質の良い心理系研究論文の見抜き方




心理系YouTuberは、再生数稼ぐためかしらないけれど、イケてる恋人と出会う心理学的方法とか言っていますが!今のところ、まだ!大衆に媚びていない私は、イケてる論文と出会う方法をこっそり教えます。前回は、ナンパスポットの伝授だとしたら、今回は、そこで最高にイケてるカレシカノジョと出会う方法です。もうこのたとえが十分に媚びている気もしますが、この記事は真面目!

というか、意外とちゃんと論文検索とか論文の見つけ方って教わらない気がする。イケてない論文と付き合うと、その先はもう、そいつがイケてないと気づくまで命の時間を無駄に振り回されることになります。というわけで、卒論執筆や大学院受験にお役立てくださいその中でそのなというわけで、まずは以前の記事からのおさらい。

目次

前回のおさらい

「心理系研究論文の集め方」という記事では、以下の4点が論文の集め方で重要と述べました。

  • 学会に参加する・学会発表をみる
  • 学術雑誌を読む
  • 文献データベースを検索する
  • 論文整理の最強ツールは「Mendeley 」

今回は、その中でも②と③に焦点を当てて、より良い論文の集め方をご紹介したいと思います。4点についてより詳しく知りたい方は下を参照ください。

Google Docs
Post-Traumatic Stress Disorder.pdf

②学術雑誌を読む

学会や専門機関が定期的に発行している、審査を経た比較的質の高い論文が掲載されている。論文の長さは通常10ページくらいであり、これを読みこなすのは、はじめのうちはかなりたいへんであるが、卒論の場合は必ず通らなければならない関門。

③文献データベースを検索する

コンピュータやインターネットの文献データベースによって先行研究を検索する方法。著者名やキーワードを入力すれば検索でき、文献の所蔵場所を教えてくれたり、本文をPDFファイルで見たりすることも可能 。

これについてもう少し掘り下げてみましょう。卒論や修論の際に必ずといっていいほど学生さんが口にするのは「自分は○○というテーマ(領域)に関心があるが、ネットで調べても論文が全然出てこない」という言葉です。これははっきり申し上げますと、ほぼ100%論文は存在します。実際は、前回述べた②学術雑誌を読む③文献データベースを検索するという過程を丁寧に行っていないために見つからない場合が多いような気がします。昔、とある先生が「自分の考えたことは世界中の研究者が何十年前にすでに発見していることが多い」とおっしゃっていましたが、確かにその通りだと思うことが多いです。

「良い論文」と出会う方法

では、良い論文と出会うにはどうすればよいのでしょうか?②と③について具体的にお伝えしていきます。

『学術雑誌を読む』にズームイン

学術雑誌は、「学会や専門機関が定期的に発行している、審査を経た比較的質の高い論文が掲載されている」と述べましたが、そのように学術雑誌に掲載されている論文を「学術論文」といいます。そして、「学術論文」の中にも、様々な種類の論文が存在します。

  • 方法が異なる研究:アンケート(質問紙調査)等を用いた「量的研究」、インタビュー等を用いた「質的研究」、様々な先行研究を収集し、最近の研究の流れを概観する「レビュー論文」。

この中でも、論文作成に取り組むときに、最初に目を通しておくとよいのが「レビュー論文」です。これはある特定のテーマに関する様々な先行研究を数多く集めて、研究テーマの歴史や最近の流行について教えてくれます。ご自身の興味あるテーマが、いつから、どこで、どのように研究が進んでいるのかを把握しておくとよいでしょう。

例えば、近年注目されている「レジリエンス」ですが、実はこれ、日本語ではどのように訳されていると思いますか?「忍耐力」「しなやかな心」「折れない心」「負けない心」・・・などなど、一般書籍やビジネス書、自己啓発本では上記の言葉が頻繁に用いられていますが、学術論文においては「精神的回復力」という用語が使われることが多いです。

また、原語ではレジリエンスはどのようなスペルを書くでしょうか?レジリエンスは英語で「resilience」と書きます。さらに、専門家の中では、発音的に「レジリエンス」ではなく「リジリエンス」が正しいと主張している方もおり、カタカナ表記も研究者によって様々です。

このような研究テーマの成り立ちや流れを把握しておくと、文献を検索する際に、使用できるキーワードがたくさん増えます。例えば、文献を検索するときに「レジリエンス」だけではなく、「resilience(原語)」「精神的回復力(日本語)」「リジリエンス(カタカナ)」と3つのキーワードが加わることになります。こうすると、ヒットする論文数も変わってきて、面白い論文にたどり着く、なんてこともあります。

『 文献データベースを検索する 』にズームイン

コンピュータやインターネットの文献データベースによって先行研究を検索する方法。著者名やキーワードを入力すれば検索でき、文献の所蔵場所を教えてくれたり、本文をPDFファイルで見たりすることも可能 。

⇒文献データベースにも、様々なサイトが存在します。たとえば国内の文献が検索できる代表的なデータベースだと、NDL-OPAC(国立国会図書館)やCiNii (国立情報学研究所)やGoogle Scalarなどが有名です。

論文の集め方のコツとして、上記のデータベースを複数同時に使ってみることをおすすめします。NDL-OPACではヒットしなかった文献が、たまたまCiNiiではヒットする、という場合もあります。データベースによっては、同じキーワードで検索しても異なる結果になることも多いです。

また、データベースによっては「被引用文献」といって、その論文を先行研究として引用した最近の論文が一覧で見られることもあります(これは便利!)。

一般的には、「被引用文献」の文献数が多いほど、その研究テーマではよく用いられている代表的な論文であったり、研究の発展につながった重要な文献である場合が多いです。

では、最後にポイントをまとめると…

ポイント
  1. 興味のあるテーマに関する「レビュー論文」を読んでみる。
  2. 「レビュー論文」から研究テーマの成り立ちや流れを把握しておく
  3. 論文を読んでいく中で、検索するキーワードを見出し、増やしていく
  4. データベースを複数使用して、様々なキーワードで検索してみる
  5. ある先行研究(A文献)を引用した先行研究(B文献)を複数読んでみる

ということが挙げられます。さらに、⑤に関しては、B文献を引用した先行研究(C文献)、さらにC文献を引用した先行研究(D文献)と、どんどん先行研究を辿っていくと、自然と研究の流れが把握でき、その中で「これまでの研究ではどんなことが分かっていて、どんなことが分かっていないか」がはっきりとしてくるので、よりピンポイントでオリジナリティのある論文が書ける可能性が高くなりますよ。

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この記事を書いた人

沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師)のアバター 沢 哲司(医学博士/臨床心理士/公認心理師) 医学博士/臨床心理士/公認心理師

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