言ったらすぐに「オーケー!パーフェクト、サー!」すぐに理解してくれた。非常にスマート!「いつものカニで頼む。」「かしこまりました。」この感じで通いあう気分はもうベネチア紳士。良かろう、小熊よ、お前のオススメ料理とやらも組み込もう。
そして…来ました!来ました!楽しみにしていたカニが!来ましたよ!ほう、クモガニとやらはハサミが大きくて縦長なのか。なるほど、ヒゲも生えているのか、まるでザリガニのようだな。と思ったら、これは正真正銘でかいザリガニじゃねーか!写真一枚目。確かに似てるけれども!いや、似てない。コレナニ?と言ったら満面の笑みで「Crab Lobster !」とか言ってやがる。これが小熊のオススメのやつなのか?カニが通じてないのか?よぎる考えの中で、再度小熊に「カニだ!ベネチア名物料理のカニを持ってきてくれ!ザリガニ(Lobster)じゃねーぞ、あと、さっき頼んだイカスミパスタも早くね!」と言ったら出てきたのが、そうそう、コレコレ。ハサミが大きくて縦長で…(略)の上に乗った黒いスパゲッティー。写真二枚目。ドリフのコントかよ!だ・か・ら!ロブスターじゃねーっつーの!しかも、crab and pasta が なんで crab with pasta にこの小熊は脳内変換してんだよ!カニ味噌より足りないんじゃないか!怒りさえ込み上げる。
しかし待てよ、ここは海外。自分の拙い英語が悪かったんじゃないだろうか、あるいは、ロブスターはカニ科なのか…あれ?カニってクラブじゃなくてシュリンプだっけ?そもそもカニとは何だっけ?横歩きしているのがカニなら寄り道ばかりの人生で前に進めない自分こそカニなんじゃないか?
もうベネチア紳士気分はしぼみ大して好きでもないザリガニ2匹と味の薄いイカパスタを悲しい気持ちで食す。昔、イカでザリガニを釣って両生物の命を粗末にしていたバケツを思い出す。そんな懺悔の気持ちがこの一皿に具現化されている。そしてトドメに頃合いを見計らって出てくる3品目の巨大な魚。魚は粗末にしたことがないのに…。でも、もういいんだ…。もうカニは出てこないんだ…とても悲しい…なれることなら、私はカニじゃなくて、貝になりたい。そんな気持ちだったが、本当の敗北はここから。
お会計を頼むと何と293,50ユーロ!!!!!!ドリフコントさせられて、サービス料12%ってなんだよ!やられた。走馬灯の様に思い返される料金の載ってない写真メニューや値段を聞かなかったオススメ料理。そしてロブスターはザリガニじゃなくて高級食材だということ。何よりも文句も言わずふて食いしてたことやイタリアは安いという先入観。段々と料理の値段が高くなっていくレシートを見ても、こんなとき人はまだ人を信じたくなる。これは小熊の善意なのか?この店最高の料理でもてなしてくれただけなのか?おや、レジで他の客が揉めてるぞ。今更調べたネット評判では「最悪」とか「ボラれた」とか投稿されまくってるぞ。隣でデザート代わりにロブスターピザを食いまくってる客はこの後いくら取られんだ?ブチギレるか我慢するか微妙な請求額で、僕はこの小熊にこう言いたい。
ぶっちゃけ…価格Mottenai(爆)!?
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